第1羽
「わーい!今日のお昼ご飯はハンバーグだ!」
蒼星石はハンバーグが大好きだ。特に、目玉焼きを花の形にくりぬいて乗っけた物が好きである。
ハンバーグを見ると。つらいことも吹き飛んでしまうらしい。
「まったく、蒼星石はお子様ですぅ。。。」
翠星石は大人ぶってみせるが、ハンバーグを見る目はやはり子供である。
俺と翠星石と蒼星石で三人暮らしが始まって、もう数年が過ぎた。
しかし俺は数年前と変わらず、相変わらず司法試験の勉強を続けている。
最近では司法試験も新しくなろうとしている。ここ数年で決めないとあとがない、そんな状況だ。
「ふう、ごちそうさまですぅ。それではさっさと内職を再開してくるですぅ。」
翠星石は立ち上がると、狭い居間を抜けて、隣の部屋へと移っていった。
親には翠星石や蒼星石のことは告げていない。だから親からの仕送りでは不十分なのだ。
「僕もごちそうさま。マスター、今日は何か手伝おうか?」
「いや、今日もいいや。お前は俺のことを見守っていてくれ。」
俺はそう言うと立ち上がり、勉強机へ向かった。それに続いて蒼星石が着いてきた。
刑事訴訟法の本を広げると、俺は読み始めた。蒼星石はそんな俺を畳に座りながらじっと見ていた。
数ページ読み終わった頃だった。
「ねえマスター、お昼ご飯まだ?お腹ペコペコだよ。」
ぎょっとした。昼食は食べたばかりだというのに。
「は?昼食ならさっき食べたじゃないか。食べたりないのか?」
すると蒼星石は首を曲げて困ったような顔をすると、俺をじっと見つめて言った。
「なに言ってるのマスター?まだお昼ご飯食べて無いじゃない。」
ぞくっとした。俺は机を離れて蒼星石の両肩を掴んだ。
「おい、蒼星石。お前、ちょっとおかしいんじゃないか?」
すると蒼星石は急に表情を変えた。ヒステリックな目をして俺を睨み付けた。
「なに言ってるの!?おかしいのはマスターの方だよ!僕は全然おかしくないよ!!」
いつもは大人しい蒼星石が急に感情的になって大声を出したので俺は酷く驚いた。
「どうしたです〜?おまえらー。ちょっと五月蠅いですよ〜。」
翠星石が隣の部屋からやって来ると、蒼星石は翠星石の方へ首を急回転し、睨み付けた。
「ねえ翠星石!聞いてよ!まだ僕たちお昼ご飯を食べていないのに、マスターはもう食べたって言うんだよ!!」
「え・・・・・?蒼・・星石・・・?」
翠星石は蒼星石を見つめたまま固まってしまった。
「ねえ、翠星石!どうしたの!?君も僕のことを馬鹿にしているのかい!?もういいよ!放して、マスター!」
蒼星石は俺の手をふりほどこうと暴れた。俺は蒼星石の肩をぎゅっと掴んだ。
「落ち着け、蒼星石!落ち着くんだ!!」
「もういいよ!!二人で僕のことを馬鹿にして!!食べなきゃ良いんでしょ!?」
蒼星石は必死に抵抗した。真剣な目は涙ぐんでいる。
「ウソつき!!今日は花丸ハンバーグにしてくれるって言ってたのに!!!」
蒼星石の人工精霊のレンピカが強く光ると、蒼星石は俺の手をふりほどき。トイレに入り、閉じこもってしまった。
トイレの中からはすすり泣く声が聞こえてくる。
俺と翠星石はただ、呆然としていた。

その時俺はまだ気づいていなかったんだ。とても大事なことに。

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