パソコンでCDをかけているジュン。
サビのフレーズが印象的な60年代のフレンチポップだ。
「トゥートゥー・・・ フランス語か。妙に日本語に聞こえてくるんだよな」
「ジューン」頭によじ登ってくる雛苺。「なに聞いてるの」
ひざを持ってかたぐるましてやる。
「なあ、おまえならなんて歌ってるかわからんか。これ」
「えー。うむん」ジュンの頭を抱きしめて記憶から仏語のエンコードをひっぱりだそうとする。
レコードの音源から収録したのか、高音が高めで耳をすませばプチプチとレコードノイズ鳴っていた。
やがて雛苺は鼻歌を歌いだし、たのしそうに身体をゆすった。
一曲終え、「わかったの。ジュンもう一回流してなの」と雛苺。
「さすが」再生を選択する。
イントロのフレーズをノリノリで歌う雛苺。無邪気な歌声。とてもかわいらしい。
自分がかたぐるましている人形は、人形としてしばしば存在せず少女のように映った。

「うわっ。餃子(ぎょうざ)デカっ!  日本ぐらいあるわ
 じゃあね尊師さん そうだポア! その子
 こっちでええんかな 
 あ、兄(にい)や! じゃ彼は?
 知らん 彼やだわ
 2トンのニラ シチュー ズラ
 「ハリーポッター」 15時ね かかった?
 キャシーたん

 トゥートゥートゥマシェリー マーシェーリ・・・」

意表を突かれ、唖然となるジュン。
「・・・誰だよキャシーたんて」
うなだれている彼の上で、よどみなく2番も歌える雛苺であった。

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