まるで誰かの心情を映し出すように、空には覆うように黒い雲が広がっている。
暗い部屋の中、左手にはめられた指輪だけが鈍く光っていた。

静まり返ったジュンの部屋にノックの音が響いた。
「……ねぇ、ジュンくん」
 今朝と同じで、相変わらず扉の向こうから返事はない。
のりは構わず一枚隔てた扉の向こうのジュンに語り掛けた。
「少しはご飯食べなきゃ……体に悪いよ? 今晩のお夕飯、ジュンくんが元気になるように頑張って作ったの。 だから……」
「……いらない」
「で、でも……」
 突然扉が勢い開き、ジュンが手に持った金属バットを振り上げる。
「いらないって言ってんだろ!!」
「! ……ジュンくん!」
 のりは静かに赤く染まった廊下に体を伏せた。

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