今日もnのフィールドで雛苺と鬼ごっこです。
雛苺とはおままごととかいろいろな遊びをするけど、私は鬼ごっこが一番好きなんです。
まずはジャンケン。
あっ残念、勝ってしまいました。
実は、負けて鬼になる方が楽しいんですよ。
逃げる方も少しはいいんですが、鬼に比べると刺激が足りないですね。
鬼ごっこが始まりました。
私は全力で逃げます。
子ども相手に大人気ないと思うかもしれませんが、全力じゃないといけないんです。
足は特に速いというわけでもないですが、こう見えても剣道で鍛えてますから、
雛苺の脚力ではあっという間に差が開いてしまいます。
でもこれでいいんです。
しばらくすると、私の足に何かが絡み付いて動けなくなります。
そう、足に絡み付いてくるのは苺わだち。
雛苺は追いつけなくなるとズルをして私の動きを止めようとするんです。
でもここで諦めたらダメです。
雛苺はまだ少し遠くにいるので、もうちょっと抵抗して苺わだちを振り解いて逃げようとします。
するとほら・・・
「あっ・・・」
蔓を私の全身に伸ばして、私を動けなくしようとするんです。
ここでもう少し逃げようと抵抗すると、きゅっきゅっと、私を締め付けてくれるんです。
胸の辺りに絡まった蔓がきゅっと締め付けてくる度、
背筋がぞくぞくして思わず甘い吐息がこぼれてしまいます。
「つーかまーえたっ!!」
残念、お楽しみはここで終わってしまいました。
「ずるいよ、雛苺・・・」
荒い息をついてちょっと雛苺を非難するような口ぶりをしながら、
もう仕方がないなって表情をします。
この仕方がないなっていうのが大切です。
本当に非難してしまったら、雛苺は苺わだちを使わなくなってしまいます。
それでは困るんです。
私はただの鬼ごっこをしたいわけではないのですから。
そしてこれからが本番、今度は私が鬼です。
今日も私は鏡台の前の椅子に雛苺を座らせて、髪を梳かしています。
雛苺はうっとりとした表情で気持ちよさそうにしています。
雛苺は私にこうしてもらうのが大好きなんだそうです。
気持ちいいのか、雛苺がうとうとしはじめました。
私は髪の毛を一本摘んでみます。
「いたっ!!」
「どうしたの?雛苺」
私は抜けた髪の毛を床に払い、雛苺に問い掛けました。
「髪の毛がプチッとしたぁ〜、痛いよ〜」
「ごめんね雛苺、ブラシに髪の毛が絡んじゃったのかな」
私はブラシを見つめ、責任転嫁します。
そうして優しく雛苺を撫で、あやします。
これは不可抗力だと理解してくれたみたいで、さっきの続きをはじめました。
気持ちいいのか、また雛苺がうとうとしはじめました。
今度は髪の毛を数本ブラシに絡め、少し梳いてからゆっくりとブラシを引っ張っていきます。
ブチブチ・・・
「いたぁ〜い!!」
雛苺が痛みで目を覚まし、ぐずり始めました。
「ごめんなさい雛苺、髪の毛がブラシに絡んじゃったの、ちょっと動かないで」
私は慌てて、ブラシに絡んだ髪の毛を解こうとします。
ブチブチブチ・・・
「いたぁ〜い!!トモエ、いたいよー!!」
いけない、慌てて解こうとしたので、また髪の毛が抜けてしまいました。
もうそろそろ限界ですね。
本気で泣かれてしまうと親にばれてしまいます。
ぐずる雛苺の傍らで、私は困ったような顔をしてブラシを見つめます。
「雛苺は癖っ毛だから、ブラシに絡まりやすいのね・・・ごめんね雛苺」
そう言って雛苺を撫でて落ちつかせます。
「うん、いいよ、トモエは悪くないよ」
それを聞いてほっとしたような笑みを浮かべ、私は後ろからきゅっと雛苺を抱きしめます。
「でもこのブラシ、ちょっと古くなったみたい。だから絡みやすいのね。新しいブラシ買って来るわね。」
ブラシが悪いから今日はここまで。
雛苺は残念そうだったけど仕方ありません。
これ以上髪の毛が絡んで雛苺が痛がるところなんて、見たくありませんから。
でもリボンをきれいに直してあげたら、またご機嫌になりました。
明日は新しいブラシにするから、きっと抜け毛も減るはずです。たぶん。
「ひなね、巴にこうされるのだーい好き!!」
ふふっ、と微笑んで私も答えます。
「私も大好きよ」
私は雛苺を叩いたりはしませんよ。
嫌われたくありませんし。
それに、大人しく真面目で面倒見の良いというイメージを汚したくありませんから。
いじめなんて絶対しません。
たまに間違えて(ここがポイント)誰かを泣かせてしまうことはありますが。
竹刀で叩くなら梅岡先生ですね。
私の中学校には剣道をやっていた先生がいなくて、
やむなく初心者の梅岡先生が顧問をしているんです。
はっきり言って稽古相手としては全く歯ごたえのない相手ですが、
手抜き稽古では強くなれないので容赦しません。
私は手を抜きませんよ、例え赤子の手を捻るような相手だったとしても。
私は全力で赤子の手を捻りますよ。
「う、がっっっっ!!」
梅岡先生がわき腹を押さえて膝を付きます。
「大丈夫ですか、先生!!」
私は慌てて駆け寄ります。
「すみません、先生・・・」
胴を払ったつもりが、梅岡先生の防具を着けていない場所を叩いてしまったんです。
脇の少し下辺りでしょうか、少し防具がずれているみたいです。
稽古中には良くある事なのですが、初心者の梅岡先生にはこたえるみたいです。
「いやいや大丈夫、柏葉は強いなハハハハ・・・・さあ、稽古の続きをしよう」
私は再び構えた梅岡先生の、今度は篭手を狙っていきます。
私の絶妙な竹刀さばきは、正確に梅岡先生の防具のない右肘を打ち据えました。
「くっ・・・」
これを耐えましたか、意外と根性があるみたいです。
梅岡先生は、女の子相手だと思いっきり打って来れないみたいです。
実力差は歴然なのに、舐められたものです。
武人としてそういうのは許せない性質なので、容赦なくその甘ちゃん根性を叩き直して上げます。
側頭部とか、肘とかが結構効きますね。
でもそこばかり狙うと不審に思われるので、何発に1発か織り交ぜる感じで打っていきます。
そうやって思うが侭、豚のような悲鳴を上げさせます。
面を打たれるのが嫌みたいですね、梅岡先生。
胴ががら空きになってますよ。
隙をついて最初に叩いた所に再びどーーーーん。
倒れこむ先生。
必殺の一撃ですね、この技には「梅岡アバラ砕き(仮)」とでも名付けておきますか。
必殺技の名称募集中です。
先生、さあ立ってください、すぐ立ってください、まだまだ足りないんです。まだ殴り足りないんです。
・・・・
学級委員長という中間管理職を押しつけられて、少しストレスが溜まっていたみたいですね。
でも、そのストレスの原因に返しているのだからいいですよね。
所詮スポーツですし、今先生が倒れているのもあくまで不可抗力ですし。
雛苺を叩くより叩き甲斐もあって、それに健康的ですよね。
このやり方だと、私の清らかで優しいイメージは全く壊れませんし。
暴力的な衝動はこの童貞梅岡で解消できるので、雛苺を虐める必要なんてないんです。