今日は家に帰ると変な手紙が届いていた。
それも、2通「まきますか?まきませんか?」とだけ書かれていた。
以前からこういう感じの手紙は何度も来ていた。
しかし、全てNOの方を囲んでいた。
今回も「巻きません」を囲もうと思っていたがなぜだか今回は「巻きます」の方を囲んでいた。
どうせ何も無いだろうと思いゴミ箱に捨てた。
2時間ほどたっただろうか?
少し寝ていたようだ。
何か肌寒いと感じきるものを探そうと思うって周りを見渡すと、窓が割れているではないか。
そこには、鞄が2つあった。
開けてみると、なんとその2つの鞄には2人の少女が入っていた。しかし、人間にしては小さすぎる。
その少女達を鞄から出してさらに鞄を覗き込んでみると螺子が入っているではないか。
「なんだ、人形か」
何を期待していたのかは自分でもわからないが、実際ショックを受けている自分がソコにはいた。
気を取り直して、2体に螺子を巻いてみた。
・・・・・変化が無いこの螺子は飾りだったのか?
人形を乱暴に投げ捨てて窓を塞ぐことにした。
「痛いですぅ〜」
「イテテ、大丈夫?翠星石」
いきなり、背後から声がして私は驚いて振り返ると、さっき投げた人形達が立ち上がって会話をしているのだ。
「・・・・・・」
あっけにとられて声がでなかった。きれいなオッドアイの人形2体・・・いや、2人がソコにはいたのだ。
「お前達・・・生き物なのか?」
「あ、新しいマスターだね」
「・・・・・ですぅ」
俺の質問を無視して何か分けのわからないことを行ってる人形に、その後ろに隠れている人形がいる。
後ろの奴は人見知りなのだろうか?
「で、お前達はいったいなんなんだ?」
「僕は蒼星石でこっちは翠星石っていうんだ。ほら翠星石挨拶しなよ」
「・・・・こ、この気高い翠星石の下僕にしてはみすぼらしい格好ですぅ」
前言撤回だ。この翠星石という人形はかなり毒舌のようだ。
その後、どうして動くのかなどの一通りの理由を聞いて俺は飯を作ることにした。
「早く、夕食を作るです」
「へいへい」
どうやらこいつ達も飯は食うらしい。
そして、飯は作ったものの好評というわけではなかった。
今日、俺はこいつ達と過ごしたが蒼星石はどうやら女で翠星石の双子の妹らしい。
翠星石は毒舌家だがなかなか素直じゃないところがあるらしく、なかなかその辺が俺好みだった。
それに対して、蒼星石は常に人の心の中がわかっているような感じであまり好きになれない。
今日は、寝るとしよう。
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今日は日曜でバイトも休みだ。
しかし、普段なら12時ごろまで寝ているのだが、今日は9時に起きるはめになった。
理由は1つ・・・・こいつらが来たせいである。
「起きるです」
「ちょ、翠星石マスターまだ眠りたそうだよ」
そう思うならこいつを黙らせてくれ。
「ッチ、しゃーねぇ起きるか」
「おはよーです」
「おはようマスター」
「ああ、おはよう」
こいつらは、かなり早起きのようだ。
翠星石は腹が減ったと騒いでいる。
「早く朝食を作るです」
「ちょっと、待て俺はまだ顔も洗っていないんだぞ」
「3分やるです。その間にさっさと顔を洗ってくるです」
俺は、3分という限られた時間で朝にすることを全てした。
俺が朝食を作ろうと思い台所に立つと蒼星石が何かしていた。
「なにしてんだ?」
覗き込むと蒼星石は、せっかく昨日修理した(ガムテープで塞いだ)窓をまた開けていた(ガムテープを外していた)
「あ、マスターごめんなさい。どうなってるのか気になっ」
「ベチン」
豪快な音が家に鳴り響く。
もとより気の長いタイプではない俺は話終るまでについ殴ってしまった。
その音に驚いて小走りで様子を見に来た翠星石は
「何をしてるですか人間」
そういいながら蒼星石のもとへ駆けて行く。
「ん?何って?仕置きをしたまでだよ。悪いことをしたらそれを叱る。違うか?ん?」
「だからって、何もこんな・・・・・」
「大丈夫だよ翠星石それに悪いのは僕だし・・・・」
俺は無言でその場を立ち去り朝食を作り始めた。
朝食を作り終えた俺は人形達を呼び寄せた。
「おら、飯だぞ」
「「・・・・・・・・」」
無言で部屋に入ってくる2体は席についた。
「っえ?ちょっと待つです人間」
「ん?なんだ?」
「蒼星石の分が無いです」
皿は出してあるものの翠星石と俺の分だけしか朝食は出さなかった。
蒼星石は今にも泣きそうな顔をし、翠星石はすごい形相(そんなに怖くない)で俺をにらみつけている。
「決まってんだろ。そいつの分は無しだ」
「そんな・・・・さっきお仕置きをしたじゃないですか」
俺はあえてその言葉を無視した。
本来なら殴ることなどなくジワジワと嫌がらせをするタイプの俺は蒼星石にかなりの怒りを感じていたらしい。
「蒼星石・・・・私の分を分けてやるです」
「翠星石・・・・・・・・」
俺は双子がそんなことをやってる間にちゃっちゃと出かける用意をしてバイトに出かけた。
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あいつらが来て2日目バイトに出かけた俺はついついそいつらのことを忘れていた。
「ふぅ、今日も疲れたな。たまには外で食うか」
そう、俺は完璧に2体の存在を忘れていた。
飯を食い終わり家に戻った俺は2体の内の1体が勢いよく走ってきた。
「遅いです。今までいったい何してたんですか」
「っあ・・・・・・まぁ、大人の世界にも色々あるんだよ」
俺は、このとき自分でも何を言ってるのかよくわからなかった。
「まぁいいです。早く何か作るです」
「・・・・っは?あぁ、そうかお前らも何か食うんだったな。おい、あいつも呼べ」
「蒼星石ですか?蒼星石こっちにくるです」
翠星石がそう呼ぶと蒼星石が小走りでここまで来た。
俺はこいつらを席につかせ飯を作り初めた。
「ほらよ」
「・・・・人間、量が少ないです」
「本当はそいつ飯抜きだろ?でも、どうせお前が分けるなら初めから分けといてやったんだよ」
「翠星石・・・ゴメン」
「あ、謝ることなんて無いです」
俺は風呂に入りそしてこいつらを無視してねた。
朝、目覚めてみるとあいつらの鞄が開いていた。
「おい、もう起きているのか?」
「おはよーです。人間」
「おはよー。マスター」
「ああ」
適当な挨拶を交わした後俺は少し出かけた。
帰ってきて、俺は買ってきたものを広げた。
「人間これは何ですか?」
「ん?あぁ、これは首輪と、手錠と、鎖だな」
「何に使うですかこんなもの?」
大体のことは察しがつくと思うが、そう俺はこいつらを犬と同様の扱いをするつもりだ。
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「ッ、何するですか」
「マスター・・・これはどういうこと?」
俺は、こいつらが寝ている間に昨日買ってきた商品一覧を装着させた。
いい気味だ、と思っていたのだが体の自由を拘束された分か?かなり騒がしい。
「ッチ、うるせぇな」
そういって俺はこいつらの口に猿轡をした。
そこで俺はある疑問を抱いた。
それは、こいつらは人形だけど人間のように食うし息も切らす。だから、俺は人間のように股間にはやはり穴があるのかと考えた。
「・・・・・・・」
俺はおもむろに翠星石のスカートをめくり上げた。
「ッ!!んーんー」
翠星石は必死で抵抗するが手錠をかけられ首輪でつながれているのでほとんど意味が無い。
スカートの中には薄い一枚の下着(というよりシャツに近いもの)だけであった。
さらに、それをめくり上げるとやはり女性の性器のようなものがあった。
翠星石は涙を流しながらこちらを見ていた。
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俺は泣く翠星石をよそに押入れからあるものを取り出した。
「あった、あった。これ買ったのはいいけど使う場面少なすぎだったよな」
1人で談笑をしている俺の手にもっているものを翠星石は驚いたような顔をしてみていた。
俺の手にはバイヴがもたれていたのだ。
「あぁー、まだ動くかな?」
そう言ってスイッチを入れる俺。ちゃんと動くのを確認し、翠星石の女性器に差し込もうとした。
激しく暴れる翠星石、しかし当然無意味に等しかった。
バイヴが翠星石の女性器に差し込まれた。
「っん」
翠星石の喘ぎ声が少し聞こえた。
それを見ている蒼星石も泣きながら、目で俺にやめろと訴えかけてくる。
だがそんな目で見られたぐらいでやめる俺ではない。
俺はそのまま双子を放置し、バイトに出かけた。
この日はバイトが結構早く終った。
「なぁ、今日俺の家へよっていかないか?面白いもん見せてやるよ」
同僚の中でも結構仲のいい初夏が俺に話し掛けてきた。
「ん?お前の家?飯でも出してくれるなら行くけど」
「ああ、飯でもなんでも出してやるよ」
何かうれしそうにして俺を家まで連れて行った。
そしてそいつの家に着いた時、俺はかなりショッキングなものを見た。
「ただいまー」
ただいま?話では初夏は1人暮らしのはずだがあたかも誰か居るような感じだな。彼女でもできたか?
「お帰りなさい」
そこには、ちょうど60センチぐらいの少女がいた。真っ赤なドレスに身を包み、なんとなくツンケとした表情だ。
「真紅、お出迎えか偉いなー」
「勘違いしないで、早く紅茶を淹れて頂戴」
「っえ、あれお前子供いたっけ?」
「ん?あぁ、こいつね・・・・なんていうか人形見たいな感じなんだよね」
その言葉を聞いて俺はギョッとした。
「に、人形って、え?ちょっと待てよ。おい」
「はは、人形に見えねぇだろ」
「初夏この人間は誰なの?」
この真紅とかいう人形は静かに言った。
「っていうか、俺んとこにもこんなんいるぞ」
「・・・・っえ?ゴメンもう一度言って」
「俺の家にも同じようなのが居るぞ」
「ッ!!マジかよ」
かなり驚いているようだ。
初夏も多分俺みたいにあまりちゃんとしたことを聞いてないのだろう。
「ねぇ、あなた今他のドールがあなたの家に居るって言ったわよね?」
さっきまで、ずっと無表情だった真紅が少し驚いたような顔で俺に話し掛けてきたので、俺も少し戸惑った。
「え、あぁ」
「どの子が居るの?」
「確か・・・・翠星石と蒼星石だったかな」
「そう、あの子達、今あなたの家に居るの」
少し落ち着いたのか、口調が静かになってきた。
「ああ」
「で、あの子達は元気なの?」
その言葉で俺は思い出した。翠星石にバイヴを差し込んだままのことを。
「・・・・・多分」
「何?その多分って・・・・まぁいいわ」
「なぁ、なぁ、何の話だよ。人形ってこいつだけじゃないのか?」
話の内容がほとんどわからなかった初夏は、わけのわからないという表情が良く出ていた。
「ああ。もしかしたら他にも居るのかもな」
「なんだよそれ」
「まぁ、俺はこれぐらいにしておくは。またな」
そういって俺は帰路についた。
少し急ぎ足で家に向かった。当然双子達がどうなったか気になったからだ。
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「ガチャ」
ドアを開けて俺は双子を放置している部屋に向かった。
まだバイヴの音がする。
部屋に入ると、目の焦点があっていない翠星石とそんな翠星石を見ないようにと必死に目をそらしている蒼星石がいた。
「・・・・・・・」
俺は無言で翠星石に入ってあるバイヴを抜いた。
「っん。ハァ、ハァ、ハァ」
やはり、1日中バイヴを差し込んでいるとかなり体力と精神力が消費されている。
そして、俺は翠星石の拘束具を外してやった。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
翠星石は泣きながら俺の足元によってきた。翠星石が進んだ後には女性器から出ている液体見たいな物が糸を引いていた。
「おい、お前達人形は一体どれだけいるんだ?」
「もう、文句いわないですから、だから、もう・・・・・・」
1日中バイヴを差し込まれていたせいか、かなり壊れ気味だ。多分俺の言葉もまともに聞こえていないだろう。
俺は蒼星石の拘束具を外し同じ質問をした。
「翠星石は?翠星石は大丈夫なの?」
ずっと目をつぶっていたからだろう。翠星石がどうなっていたかわからないようだ。
「あれを見てわからないか?で、どういうことなんだ、お前らみたいな人形は何体も居るのか?」
「翠星石・・・・酷い・・・・マスター・・・翠星石に謝ってよ」
「俺の質問に答えろ」
蒼星石はかなり怒っているらしい。だが、俺も質問に答えない蒼星石に少し怒りを覚えてきた。
「僕達、ローゼンメイデンは全部で7体いる」
蒼星石は俺を睨みながら静かな口調で語った。
「なるほど、ってことは後4体居るってことか・・・・・」
「4体って、マスター他のドールにあったの?」
蒼星石も驚いたのだろう。怒りを忘れたかのように、俺に近づいてきた。
「あぁ、真紅とかいってたかな」
「真紅・・・良かった。無事だったんだ」
俺は、こいつの言葉に少し疑問を抱いたが、聞くのはまた今度にしよう。
「俺はもう寝るぞ。そいつをどうにかしておけよ」
「・・・・うん・・・・」
そういって蒼星石は翠星石を起こし鞄に寝かした。
「お休み、翠星石」
「ごめんなさい。ごめんなさい・・・」
翠星石は鞄に入っても泣きながら、同じ言葉を繰り返している。
1日寝れば治ると思っていたが大丈夫だろうか?
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その日の夜
「蒼星石やめとくです」
「でも・・・このマスター僕達に酷いことばかりして・・・・翠星石だって昨日危なかったじゃないか」
「何か、この人間は今までのマスターとは違うんです・・・・・」
「だから、夢の世界に入って木を成長させてやるんじゃないか」
「・・・・わかったです・・・・ただし、危険だと思ったらすぐに戻るですよ。それでいいならさっさと行くですよ」
私は、深夜蒼星石に起こされたんです。
蒼星石は、この人間をもう少しマシにするために人間の夢の世界に入って木を育てようというんです。
「翠星石、先に行くよ」
「っあ、ちょっと待つです。私を置いていくなです」
夢の世界に入ってみると、私達は驚いたのです。この人間の世界には、たいした異常が見当たらなかったです。
「蒼星石、こいつおかしいです。あれだけ酷いことなどをしているのに、正常な人間の夢の世界とほとんど変わらないです」
「うん・・・・どういうことだろう。木も成長を妨げられていないし」
私達はこの夜は一旦夢の世界から出ることにしました。
「ふぅ、結局何もみつけれなかった」
「蒼星石・・・・大丈夫ですよ。きっと明日は見つけれるです」
そういって私達は眠りについたです。
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「ん?もう朝か。さてと・・・・」
俺は目覚めてすぐ違和感に気づいた。
バイトのある日の俺は朝が早いそのため、双子達が起きていることは殆どんでないのだ。
「おい、翠星石、蒼星石、起きてるのか?」
「・・・・・・」
返事が無い、仕方ない少し探してみるか。
俺は、まずリビングへ行った。ドンピシャだった。そこには、双子達が気持ちよさそうに寝ていた。
「起きろ」
一言静かに言うと、翠星石が起きた。
「ん、・・・・っ!!蒼星石起きるです。人間が起きてるですよ」
「ん〜。おはよう翠星石」
「のんきなことをいってる場合じゃないです。早く隠れるです」
翠星石は俺を見るなり昨日のせいだろうか?かなり錯乱している。
翠星石は慌てふためいて、蒼星石の背後に回った。
「翠星石・・・・落ち着きなよ」
「でも・・・・・」
「あぁ、うぜぇ。お前らまた自由を奪われたいのか?」
「っひ、ごめなさいです」
やはり、翠星石には効果は絶大だったようだ。多分蒼星石は俺がまた昨日と同じようなことをしようすると、本気で抵抗するだろう。
「お前ら、真紅って奴のとこへ行くか?」
「真紅?・・・・真紅も、もう動いてるですか?」
昨日のことは恐怖心以外殆ど何も覚えていないのだろう。
「マスター本当に連れて行ってくれるの?」
「嫌なら別にいいが」
「行くです。絶対に行くです」
翠星石は俺の気が変わらないうちに連れて行ってもらう気だろう。かなり本気だ。
そして、俺はこいつらを初夏の家へ連れて行くことにした。
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「早く、早くするです」
「ちょっと、待て外に出るのにこの格好じゃ駄目だろ」
「そんなの、どうでもいいです。私達は着替えることなんて殆ど無いです」
「そりゃ人形だからな」
俺は、急かされてもペースを上げなかった。
「おら、行くぞ」
「っえ?もうできたですか?」
「翠星石・・・顔によだれついてるよ」
俺が用意をしている約15分間の内に翠星石は寝ていたのだ。
そして俺は、戸締りをし鍵をかけて外に出た。
「早く運ぶです」
「ごめんね。マスター」
「お前ら・・・・鞄で飛んでなかったか?」
俺は、こいつらが俺の家に来たときのことを鮮明に思い出していた。
やはりこいつらは鞄で飛んで来たということが今でも覚えている。
「鞄で飛んでいっても、私達はどこに行けばいいかわからないです。それにお前は空を飛べないから、付いて来れないです」
「っていうか、お前ら歩け」
「レディに歩かせる気ですか?」
「お前はレディじゃない」
「仕方ないよ、翠星石歩こう」
蒼星石は物分りが良い。しかし、どことなく運んで欲しそうだ。
「蒼星石・・・わかったですぅ。私達も歩いてやるですから、遅れるなよです」
「こいつは・・・・」
俺達は鞄を置いて出発した。やはり予想通りというか翠星石は途中でへばった。
「少し休憩するです」
「翠星石・・・・まだ、30分ぐらいしかたってないよ。それに歩きだし」
「しかたねぇなぁ」
俺は双子達をひょいと持ち上げた。
「っえ・・・」
「っな!?」
「ほれ、これなら文句無いだろ」
俺は双子達を肩に乗せ歩き出した。
「マスター、僕はまだ歩けるよ」
「人間・・・・」
「・・・・・」
俺は無言で歩いた。翠星石の頬が赤かったのは気のせいか?
「少し待ちなさいよぉ」
「ん?」
俺は、何か声が気がしたので振り返った。しかし、そこには何も居なかった。
妙な気配を感じたので、少し小走りで初夏の家へ向かった。
「どうしたですか?・・・・人間?」
「いや、別に・・・何も」
「?」
蒼星石と翠星石は首をかしげていた。
そして、さらに20分が過ぎて初夏の家へついた。人通りの少ない道を選んできたので双子達が発見されることは無かった。
「ドンドン!!」
俺は部屋のドアをノックした。
ドアが開いた。
「あら、いらっしゃい。今日はその子達も一緒なのね」
「真紅、勝手にドアをあけるなっていってるだろ。普通の人が来たらどうするんだ」
俺は少し驚いた。てっきり初夏が出てくると思ったけど、真紅が出てきたからだ。
「真紅ぅ〜、久しぶりですぅ〜」
「やぁ」
「久しぶりね。翠星石、蒼星石」
真紅は軽く挨拶をした。
「ちょっと初夏・・・いいか?」
「ん〜?」
少し俺は初夏を呼び出した。
「お前、この前あの後真紅にローゼンメイデンについて何か聞いたか?」
「別に、何も聞いてないよ。別に知りたいとも思わなかったし、今の生活も結構楽しいしさ」
初夏は嬉しそうに言った。その頃人形達は、人形達で話をしていた。
「真紅少し聞いて欲しいです。あの人間の夢の中を見たです。しかし、あの人間の夢は普通の人間と殆どかわらない夢でした」
「どうして?道久は普通の人じゃないの?」
「真紅僕達はマスターがここへ来た日、酷い目に合わされてるんだ」
「でも、なぜが最近はあの人間妙に優しいというか、変わってきたような気がするんです」
「そう、それはあなた達の影響じゃないかしら?」
「何はなしてんだ?」
初夏がいきなり入っていった。翠星石は俺の顔を見るなりそっぽを向いた。
「(真紅の言っていた私達の影響ってどういうことでしょうか?)」
「へぇ〜、君が翠星石で、こっちが蒼星石かぁ〜」
「っひ!!いきなり近寄るなです」
そういうと、翠星石は蒼星石の陰に隠れてしまった。
「照れてるのかなぁ?かわいいな」
「違うと思うが・・・・あいつ確か人見知りだったけな」
俺は、何気に翠星石が人見知りだったことを忘れていた。
「皆、楽しそうねぇ〜」
俺はここへ来る途中聞いた声のようなものがまた聞こえた。
「っえ?」
俺は振り返った。やはりそこには何も無かったのだ。
----
「さて、俺らそろそろ帰るわ」
「もう帰るのかよ〜」
俺がそういうと初夏は残念そうに言った。
「明日、バイトもあるしさっていうかほぼ毎日会ってんじゃん」
「あんまりバイトじゃ話せないじゃんかよ〜」
「お前は俺の恋人かよ」
俺は苦笑いをしながら双子達を連れて初夏の家を出た。
「真紅ーまた来るです」
「またね、真紅」
「ええ」
翠星石はいつまでも俺の肩の上で後ろを見ていた、
「どうしたの?翠星石」
「誰かにつけられているような気がするです」
「でも・・・誰も居ないよ」
蒼星石はあたりを見回しながら言った。
家について、俺は飯の用意をしていた。今日はくたびれたので簡単なものにした。そして、双子達を呼んだ。
「おい、飯だぞ」
双子達がトテトテとやってきて席についた。
「なぁ、初夏の家に居たとき変な声がしなかったか?」
「変な声?」
蒼星石は、さっきの翠星石のこともあり大分悩んでいるようだ。
「あぁ、たしか楽しそうとかなんとか」
「人間・・・とうとう幻聴まで聞こえるようになったですか」
「・・・・・」
多分いつもなら、反論しているだろうが2回も同じような声が聞こえて誰も居なかったということから、幻聴ではないとは言い切れなかった。
「マスター、きっと今日は疲れてるんだよ」
「あぁ・・・・(そう言われてみれば、そうかもしれない)」
俺はそんなことを思いながら、食事を済ませ寝床についた。
双子達は俺が寝る前にすでに鞄の中に入っていた。いつもよりもかなり早く双子達は寝ていた。
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「ガチャ」
寝たはずの双子の妹蒼星石の鞄が開いた。
「起きて翠星石。マスターの夢の中にまた入るんでしょ」
「ふぁ〜、おはようです。蒼星石。もう、そんな時間ですか?」
蒼星石に比べ翠星石は熟睡していたようで起こさないと起きないという状況だった。
「さて・・・と、スイドリーム」
道久が寝ているその真上に黒い渦のようなものができた。
「翠星石、行くよ。・・・どうしたの?」
翠星石は後ろを見ていた。
「また、何かに見られている気がするんです」
「・・・翠星石。見てこようか?」
「別にいいです。さっさといくですよ」
蒼星石が渦に入って、その後翠星石も渦へ飛び込んだ。そして、何か黒い物が続いて渦へ飛び込んでいった。
「本当、なにも変わっていないです・・・・」
「翠星石。あそこ、何か光みたいなのが漏れているよ」
蒼星石が指差した先には道久の夢の中の一部が、ひび割れて少し光のような物が見えていた。
「蒼星石・・・これは」
「うん、やっぱりマスターの心に変化がある。でも、どうしてひびが入ってるんだろう?」
「このひびから穴を広げてやるです」
「やめなよ。翠星石」
翠星石は道久の夢のひびを広げようと穴に手を突っ込んで無理に広げようとした。
その時、背後から聞き覚えのある嫌な声が聞こえた。
「フフフ・・・。全くあなたは少しも変わってないわねぇ」
「!!」
「水銀燈!?」
翠星石は目を丸くして声が声にならないという状況だ。それに対して蒼星石はとっさに身構え庭師の鋏を出した。
「あらぁ、怖いわねぇ」
「な・・な・・何をしているですか?水銀燈!!ここは私達のマスターの夢の中。水銀燈には関係ないはずです」
「ひどいわねぇ。関係ないことないじゃない。あなた達のローザミスティカをもらいに来た。これだけでも十分な理由のはずでしょぉ?」
そんなことを言ってる間に水銀燈の羽はみるみる大きくなっていった。翠星石も庭師の如雨露を出した。
「アリスゲーム開始ってことでいいわねぇ?」
「く、来るなら来いです」
「・・・・・」
水銀燈は翠星石の言葉を聞き終わるとほぼ同時に無数の翼を飛ばしてきた。
「そんなもの・・・・喰らうわけ無いです」
そういい、翠星石が如雨露を振り回し、周りに水を巻くと巨大な蔓が出てきて、羽から翠星石達を守る用にまっすぐに伸びた。
「やぁー」
蒼星石が掛け声とともに水銀燈に突っ込んでいったが、しかしそこには水銀灯の姿は無かった。
「っえ?どこへ?」
「お馬鹿さんねぇ。羽は囮に過ぎないわぁ。翠星石のローザミスティカ貰っちゃたわぁ」
「っひ!!」
水銀燈がそう言って龍のような形になった、羽を翠星石に向かわせていた。
翠星石はそれを見てとっさに如雨露で水をまこうとするが、水銀燈の羽の方がやはり早い。
「翠星石!!」
「・・・・・・?そ、蒼星石!!」
蒼星石は翠星石をかばい水銀燈の攻撃をモロに喰らったのだ。
「少し私も驚いたわぁ。でも、結果オーライってとこねぇ。蒼星石のローザミスティカ頂いちゃったわぁ」
水銀燈はそう言って蒼星石のローザミスティカを取り込んだ。翠星石も当然それを阻止しようとしたがなすすべが無かった。
「水銀燈。蒼星石のローザミスティカを返すです」
「いやよぉ。そんな怖い顔するもんじゃないわよぉ。今日はあなたのことは見逃してあげるわぁ」
「ま、待ちやがれです」
そう言って、水銀燈は夢の中へ消えていった。
「待ち・・・・やがれ・・です」
翠星石は唯の人形と成った蒼星石を強く抱きしめながら言った。当然水銀燈は居ないので聞こえるわけは無い。
そして、翠星石と人形と化した蒼星石は夢の渦から出てきた。
俺が目が覚めたのは朝の7時だっただろうか。その日の天気は雨だった。
「また、鞄が開いてるな。あいつ等なぜたまにこうも早起きになるんだろう?おーい、お前等起きてるんだろ?」
「・・・・・」
返事が無い。また別の場所で寝ているのじゃないかと思い、他の部屋を探した。
「っお、いたいた。起きてるじゃん。どうして返事しなかったんだ?」
「・・・・・・」
翠星石は無言のまま走り去っていった。今何か抱えていたような気がしたが、一体あれは何だろう?蒼星石の姿は見当たらない。
「ちょ、おい待てよ」
俺はそんなことを考えながらも翠星石を引きとめようとした。しかし、翠星石はもう家から出ていた。
「っくそ。あいつ、かさも指さないでどこへ行ったんだよ。あいつとは初夏の家までしか行った事ねぇから、多分そんなに探すことはいらないだろう」
そんなことをブツブツ1人で言いながら、俺は傘を持って走っていた。
そして、途中公園で小さな物が見えた。
「ん?あれは、多分翠星石・・・・だよな?」
俺は雨の中かさもささずに、大切に何かを抱え込んでいる翠星石に近づいた。
「おい、傘も持たずに突然どうしたんだよ」
「・・・・・・」
「ん?どうした。腹でも痛いのか?」
俺はなんの応答もない翠星石が少し心配だった。それに、蒼星石がどこに行ったかも気になっていた。
「・・ど・・・・て・・・・・」
「ん?」
雨のせいだろうか?良く聞き取れない。
「どうして、私達の螺子など巻いたのですか?」
こっちを振り返り俯きながら、翠星石はものすごい声で叫んだ。
「どうしてって・・・・・おい、お前その腕に抱いてるの・・・・」
俺は翠星石が抱えているのが蒼星石だということを認識した。
すると、翠星石は俯いていた状態から顔を少し上げて言った。
「蒼星石は、私のことを守ろうとして、動かなくなったです。私なんかが生き残って蒼星石は人形になったです・・・・」
「翠星石・・・・・」
俺はもう翠星石の顔をまともに見ることができなかった。
翠星石の顔は、涙か雨かわからないぐらいにぬれていた。
余談になるが、翠星石はその後俺が居ない間に真紅に会いに行き。自ら望んで蒼星石と同じ人形になったそうだ。
俺には、手紙が残されていた。
「ばか」
一言だけ、それも殴り書きにしたような字で書かれていた。