アニスレに一度貼ったヤツを大幅修正したもので見た人いるかも

      「 ふ  じ  こ 」  

念願叶い、ついに私は水銀燈のミーディアムとなった。

「ミーディアム募集」

これに応募し、宝クジに当たるような幸運を得たのだ。

それはかつて彼らの全てを預かってきた少年が留学に際し、
「お互いのために」とミーディアムの資格を破棄したためだ。
再びドールズをただ長い眠りに就かせるのは忍びないと
少年は彼女らの嫁ぎ先を求めてHPで募集をかけたのである。

彼女との生活は新鮮だった。 勿論、私が女性との交際経験が
まるで無い文字通りの仕事人間だったためであろう。
(これは彼女の指定した条件であったらしい)
彼女は優雅な淑女を演じながらも悩ましいしぐさや絡みつくような
声音で私を挑発し、私の初心な反応を楽しんでいた。
私自身、彼女の言動に振り回されながらもその関係を楽しんでいた。

そして運命の日が・・・・・来た。

その日は珍しく仕事が重なっていた。 彼女との約束を
気にしながらも仕事に没頭するあまりつい時の経つのを
忘れ気が付くとすでに時計の針は8時を回っていた。

彼女との「約束」を果たすことは絶望的だ。
情けない気持ちで職場を後にし、彼女を宥める手土産を
物色しようと、遅くまで開けている百貨店を目指した。

時計はすでに10時を回っていた。 憂鬱ではあったが
威勢良くドアノブを回し、努めて明るい声を出す。

「ただいま!」
「・・・おかえりなさい。」

水銀燈は玄関で私の帰りを待っていたらしい。 
背丈からすぐには気付かなかったが彼女の言葉に視線を
落とすと微笑を浮かべた秀麗な面が私を見上げていた。
(しまった)
思わず内心舌打ちする。 彼女の目が全く笑っていない。

「こんなに遅れてすまない!
 どうしても抜けられない仕事があったんだ。
 キミの怒りももっともだがどうかわかって欲しい。」

そして私はありったけ買ってきた「お土産」を彼女の前に押し出した。
最初はそれをつまらなそうな目で眺めていた彼女も次第に興味を
そそられたのか、最後には本物の「笑み」を浮かべ、私を安堵させた。

「・・・しょうがないわね、じゃあコレは部屋に
 運んでおいて。 後でゆっくり見せてもらうから。」
「ああ! わかった、すぐに持って行くよ。」

私はすぐさまそれらの品を掻き集め、袋につめていった。

「それから今夜はもう休むわ、おやすみなさい。」
「え?・・・わかった、お休み・・・」

彼女にしてはかなり珍しいことだ。 
本来彼女は夜行性なのか夕刻に活動を始める。 

「疲れたでしょう? ゆっくり休んでね。
 明日はたっぷり付き合ってもらうんだから。」
「・・・ああ! 勿論だとも!
 仕事も休みにする、一日中でも付き合うよ!」
「・・・嬉しい、明日は薔薇色ね・・・」
「・・・?・・・」

私は翌日の水銀燈との時間のために早めに休みを取ることした。 
ベッドに身を横たえるとすぐに眠気が来る。
ここちよい眠りを期待しながら私は意識を失った。

「・・・おきなさい。」

脳内に響き渡るようなその声に私は思わず跳ね起きる。

「やっとお目覚め? 約束の時間の始まりよ。」
「・・・?」

再度の声に振り向くと、そこには水銀燈が浮かんでいた。

「今、ちょうど12時をまわったわ。 昨日の約束の明日。
 今日は一杯楽しみましょうね?」

床に就いたのが11時を少し回ったところだったからまだ1時間と
経ってはいない。 確かに約束の「明日」だがあまりにも早すぎる。
内心、どうしたものかと逡巡するがここで約束を反故にすれば
本当に殺されそうだ。 事実、そう感じさせるほどの異様な気配を感じた。

心を決めて口を開く。

「わかった、今日は何をしようか?」
「鬼ごっこなんてどうかしら?」

思わず口をポカンと開けてしまった。 あまりに間抜けな反応だったのか
彼女はさもおかしそうに笑っている。 私はすぐに気を取り直して尋ねた。

「・・・鬼ごっこかい? キミにしては珍しいね。」
「そうかしら? 私は大好きよ!
 前のミーディアムとも最後に遊んだもの。」

何が可笑しいのか彼女はまたクスクスと笑い始めた。
「最後」と言う言葉に引っかかりを感じながらも私は言葉を続けた。

「そうか。 じゃあ鬼ごっこをしようか?
 二人だけと言うのもなんだけどキミとなら楽しいだろう。」

私は思わずCMなどに流される「浜辺で戯れる男女」を
連想してしまい苦笑した。 とてもではないがあんな真似はできないだろう。

「じゃあ始めましょうか? 私が鬼よ。 私が貴方を捕まえたら・・・」
「私に鬼が出来るかな? とてもキミを捕まえられそうにないよ。」

しかし彼女はニッコリ笑って言った。

「貴方を殺すわ。」

一瞬彼女が何を言ってるのかわからなかった。
何かの聞き間違いか、あるいは私の知らない用語なのだろうか? 
それにしたって殺すなんて言葉は穏やかじゃない。

「あははははっはははは! どうしたの?
 さぁ始めましょう! 貴方を薔薇色に染めてあげる!」
「ちょっ・・・」

何かを言い出そうとした瞬間、左腕に何かが食い込んでくるのを感じた。
その直後に走る激痛! 

「・・・ぃがっ!?」
「まずは左腕が真っ赤っ赤♪
 次はどこにしようかしら?」

私は悟った。 水銀燈は本当に私を殺すつもりなのだ。

「ホラホラ早く逃げないと? 捕まえちゃうわよ?」
「くっ!」

彼女に背を向け走り出す。

「あははあっはははははっははは・・・」

狂ったような彼女の嬌声を聞きながら少しでも
遠ざかろうとがむしゃらに走り続けた。

良く見ると周囲の景色は全く私の見知らぬ異郷のものであることがわかった。
周囲を埋め尽くすくたびれた洋風の建築物。 そしてあちこちに散乱している
手足の欠けた、あるいはバラバラになった

人形、人形、人形、人形、人形、人形・・・。

----

「・・・今度はかくれんぼかしら? どこにいるの〜?」

ひときわ背の低い建物の中に身を潜めた私は息を殺し、
彼女の通り過ぎるのをジッと待ち続けた。
一体どれくらいの時がたっただろう?
私は外の様子を伺うべく入り口から恐る恐る上空を覗き見る。

「・・・っ!?」

すぐそこにいた彼女と目が合ってしまった。
私が外を伺う瞬間を息を潜めて待っていたのだ!

「みぃ〜つけた♪」
「うわぁああぁあぁ!?」

間の抜けた悲鳴を上げ、そのまま表に走り出す。
見知らぬ町をただひたすら走り続ける。

気が付くと私はどことも知れない茂みの中に潜り込んでいた。

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ・・・。」

荒い息をつきながら、耳の聞こえが悪いことに気が付いた。 
右耳がおかしい? そして妙に右頬が冷たい。 そっと右耳に触れる。

・・・ない

右耳はすでに失われていた。 ぐっしょりと頬を
濡らしていたのは耳の付け根から流れでた私の血だった。
探るように右耳のあたりを撫で回していた私の頭上から・・・

「探し物はコレかしら?」
「ひぃっ!?」

水銀燈がそこにいた。 私の耳を片手で弄び
細く小さな舌でチロチロと嘗め回している。

私は慌てて茂みを飛び出した。 
すかさず背後から黒い羽が私の体に穴を穿つ。

「命中〜♪」
「・・・っ!?」 それでも私は走り続ける。
「そ〜ぉれ!」 さらに数本の羽が背中中に突きたてられる。
「ぁぎゃ!?」 

流石に苦鳴を上げてたたらを踏むがそれでも走り続けた。
やがて息も切れ、歩くのと変わらぬほどに速度が落ちてくる。

「もうおしまい?」

ぎょっとして声の方を振り向くと彼女がピッタリと張り付いていた。
拗ねるようなそのしぐさも、もはや愛おしいとは感じない。

「鬼ごっこはもう、お・し・ま・い!」

言い放つと同時に数本の羽を私の足に突き立てる。 

「ぅがぁあ!!」 派手にその場に倒れこみ、足を抱えてうずくまる。
「オマケよ♪」
「ぃぎゃあぁぁあ!?」

さらに無数の羽を突き立てられる。
まるで足中から羽が生えているようだ。

私はもはやまともな思考能力を失っていた。
頭の中を巡るのは「どうする?」という漠然とした疑問のみ。

どうする? どうする? どうする? どうする?・・・

「・・・ま、まってくれ・・・。」

息も絶え絶えに辛うじてそれだけを口にした。
時間を 少しでも時間を稼がなければ

「こ、ここはどこなのかな?
 初めて見るよ。 どこなんだい?」

極寒に凍えるように顎はガチガチと噛みあい
言葉を上手く発せない。 それでも必死に言葉を継いだ。

「キミはヨーロッパの生まれだったよね?
 するとここはヨーロッパなのかな? 私は来るのは初めて・・・」
「・・・次は思い切って80点を狙ってみようかしら?」
「・・・?」

80点? なんのことだ? そう考えた瞬間視界がわずかにかすむ。
続いてズンッと軽い衝撃が私の頭を揺らす。

「・・・あ?」
「80てぇ〜ん♪」

目が・・・見えない・・・?

「次はどこがいいかしら?
 リクエストはある? 私の可愛いミーディアム。」
「・・・ああああああぁぁぁっああ!!!!」

目を射抜かれた事態をようやく認識した私は今度こそ絶叫した。
頭は恐怖に埋め尽くされ、もはや思考は吹き飛んでいた。

「あああああああぁあぁぁっぁぁ!」
「・・・」

なおも叫び続ける私を彼女はじっとそして満足そうに見つめている。

「素敵な声! もっと聞かせて私のミーディアム。 さぁ次は・・・」

そして彼女のダーツゲームが始まった・・・

「・・・」
「20点!」
「・・・っ」
「50点!」
「・・・」
「あら? 惜しいわね。
 ウフフ、次は・・・」

一本、二本、どんどん羽が増えていく。
極度の恐怖のためか、傷自体が浅いためかさほどの痛みは感じなかった。
私は悲鳴を上げることさえなくただ地面にうずくまった。
反応の鈍いことに飽いたのか、このゲームはすぐに終わった。

「しょうがないわね。 少し早いけど
 このゲームはもうおしまい。」
「・・・」

助かるのか? 彼女の言葉に淡い期待を抱く。

「次はお人形さん遊びをしましょう?」
「・・・?」

それはどんな遊びだったろう? もはや思考はマトモに働かない。
私はお人形遊びがどんなものだったのか思い出すこともできなかった。

「さぁこっちよ?」

そう言って彼女は私を引きずり側にあった名の知れぬ木に私を固定する。

「まずは着せ替え! でも替えの服を持ってきてないの。
 ゴメンね? 私の可愛いミーディアム。」

本当に申し訳なさそうに謝る彼女に不気味なものを感じる。

「でもとりあえず服を脱がせましょうね。」

そう言って私の服を引き裂き、剥ぎ取っていった。
やがて半裸になった私から少し離れてじっと眺める。

「綺麗な色・・・とっても素敵よ。 薔薇色とはいかないけれど
 これはこれでたまらないわ・・・」

ウットリという言葉がそのまま当てはまるような陶酔の言葉としぐさ。
この状況においても、いやこの状況だからか彼女はたまらなく美しかった。

「さぁ、はじめましょうね?」
 
私の姿に満足したのか彼女は一つ頷くと私に近付きあちこちを撫ではじめた。

「ウフフッ・・・」

慈悲さえ感じられる柔らかな愛撫、そして傷口に這わされた小さな舌の
感触に私は思わず身震いした。 その反応が気に入ったのか彼女は
あちこちの傷口に舌を這わせる。 やはり傷口ゆえ疼きはしたが、
それ以上に溢れる快感におぞましい現実を忘れて溺れていった。

この世にこれほどの悦楽があろうか?
今世界は暗く、生あるものは我ら二人。
天上の月は彼女をかすかに照らしその姿は天使のごとく美しい。
それは傷ついた聖者を癒す敬虔な乙女。
その美に聖性さえ備えて彼女はほのかに輝いていた。

酔った

私はただ酔いしれた。
夢にさえ見なかった至福の時がここにあった。
世界は今、我々のためにはある。
至上の快楽の中、私はぼんやりと月を見上げた。
蒼い・・・彼女を飾る衣のように・・・

----

  ボギッ

「・・・ぃぐっ!?」

突如襲った激痛に私は現実に引き戻される。
人指し指がヘシ折られていた。

「あら? 意外と可動域は狭いのね。次は中指を・・・」
「やめっ・・・!」

  ボギッ
 
「がぁぁああ!」

勢い良く一瞬でヘシ折られる。 刺突とは全く違う痛みに私は仰け反った。

「次はもっとゆっくり、ね?」

そういって今度は薬指を徐々に折り曲げていく。
そして限界と思われる位置で止め、小刻みにゆする。

「いだっ、やめ・・・」

   ギッ

「でぎゃっ!?」
「あははははっ!」

声を発した途端にヘシ折られ、奇妙な悲鳴を上げてしまう。
それがおかしかったのか彼女は声を上げて笑っている。

「・・・助けてくれ、頼む、助けて・・・」

必死に哀願する。
もはや無意味とわかっていても哀願せずにはいられなかった。

「・・・いいわ、命だけは助けてあげる。
 でもそのかわり、もう少し付き合ってね?
 だってまだ朝にもなっていないんだもの。」

「・・・わ、わかった。」

あと少しでも付き合って果たして私は生き延びることができるのか?
はなはだ疑わしかったが彼女の「許し」が今や最後の希望なのだ。

「それじゃあ・・・いくわね?」

いく? いくとは何のことだ?

彼女を見上げるとそこには、竜? 目の前に竜の顔があった。
いつの間にこんなものが・・・

 グブッ

「っ!?」

突如竜が私の肩に噛み付いた。
一体何を・・・?

 ブチィッ!

「・・・ぃぎゃぁぁぁああああああ!!」

私の肩から先は喰いちぎられた。
鮮血が勢い良く噴出す!

「止血しなくっちゃねぇ?」 そう言うと彼女の手から青白い火が放たれる。
「ぅぎぃいぃぃぃいあああああ!!」 傷口を焼かれ更なる絶叫をほとばしらせた。

「はぁはぁはぁはぁ、なひぉ、なひ・・・」

痛みにのたうちながら必死に声を発した。
何故だ? 許してくれるのではないのか?
このままでは死んでしまう!

「何をって? フフッ、最後はね? マリオネットで遊ぶのよ♪
 マリオネットはバラバラの手足を紐で繋いで作るのよ? 
 だ〜か〜らぁ? まずバラバラにしなくっちゃ!」

「・・・あ、あ、あ?」

激痛のためにしばらくは彼女の言葉が理解できなかった。 
やがて一つ一つの単語の意味を認識しそれらを繋いでいく・・・

「・・・ぁぁああああああああ!!!!」

とうとう私は発狂した。
迫り来る竜のアギト、
しかしそれももはや何の意味も持たなかった。

私は・・・・・・

西条義行氏が遭遇した凄絶な地獄。
それを知ったのは事件が起きてから半年が経過した後だった。
私がこの事件の詳細を知ったのは旅行途中に私を訪ねてくれた
友人から「土産話に」と当時の資料を贈られたからだ。

ゴミ捨て場に捨て置かれ、鴉に啄ばまれていた
彼の姿は凄惨を極めたと言う。

第一発見者は近所の主婦。 幸運なことに彼女はその実態を
後に紙面で知るに留まった。遠目に見た異常事態にすぐさま
自宅に取って返し各所に連絡の電話を入れたためだという。
この辺の「危うきに近寄らぬ」知恵はまさに
都会人の培った知恵である。

発見された義行氏は生きていた。
あるいは死んでいた方が彼には幸せだったかもしれない。
四肢は指の関節まで千切り取られ、しかも御丁寧にそれら全てを
縫い合わせて繋げてあったと言う。 耳や鼻、舌も同様であり、
眼球や歯は一旦くり抜かれた後再び押し込まれていたと言う。
各裂傷箇所は高熱で焦がされていた。 恐らくは「止血」のためであろう。

それでも彼は死ぬことなく生きていた。 発狂していた彼は今も
病院の集中治療室の中、生命維持装置や医療機器に埋もれている。

彼が何者によってこのような陰惨な目に合わされたのか?
ドールズの一人、水銀燈が失踪したことも合わせ、文字通り
「世界中の」注目を集めた。 数週間後、水銀燈は忽然と関係者の
前に姿を現し奇跡の生還として再度世界を沸かせた。

・・・真実を知り、なお生きている者は私と義行氏のただ二人である。
今の義行氏を「生きている」と言えればの話だが。

あの時、水銀燈は私が死んだと思ったことだろう。
なにせ間違いなく私の心臓は停止し、30分以上もそのままだったのだ。
文字通りの奇跡を喜ぶいとまもなく私は姿を消した。
後に両親に連絡を取ると私の存命を喜び見知らぬ
異国の地に揃って引っ越して来てくれた。

私はいつか日本に帰ろうと思う。 そして彼の墓前に花を手向けよう。 
同じ「恐怖」を味わった者として、せめて祈りを捧げたい。

私は静かに思いを馳せ、瞑目した。

・・・プルルルルル、プルルルルル、プルルルルル

電話が鳴っている、誰からだろう。

「もしもし?」

「・・・おひさしぶり」
「っ!?」
「元気そうね? また貴方の声を聞けて嬉しいわ、私の可愛いミーディアム♪」
「な、なんで・・・?」
「貴方のお友達に教えてもらったの! とっても素敵な方ね? 私気に入っちゃって。」
「新島をどうした!?」
「そんなに怒鳴らなくても聞こえるわ。 一緒に楽しく遊んだだけよ。
 でももう・・・遊べないけどね?」

即座に理解した。 新島はもうこの世にはいない。
願わくばその魂の安らかならんことを・・・

「貴方の次のミーディアムもね?  まだ元気なのよ!
 毎晩こっそりお見舞いに行くの。
 私が耳元で囁くだけで泣いて喜んでくれるのよ!
 歯も舌もないのにね?  鼓膜を残しておいて良かったわぁ・・・」

悪魔だ! 悪魔の所業だ!!
義行氏はあの地獄の果てになお彼女に苦しめられ続けるのか!
 
「でも心配しないで?
 いずれ貴方もたっぷり愛してあげる。 だって貴方は私のものだもの?
 そうでしょ? 私の可愛いミーディアム♪ 壊れて動かなくなるまで、ね・・・」
「貴様の思い通りになるものか! すぐに貴様を告発してやる!
 貴様ももう終わりだ! 覚悟するんだな!!」

私は受話器を乱暴に叩きつけた。
気が付くと体中が汗でベッタリとしていた。

大口を叩いて見たものの勝ち目などあるわけもない。
するべきことはもはや一つだ。 覚悟はすでにできていた。
私は引き出しにある拳銃を取り出して装弾を確認する。 
三人が死ぬには十分だろう。 老いた両親を残してはいけない。

深くタメ息をつくと両親のいるリビングへと向かった。
父さん、母さん、愛してるよ・・・

ドアを開けた瞬間私は凍りついた。 

目の前に水銀燈がいる。 
携帯電話を両手で支えもち自分の耳に押し当てていた。

「・・・」
「ごきげんよう? 私の可愛いミーディアム♪」

だが一瞬で腹を決めた私の行動は素早かった。
即座に拳銃を構える。 彼女にではない、自分のこめかみにだ。
しかし手が嫌に軽い?

「コレ?」
「!?」

拳銃は水銀燈の手に握られていた。
いつの間に・・・

「ダぁメよ? 貴方は私がたっぷり可愛がってあげるんだから!
 ウフフフフフフフフフフ♪」
「・・・」

恐怖と絶望が私の意識を奪い私はその場に昏倒した・・・。

そして指の動きは止まる・・・終わった、ようやく

「ふぅっ・・・こんなもんかな?」
桜田ジュンは自身の書き上げた短編の推敲を終え、一息ついた。

 「水銀燈忌憚」

それがこの短編の題名である。
いかに水銀燈が残忍で冷酷で非情で傲慢で我侭で根暗で
自己中であることを知らしめるのだ!

「そうそう、アイツの趣味は押入れの中でエアパッキンをプチプチすること、と」
新たに思いついた文面を書き込む。

「・・・なにをしているのかしら?」

 カチッ

すかさずPCのモニタースイッチを切断する
その間わずかにコンマ1秒
金メダルも夢じゃない! やったぜ姉ちゃん!
ってそんな競技ねーや・・・

膨らみかけた妄想を切り上げ、背後を振り返る
見なくてもわかっているが・・・水銀燈だ

「・・・なんだよ?」
そっけなく聞き返す。 

「なにか面白そうだったから、つい、ね」
相変わらずの皮肉っぽい笑み、ムカツク

「別に? 大したもんじゃねぇよ。」
「かまわないわ、ぜひ見せていただけないかしら?」
「駄目だよ」
「どうして?」
「どうしても」
「子供みたいなコトを」
「子供だからな」
「・・・あら? アレ巴ちゃんじゃない?」
「なにっ!? ど、どこだ?」

 カチッ

 あっ

水銀燈はすかさずスイッチを入れていた
モニターを見た途端に引きつる笑顔はマジデビルだ

「・・・」
「覚悟はいいわね? ボ・ウ・ヤ♪」

うわなにをせdrftgyふじこlp;

   「 ふ じ こ 」  完

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とりあえず処女作改「ふじこ」はこれで完結です。
続編? というか関連作品をもうすぐ書き終えるので
出来次第書き込みます

最後の一文 うわなにをせdrftgyふじこlp;

これを書くためだけに書き上げた作品と言っても過言ではありません
罵詈雑言受け付けますので御感想よろしく

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