朝日が見え始めてきた頃
少女と人形が眠る部屋
人形は目を覚ます
「…羽根、もう痛みも消えてきたわねぇ…」
起き上がり、少女を起こさないようにそっと窓を開ける
「水銀燈」
「!……なによぉ、起きてたなら起きてるっていいなさいよぉ」
少女は微笑しながら
「ごめんなさい、水銀燈の寝顔が可愛かったから」
水銀燈が起きるまで起きてたということらしい
「寝てる振り……めぐ、貴女性格悪いわぁ……」
「貴女に似て、ね」
「……呆れたぁ…」
飛び立とうとする水銀燈
「また、どこかに行っちゃうの?」
不安げな表情に一変する少女
「……もどってくるわぁ…」
少女は安堵し
行ってらっしゃい。と送り出した
夕方、もう年の瀬も近く慌ただしい街に佇むは有栖川大学病院
水銀燈が戻ってきたとき愛しい少女は泣いていた
静かに涙を零していた
水銀燈が戻ったとわかると少女は涙をふき、お帰りなさい。と言った
「……」
空気が凍ったように沈黙が張りつく
水銀燈はなにも尋ねなかった
「なにも、聴かないのね」
「……聴いて…欲しいの?」
少女は少しだけ微笑む
黒い天使はまるで人形のように少女の隣に座る
「髪、乱れちゃったわぁ。といてくれないかしら」
少女はもう少しだけ微笑んで静かに
…ありがとうと言った