僕は桜田ジュン。最近姉ののりはクラブの長期合宿で三ヶ月は家に帰らないらしい。
まあ自炊も覚えたし何とかなるだろう。

僕はネットで通販を楽しむ。まあ最近少し飽きてきたかな。
それで適当に画面をクリックしてるとひとつのメッセージが出てきた。
『あなたはとてもラッキーな方です。このアンケートの答え次第で運命が変わります』
何だか胡散臭いと思いつつ読み進める。
『巻きますか?。巻きませんか?』
いろいろ読んだが最後に出たのはこの文だ。
「何だこれは。まあ大したことじゃないだろ」
そうつぶやき巻きますの方をクリックした。だが何も起きなかった。
電源を落とすと夕飯の買い物に向かった。

買い物では結局焼いたら終わりのステーキを買った。一人なのに二枚で半額に釣られて
二枚も買ってしまった。少しアホだったな。
家に帰ると荷物を台所に置くと一度部屋に戻る。服を普段着に着替えるためだ。

部屋に戻るとなぜか黒いかばんがあった。
何だこれは?
そう思いながらもかばんを開けてみた。するとピンクの服を着た可愛い人形が入っていた。
金色の髪も綺麗に巻かれていてとても綺麗だった。
「可愛いな」
思わずそうつぶやいた。そして気づいた。ゼンマイがあることに。
「ゼンマイか。意外と古いのかな?…そうかこれはさっきのアンケートの?
でもどうして?まあとりあえず巻くかな」
迷ったが好奇心に負け結局巻いてみた。
すると人形は目を開けた。
「うわっ」
さすがに驚いた。いきなり目を開くとは・・・」
「うーん、あなた誰?」
「えっ!?」
「誰なのぉ?」
「えっと・・・僕は・・・桜田ジュンだけど」
「ジュン?ヒナはね。雛苺って言うの?」
「雛苺?」
「ジュンはヒナのお友達になってくれるの?」
「えっと・・・」
さすがに困惑を隠せない。だっていきなり人形がしゃべるんだ。
普通は混乱でもう何をして良いか分からない。名前を自己紹介したことも奇跡だ。
でも相手はどうやら危害を加えるようなホラー映画のモンスターじゃないらしい。
僕は冷静に返した。
「まあ友達なら・・・良い・・・かな」
「ほんとう。やったー。ヒナのおともだち」

これが僕と雛苺の奇妙な生活の始まりだったんだ。

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「えっと雛苺。僕は今から夕食を作らないと駄目なんだけど雛苺はどうする?」
「ジュン何か作るの?ヒナは甘いものがいいの」
「甘いものって・・・?」
「甘いものは甘いものなのぉ」
「分かったよ。じゃあとりあえず冷蔵庫で何か作れるものがあるか探してみる」
僕は雛苺のために何かお菓子を作ることにした。
冷蔵庫を開けると牛乳とか小麦粉とかのほかになぜか苺があった。
恐らく姉が買っておいて出すのを忘れたのだろう。賞味期限を見ると・・・今日だった。
「とりあえず生クリームケーキでも作るか」
僕はパン生地をすばやく作りオーブンで焼いた。そしてその間に生クリームも作って
途中で雛苺が
「ジュン。ヒナ退屈なの」
といったのでとりあえずテレビでもつけてみると人形劇をやっていたのでそれを見せてみた。
するとすっかりそれに見入っているのでわずか二時間でケーキは完成してしまった。
「雛苺。ケーキが出来たよ」
「えっ。ケーキ。うれしいの」
雛苺はケーキを聞くとすぐにテーブルのいすに座る。
「じゃあ切るよ」
僕は一号のミニホールのケーキを半分に切ると雛苺のお皿に乗せた。
「わーい。いただきますなのー」
雛苺はおいしそうにケーキを食べ始める。

「ジュン。おいしいの」
雛苺はすぐに半分のケーキを食べてしまった。
「早いな。じゃあもう半分食べるか?」
「えっ。本当なの」
「ああ。じゃあ僕はステーキでも焼いて食べるよ」
雛苺がもう半分のケーキを食べてる間に僕はステーキを焼く。
そして雛苺がケーキを食べ終えるのと同時に僕の夕食も出来上がった。
「ヒナ幸せなの。ケーキ大好きなの」
「そう。じゃあ僕は食事をするけどついでにいろいろ聞いても良い?」
「?なんなの」
「雛苺は人形だけど食事も出来るししゃべれるし。どういう人形なの?」
「ヒナはローゼンメイデンの第六ドールの雛苺なの」
「ローゼンメイデン?第六って他にもいるのか」
「うん。全部で7人居るの。それでね。アリスになるために他のドールと戦わないといけないの」
「戦う?」
僕は食事をしながら聞いていたが思わずナイフとフォークが止まる。
「戦うってどういう風に?」
「えっとね。ローザミスティカを7つ集めるとアリスになれるの。それでアリスになるために他の
ローザミスティカを奪わないと駄目なの」
「ローザミスティカ?何それ?」
「えっとね。マスターと契約する・・・。あっ!?忘れてたの」
「何が」
雛苺の表情が急に焦ったような顔になる。本当に人形とは思えないぐらい表情が豊だ。
「これなの。ネジを巻いてくれた人と契約しないと駄目なの」
「契約?」
おいおい。何だか急展開だな。
「この指輪にキスしてくれたら良いの。そうしないとヒナ困るの」
「・・・キスは恥ずかしいな。契約しないと駄目かな」
さすがにキスは恥ずかしい。
「ヒナ契約してくれないと困るの。ジュンと一緒に居られなくなるの。ジュンは約束してくれたのに
 またヒナから去っていくの?」
また?思わず聞こうとしたが止めた。恐らく雛苺にも悲しい過去があったのだろう。
この悲しそうな顔を見たら分かる。そして僕はもう迷わずに雛苺の指輪にキスをした。
「ジュン?」
「約束は守るよ。ずっとヒナのそばに居るよ。・・・わっ」
驚いたいつの間にか僕の指にも指輪がはまっていた。
「契約するとジュンの指にも指輪がはまるの。これでヒナとジュンは絶対の友達っ」
雛苺は僕に抱きついてきた。
でも雛苺は可愛いな。こんな可愛い子なら甘えられても良いかもな。

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雛苺が家に来てから三日がたった。
僕と雛苺は毎日を楽しく過ごしていた。だがひとつだけ問題があった。
それは雛苺が僕の作るケーキやクッキーといったお菓子は食べるがちゃんとした料理はまだ食べてないのだ。
いくら人形でも栄養が偏るのは悪いと僕は思い今日の夕食は雛苺にご飯を食べさせようと思う。

夜になる。雛苺と僕はゲームをしたりお絵かきをしたりして遊んだが晩御飯の準備をしなければならない。
「雛苺。今から夜のご飯を作るからテレビでも見てて」
「分かったなのー」
雛苺はテレビをつけるとくんくん探偵のテレビを見始める。雛苺はこの番組が大好きらしい。

僕はさっそく料理を始める。子供だし最初はハンバーグで良いだろう。
上に目玉焼きを乗せて、添え物はフライドポテトで良いかな。
野菜は人参をバター焼きにしておけば美味しく食べれるだろう。
僕は結構子供受けするように味付けも少し工夫してみた。もちろん目玉焼きは花丸に型を取る。
これだけでも印象が大きく変わるからだ。

「雛苺。出来たよ」
「ねえジュン。これ何なの?」
「雛苺のご飯だよ。いつも甘いものだけじゃ健康に悪いし」
「・・・美味しいの?」
雛苺ははじめてみるものに少し戸惑っている。
「大丈夫だよ。それにそれを全部食べたらいつもより奮発したデザートもあるよ」
「本当なの」
「もちろんだよ。だから食べてみてよ」
「分かったの。食べてみるの」
雛苺はハンバーグをナイフで切るとフォークで口に運ぶ。
意外とナイフとフォークの使い方はしっかりしていた。

「美味しいの。ジュンの美味しいの」
雛苺は美味しいと言ってくれた。
僕はとてもうれしかった。頑張って作っただけあった。
雛苺は他にフライドポテトや人参のバター焼きもしっかり食べてくれて本当に良かった。
まずいとか言われるかもという不安はあっさりと解消された。
「じゃあデザートでも食べるかい?」
「やったーなの。ジュンのケーキは本当に楽しみなの」
今日のケーキはフルーツタルトにしてみた。雛苺はとても喜んでくれた。

そして夜。
「お休みなの」
雛苺はかばんに入って眠りに付く。
僕は締め切り前の仕事があったのでまだ起きている。
「えっとー。これからどう話を動かしていこう」
そう。雑誌に載せる小説の連載の締め切りが明日の朝なのだ。
雛苺と甘い生活を送っていたらすぐに締め切りが近づいていた。
「今日は徹夜か」
そうつぶやくと両頬をたたいて気合を居れ、小説を書いていく。

「見つけたよ雛苺。君のローザミスティカ・・・奪わせてもらうよ」
ジュンの家の向かい側の家の屋根から見下ろす一人のドールはただ、ジュンの家を見下ろしていた。

雛苺と出会って五日が経った。
昨日は徹夜で仕事をしたからさすがに疲れて一日中寝てしまった。
だからその分も今日は雛苺と楽しく過ごそうと思う。
「雛苺。今日は何をしようか」
「じゃあジュンも一緒にヒナのフィールドで遊ぶの」
「ヒナのフィールド?」
「そうなの。とっても楽しいのよ」
「へえ。じゃあ行ってみようか」
そして僕は雛苺と一緒にヒナのフィールドに向かう。
押入れの大きな鏡が入り口らしい。でも人形とこうして生活してる時点で今までの常識など通用しないのは分かる。
だからあっさりと僕は信じて中に入る。
中はメルヘンチックな空間だった。
「ここがヒナのフィールドなのか」
「そうなの。確かNのフィールドとも言うの」
「へえ」
「やけに楽しそうだね」
後ろから声がする。僕と雛苺が振り向くとそこには短い髪の人形が立っていた。

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