『花丸ハンバーグとのり』

りは空前絶後のスランプに陥っていました!
今まで花丸ハンバーグさえ作っていれば大喜びだった
あの子たちが、まるで反旗をひるがえしたようにひとっくちも食べなくなってしまったのです。
原因も分からず、毎日毎日試行錯誤を繰り返すばかり。
卵を比内地鶏の高級なものに変えてみたり、ハンバーグのつなぎに
やまいもを入れてみたり、でも全く効果というものがありません。
雛苺ちゃんなんて、なんだかだんだんほほがこけてきたような気さえします。
どうせ気のせいでしょうけど。

「決めた、お料理教室に通うことにするわ」

まさに一大決心。
のりは初月分の月謝を握り締め、出会いと直感で決めたあのお料理教室の扉を叩いたのです。

平屋だてのなんとも汚らしい一軒家。ここがのりの選んだお料理教室なのです。
『マズイ料理教室』
ぼろぼろの看板にはそう書かれています。いえ、良く見れば「゙」は汚れです。
正解は「増井さんのお料理教室」でしょう。
なんだか逃げ出したい気分にもなりますが、月謝500円の魔力には勝てません。

「こんにちは、先ほどお電話した桜田ですが…」

一歩踏み込んだだけで分かります。独特のすえた匂い。
どうみたって、ここはスナックかなんかです。
そしてその奥には、きっとお料理の先生なんでしょうけど、
決してはそうは見えない、真っ赤な衣装に身を包んだおばさんが一人。

「あー・・・・まきますか?まきませんか?」

のりの頭は混乱でぐっちゃぐっちゃです。よくみるとおばさんの着ている服は
真紅ちゃんの着ている服にそっくり。おばさんの間でもゴシック調の洋服が
流行っているのでしょうか。いろいろな考えが頭を巡って、おばさんの
声を脳みそで処理しきれません。

「巻くか巻かないかって聞いてるのだわ。どっちにすんの?まく?まかない?」

のりは気迫に負けて首を縦に振ることしかできませんでした。
すると、おばさんはにっこりと笑い置くから薔薇の指輪を持ってきました。
薔薇といっても、どう見たって紙粘土で即席で作ったものです。

「じゃあ、今日からあんたがあたしのミーディアム。
 ミーディアムは生徒であって下僕ね。オオケイ?」

おばさんは、のりから500円玉をふんだくると、
「まきますか・まきませんか」と書かれた紙に大きく丸をつけました。

もう変を通り越して、のりはこの人が偉大なお料理の先生に見えてきました。
ほら、良く言うじゃないですか、真の料理人には変な人が多いって。
のりの中から、やる気がふつふつと沸いてきます。
おばさんが「お茶をいれなさい」とか「だめな下僕ね」とか、
みょうちきりんな棒読みセリフを繰り返していますが。そんなのは全然気になりません。

それから3時間、みっちりとお料理のお勉強・・・・のはずもありません。
おばさんは、タバコを吸いながら、コミックバーズを読んで大笑いしていました。
まったくやる気なし、のりのやる気とは裏腹に何一つだって教えてくれはしません。

「先生!いい加減にしてください!少しは私に何か教えてください!」

さすがののりも、頭にかーっと血がのぼっちゃいました。たった500円ですけど、
月謝というものを払っているんです、それなのにこの扱いはあんまりというものです。

「下僕!そんな気持ちが料理を不味くしていることに 気付くべきだわ!」

突然の言葉のボディーブローにのりは思わずのけぞりました。
確かにそうかもしれない、小さなくよくよが少しづつ花丸ハンバーグにふりかかって、
きっと不味さのふりかけをかけたようになっていたのです。
雛ちゃんも真紅ちゃんも翠星石ちゃんも、それに少しずつ気付いていたはずです。

「先生・・・私が間違っていました。」

のりの目から自然に涙がこぼれていきます。いま大事なものを掴んだような気がするのです。
お料理教室とは思えない設備、先生とは思えないへんちくりんなおばさん、そして看板が「マズイ」。
何一ついいところのないこの料理教室でしたが、他の料理教室では何百万円支払ったって
得られないものを、のりは得たのです。

「いい子ね、下僕。そして私はあなたのかわいいお人形。」

おばさんも貰い泣きをして、のりを抱きしめます。セリフはまたしても棒読みですけど。

「ありがとうございました。私、なんだかいろいろと吹っ切れたように思います」

のりの目は希望の光で満ち溢れています。もう何も怖くありません。

「これをもっていくのだわ、これはマスイ料理教室に伝わる魔法のソース。
 気持ちを美味しさに変える調味料なのだわ」

のりは、何度もお礼を入ってお料理教室を出ました。
きっと返ってたら、皆が喜ぶような最高の花丸ハンバーグを作れることでしょう。
今ののにりにはそれを作る自身があるのです。
それに、今はこの魔法のソースもあるのですから。

その瓶にはうっすらと消えかかった文字で、こう書かれていたのです。
「After Death」

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