前スレ>>879の続き
「・・・・・・・・・・」
水銀燈が泣き止んだ後沈黙が続く。
水銀燈は真紅達に心を許したと言ってもこのような雰囲気の経験はほとんどなく何を話したら良いのか分からずにいた。
その間水銀燈はジュンの服を握り締めたまま少し不安げな顔をしていた。
「水銀燈。紅茶でもいかがかしら?」
沈黙を破ったのは真紅だった。
真紅のその言葉に水銀燈は小さく頷いた。
「そう。ジュン紅茶を入れてきて頂戴」
「ハァッ!!何で僕が!?お前が行けよ!!」
「ジュン。家来が主人に逆らうものではないわ。さっさと紅茶を淹れて来て頂戴」
ジュンはこれ以上反論するだけ無駄だという事が分かっていたので渋々と紅茶を淹れに行った。
ジュンが立ち上がった時水銀燈の握り締めていたジュンの服が水銀燈の手から離れた。
この時、水銀燈はより不安そうな顔をした。
それを見た真紅は優しく微笑み一言言った。
「水銀燈。何も心配することは無いわ。私達はもう仲間でしょ?」
仲間という言葉を以前はあれ程馬鹿にしていた言葉なのに、今の水銀燈には何よりも大切な言葉に聞こえた。
水銀燈はまた泣きそうになりながらも頷いた。
その時にリビングのドアが開いた。
「おはよう。今日は皆早いのね」
ジュンの姉ノリが起きてきたのだ。
「あら!?いい匂いね。紅茶かしら?」
そう言ってノリはキッチンに歩いていった。
この時、ノリは水銀燈が居ることには気付いていなかった。

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「おはよう。っていうかお前気付いてないのかよ。ホラ、あいつ」
ジュンは姉のノリに軽く挨拶をして水銀燈の方を指差した。
「え・・・・・。え〜と・・・水銀燈ちゃんだったかしら?」
ノリは悩みながらも笑顔で水銀燈に聞いた。
「え・・・ええ。そうよ。あなたは?」
以前二人は出会っていたが水銀燈はノリの名前は知らなかった。
やはり不安げな表情をしていた水銀燈を包み込むような優しい笑顔でノリは答えた。
「桜田ノリよ。よろしくね。水銀燈ちゃん」
「・・・・よろしく」
水銀燈も微笑み返した。
その笑みは以前のような不敵な笑みではなく、純粋な笑みであった。
「真紅。ほら、紅茶淹れたぞ。お前も飲むよな?」
ジュンは真紅と水銀燈の前に紅茶を出した。
「ご苦労」
真紅はジュンにねぎらいの言葉を言って、紅茶に口をつけた。
水銀燈も続いて紅茶に口をつけた。
「それより、そろそろ朝食の準備しなくちゃいけないんじゃないのか?」
「っえ・・・・あぁ!!直ぐ用意するからね。水銀燈ちゃんも食べてくよね!?ジュン君、雛ちゃん起こして」
水銀燈が返事をする間もなくノリは朝食の作り始めた。
ノリは朝食を皆の前にだして、制服に着替えに行った。

「じゃあ、行って来るけど戸締りとかよろしくね」
「あぁ。いってらっしゃい」
ノリが急いで学校に向かった後、直ぐに窓ガラスが割れる音がした。
ジュンは昨晩リビングのソファーで寝ていたり朝に色々あったりしたため、窓を開けるのを忘れていた。
突然窓ガラスが割れた事に水銀燈が驚いてジュンの部屋に上がって行った。
勢い良くジュンの部屋のドアが開かれた。
その時水銀燈の目には窓ガラスを割り浮遊する鞄が飛び込んできた。
一体誰だろうなどと水銀燈が考えていると、後方からもう一つ鞄が飛んできた。
先に窓ガラスを破った方の鞄が開いた。
水銀燈は少し身構えていた。
「人間。遊びに来てやったですよー!!」
続いて今着いた方の鞄も開いた。
「翠星石、そんなに急がなくてもジュン君は居なくなったりしないよ」
鞄の主は双子の姉妹、翠星石と蒼星石であった。
丁度その時水銀燈の後方にジュンが現れた。
「お前等。たまには玄関から入って来い」
呆れた様子で翠星石と蒼星石にジュンは言った。
「人間、なぜこの私が来たというのにシケタ面をしていやがるですか・・・・・・水銀燈?」
翠星石は嬉しそうに話していたが、水銀燈の姿を見た瞬間蒼星石の後ろへ隠れるように鞄ごと移動した。
蒼星石もそんな翠星石を守るように前に出た。
「何よぉ。やるっていうのぉ?」
水銀燈は勘に触ったのか翼を広げ始めた。
「待て待て待て!!お前等ちょっと待て!!」
「人間。何で止めるですか!!」
「ふぅ・・・」
ジュンは溜息をつき真紅と同様に今までの経緯を説明した。
事情を聞いて翠星石と蒼星石は納得した。

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「・・・・・・・・・・・・」
「どうしたですか?水銀燈?」
トイレのドアを開けじっと見つめる水銀燈に翠星石は問う。
「別にぃ。唯この家の中で一番まともな部屋と思ってねぇ」
「・・・・・水銀燈、トイレって知ってるですか?」
水銀燈は真紅と同じ様な事を言った。
それを聞いた翠星石は水銀燈は一瞬馬鹿じゃないかと思った。
「トイレせ?何よぉそれぇ?」
「トイレというのはですね人間が汚物を出すところです・・・・」
「・・・・・・・・・・」
水銀燈はよほどショックだったのか、口を開けて固まってしまった。
ちょうどその時、真紅と雛苺と蒼星石がやってきた。
翠星石は真紅達に嬉しそうな顔をして近寄った。
水銀燈はまだ固まったままだ。
「真紅、真紅聞いてください。水銀燈はトイレがこの家で一番まともだとか言ってたです」
「翠星石。あまりそのような事は言いふらすものではないわ」
真紅は少し怒ったような顔をしながら言った。
「翠星石ぃ、真紅はトイレの事知らなかったの」
「黙りなさい!!雛苺!!」
雛苺の発言に真紅は顔を真っ赤に染め怒鳴った。
そんな中蒼星石は固まったままの水銀燈を心配している。
「ねぇ、翠星石。水銀燈さっきから揺すったりしても反応が無いんだけど・・・・・・」
「ほっとくです。どうせその内元に戻るです」
双子がそんな事を言っている時に桜田家のチャイムが鳴った。
「誰かしら?」
「見に行くの!」
真紅と雛苺が玄関に向かって走り始めた。
「蒼星石。私達も見に行くですよ」
「僕は水銀燈が目を覚ましてから行くよ」
「・・・そうですか」
翠星石は少し寂しそうに言って、真紅達を追っかけて行った。
二階でパソコンをしていたジュンが降りてきて玄関に向かっていて、ちょうど真紅達がドアを開けようとしていた。
それを見たジュンはすかさずそれを止めた。
「待て、真紅。お前達がドアを開けてもし普通の人が来たらどうする気なんだ?」
真紅達はジュンの言葉を聞いてピタっと止まった。
そして、ジュンの方へ向き直り一言、言い放った。
「そんな事、どうにでもなるのだわ」
真紅は当たり前の様に言って、またドアの方を向きドアノブに手を伸ばした。
「ちょ、待て!真紅!!」
ジュンは必死に止めたが真紅はドアを開けてしまった。
その頃、水銀燈はショックから立ち直っていた。
水銀燈の目の前には蒼星石以外誰も居なく、顔を真っ赤にして蒼星石に尋ねた。
「ねぇ、蒼星石。私の言った事・・・・・・聞いた?」
蒼星石は苦笑いをしながら申し訳なさそうにしながら頷いた。
水銀燈は更に顔を真っ赤し蒼星石の顔を見ようとしなかった。
「はぁ、真紅達に合わす顔がないわぁ」
「大丈夫だよ。真紅もトイレの事を知らなかったみたいだし・・・・・」
「そう、ところで真紅達はどこに行ったのぉ?」
水銀燈は少し気分が楽になり、落ち着いたところで真紅達が居ないのに気がついた。

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「真紅達なら玄関に行ったよ」
蒼星石は水銀燈が少し元気になった様子を見て微笑んだ。
「そう。玄関って・・・・・こっちよね?」
「うん。一緒に行こうか」
そう言って蒼星石は水銀燈の手を引き玄関へ向かって走り出した。
手を引いて走っている時の蒼星石の顔はとても幸せそうだった。
それに比べ水銀燈は蒼星石の意外な行動に驚いた様子で手を引かれながらも走っていた。
丁度玄関の前でジュンが自分の部屋に戻ろうとしていた。
「あっ、ジュン君誰が来たの?」
蒼星石はジュンに、まだ先程の幸せそうな顔のまま尋ねた。
「あぁ、金糸雀だよ・・・・・蒼星石、お前なんだか嬉しそうだな」
「えっ!?そうかな?フフ・・・」
まだ手を握り締めたまま、また玄関に向かい走り始めた。
水銀燈は蒼星石と手を繋いでいると何だか顔が赤くなってきた。
そして、玄関では真紅達が金糸雀を迎え入れる所だった。
「っあ、蒼星石。こんにちわかしら・・・・・・す、す、水銀燈ーーッ!!」
金糸雀は蒼星石に挨拶をした時蒼星石と手を繋いでる水銀燈を見て絶叫した。
「ちょっ、落ち着いて金糸雀」
蒼星石は必死に金糸雀を宥め様とした。
しかし、金糸雀は混乱しきっていて蒼星石の声が届いていなかった。
その時、水銀燈から金糸雀に向けてヒュッっと風を切る音と共に羽が飛ばされた。
羽は金糸雀の頬をかすめ床に刺さり、騒いでいた金糸雀はピクリとも動かなくなった。
「うるさいわよぉ。金糸雀。少し黙ってなさいよぉ」
「わ、わかったかしら・・・・・」
「何故私がここにいるかというと・・・・・・」
水銀燈は金糸雀を黙らせて自分がここに居る理由を話し始めた。
真紅達は話が長くなりそうだったので先にリビングへ入っていった。
数十分後リビングに金糸雀と水銀燈が戻ってきた。
「疲れたかしらー」
金糸雀は目を回しながらソファーに倒れこんだ。
「あら、遅かったわね。紅茶入ってるわよ」
「金糸雀が色々質問するから少し遅くなっただけよぉ」
水銀燈は紅茶を口元に運んで一口、口に含み飲み込んだ。
そして、人に聞こえるかどうか分からない位の大きさで溜息をついた。
「どうしたの?水銀燈」
真紅がその溜息の音を聞き取れたのか、心配そうな顔をして水銀燈に尋ねた。
そんな真紅を見て水銀燈は声を出して笑った。
「な、何が可笑しいのよ」
「だってぇ、真紅ったらそんな心配そうな顔をしたりして・・・・別に何も無いわよ。唯、こんなに美味しい紅茶を飲んだのも久しぶりだなぁ、って思ってね」
水銀燈は笑いすぎて涙が少し零れていた。
そんな水銀燈に対し真紅は別に恥ずかしい事など何も無かったのに頬を朱に染めていた。

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「ねぇ、水銀燈かくれんぼやろう?」
水銀燈の背後から雛苺が話し掛ける。
「かくれんぼぉ?それ何ぃ?」
水銀燈は首を傾げた。
そんな水銀燈の質問に雛苺が少し驚いたような顔をした。
しかし、今まで水銀燈は一緒に遊ぶ事をする様な友達もほとんどいないため、かくれんぼの事を知らないのは当たり前といえば当たり前であった。
「う〜んと・・・かくれんぼっていうのはね、ジャンケンで鬼を決めて他の皆は隠れるて鬼が隠れた皆を探す遊びなの」
説明を終えた雛苺は水銀燈の返事も聞かずに腕を掴んで皆の所まで引っ張っていった。
「早くするですぅ。これだからチビチビは、さっさと始めるですよ!」
今にも痺れを切らしそうな翠星石が雛苺達を急かした。
かくれんぼに参加するメンバーは翠星石、蒼星石、雛苺、水銀燈、金糸雀である。
真紅は面倒くさい、ドレスが汚れる等の理由で参加しない。
「「「「「ジャーン、ケン、ポン」」」」」
ジャンケンの結果は一瞬で決まった。
翠星石の一人負けである。
「さっさと散るです。十数えた後、問答無用で探しに行くですよ!!」
納得のいかない顔をしながらも数を数え始めた。
雛苺は真紅が座っているソファーの下へ、蒼星石は鏡の部屋のカバを自分の前に置居たところへ、金糸雀は冷蔵庫の中へ隠れた。
そして、水銀燈は階段を上りジュンの部屋に入っていった。
扉の開く音がしたのでジュンは扉の方へ目を向けた。
「何だ・・・・お前か・・・」
「何だとは何よぉ」
少し頬を膨らませ水銀燈はジュンの部屋を浮遊して、どこかいい隠れ場所が無いかを探し始めた。
ネットをしていたジュンだが、水銀燈が部屋の中を浮遊しているおかげで、パソコンに集中できなかった。
「だぁーーーー!!一体何してんだよ!!」
ジュンは怒鳴り声をあげながら椅子を立ち上がり水銀燈に詰め寄った。
少し驚いた水銀燈だが、冷静に対処した。
「何ってかくれんぼをしてるんだけど、何処かいい隠れ場所ないかしらぁ?」
「じゅーーーう!!探し始めるですよぉ!!」
リビングから翠星石の声がした。
翠星石の声を聞いた瞬間、水銀燈は焦りを見せ始めた。
「は、早く場所を教えなさいよぉ。見つかっちゃうじゃない」
小声で水銀燈はジュンに場所を尋ねた。
ジュンが頬を掻いて手ごろな場所を探してみた。
「う〜ん・・・・・あそこなんかどうだ?」
ジュンはベッドの下を指差した。
ジュンのベッドのしたはよく雛苺が隠れる場所なので見つかる確立が非常に高かったのだがジュンは咄嗟にベッドの下を指差した。
「そう・・・・ありがとう」
水銀燈は無邪気な笑顔でジュンにお礼を言いそそくさとベッドの下に潜り込んで行った。
その姿だけを見るとついこの間まで真紅達と争っていた者とは到底思えない。
ジュンは気を取り直して椅子に座りパソコンの方を向きなおした。

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水銀燈がベッドの下に隠れて数分、一階では次々と翠星石に見つけられ残るは、水銀燈と金糸雀だけとなった。
階段を誰かが上ってくる音がした。
十中八九翠星石であろうと思い水銀燈は息を殺した。
バンッ!!と勢い良くジュンの部屋の扉が開かれた。
そこに現れたのはやはり翠星石であった。
ジュンは少し翠星石の方を見ただけで特に何も言わなかった。
「人間ここに水銀燈か金糸雀が来なかったですか!?」
「さぁな・・・・・・」
翠星石はジュンの素っ気の無い返事に少し苛立った。
恐らくここにはジュン以外の誰かが居ると翠星石は考えた。
黙々と翠星石は隠れている「誰か」を探し始めた。
といってもジュンの部屋には隠れる場所など殆ど無く、隠れる場所といったらジュンの机の下かベッドの下ぐらいしかなかった。
水銀燈が隠れるベッドに翠星石が近付き一気にベッドのシーツを捲り上げた。
「見つけたですぅ。水銀燈、出てくるです」
見つけられた水銀燈は渋々とベッドの下から出てきた。
翠星石達は一階に降りた。
残りは金糸雀だけであったが、どこを探しても見つからなかった。
「降参ですぅ。金糸雀はどこですかー?」
翠星石が根を上げた。
「今、翠星石の降参という声が聞こえたかしら。じゃあそろそろ出て行ってあげるのかしら」
冷蔵庫内に居る金糸雀は内側から冷蔵庫を開けようとした。
しかし、冷蔵庫は内側からは開かない仕組みになっておりローゼンメイデン一の策士家金糸雀は冷蔵庫に閉じ込められてしまった。
「あら!?開かない・・・・・これは想定外かしらああぁぁ!!」
冷蔵庫の中の金糸雀は必死に叫んだり暴れたりしたが、外の皆には全く聞こえなかった。
そして、皆に金糸雀は何処かで寝ているのか帰ったと勝手に決め付けられてしまった。
「何だか寒くなってきたわ。あ・・・・みっちゃんが見えるのかしら」
金糸雀は冷蔵庫内で幻想を見始めていた。
冷蔵庫内に金糸雀が居るとは真紅達は知る由も無く時間が唯過ぎていった。
「ただいまー」
スーパーの袋に食材を一杯に買い込んだノリが学校から帰ってきた。
雛苺と翠星石、蒼星石がノリに駆け寄る。
皆が口々に「お帰り」といった。
真紅と水銀燈はリビングでくんくんのDVDに見入っていた。
ジュンも二階から降りてきた。
「お帰り」
一言そう言ってリビングに入っていった。
ノリも続いてリビングに入る。
その時、今日は水銀燈が来ている事を思い出した。
「あっ、そうか今日は水銀燈ちゃんも居たのね。よーし、お姉ちゃん張り切ってお夕飯作るわよ!」
そんな事を言いながら台所に立ち買ってきた食材を冷蔵庫に入れようと扉を開けた。
すると、ゴトンと言う音と共に冷蔵庫から金糸雀が落ちてきた。
「っえ!?ッキャーーーー!!」
ノリの悲鳴が家中に響き渡る。
人形達が次々と台所に集まって来た。
「ノリ、どうしたの!?」
真紅が血相を変えて走ってきて言った。
「カナちゃんが・・・・カナちゃんがぁ」
今にも泣きそうな顔をしてノリが金糸雀を指差した。
「金糸雀の野郎こんな所に隠れてやがったですか・・・・」
「ノリさん金糸雀なら大丈夫。僕達は人形だからこのぐらいなら大丈夫・・・・・多分」
蒼星石はノリを宥めた。
金糸雀をソファーに寝かせて、ノリは料理を作り始めた。
ノリが調理を終える頃には金糸雀も目を覚ましていた。

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「わ、私は・・・・ここは?みっちゃんは?」
目を覚ました金糸雀の一言に一同は静まり返った。
「カナちゃん、大丈夫?」
「大丈夫だと思う・・・」
金糸雀は自分に異常が無いのを確かめながら言った。
「そう。よかった」
ノリは安心した。
水銀燈と翠星石は夕食を並べるのを手伝っていたが、金糸雀の元に駆け寄った。
二人は金糸雀の頬を叩いたり抓ったりして無事を確認した。
「いたた・・・・ちょ、い・・・・痛いって言ってるのかしら!!」
必死に金糸雀は抵抗して二人の手を振り払った。
「いきなり何するのかしら!?」
「何って、心配してあげてるのに、酷いわぁ。ねぇ、翠星石」
「全くですぅ。心外です!!」
水銀燈達は怒りながら夕食を並べる事を続け始めた。
食事の用意が出来、全員が席に着いた。
テーブルには花丸ハンバーグが並べられていた。
「・・・・・ねぇ、ちょっといい?これって何?」
水銀燈は花丸ハンバーグを指差した。
戦闘に関してはとても頭が切れるが水銀燈は普段の生活などでは全くの無知であった。
「これって、ハンバーグよね?これはね、牛の挽肉をこねて焼いたものよ」
ノリが少し困った様な顔をしながらも微笑んで説明した。
「ふぅ〜ん」
質問をした割には水銀燈はあまり興味がなさそうだった。
誰もが少し場の雰囲気が重くなった気がした。
「さ、さぁ。食べましょうか」
ノリが慌てて手を合わせた。
それに合わせて全員手を合わせる。
「「「「「「「「いただきます」」」」」」」」
皆は一斉に食事に手を付け始めた。
水銀燈は恐る恐るハンバーグを一口食べた。
その姿を見ていたジュンは何となく可笑しかった。
「水銀燈。お前って何だかかわいいな」
ジュンは子猫を見た時の様に思った事を唯口にした。
別に恋愛感情などの無い言葉なのでジュンは何とも思っていなかった。
しかし、水銀燈は顔を真っ赤にしていた。
「な、何言ってるのよ人間。当たり前じゃないのよぉ」
これを聞いて、黙っては居ない者がこの場には居た。
「どうしたですか!?風邪を引いたですか?」
翠星石は今の言葉を認めたくないようで、ジュンの額に自分の手を当てた。
この時にジュンは翠星石の思わぬ行動に顔を赤らめていた。
ジュンの発言と翠星石の言葉に真紅も本当はジュンに一言何か言ってやりたかった。
しかし、真紅には翠星石の様な行動をする自信が無かった。
「ふぅ・・・・・」
真紅はそんな自分に軽い自己嫌悪に陥っていた。
「・・・・・・・?」
真紅を見てジュンは首をかしげた。
そんなこんなで桜田家のの時間は過ぎていった。

「さぁ。今日はもう遅いから皆帰りましょうね」
ノリがまるで子供を相手にするようにして帰り支度をさせた。
翠星石と蒼星石は鞄に乗って玄関前で別れの挨拶をした。
「それじゃあ。お邪魔しました」
「人間。次にあんな事を言ったら許さないですよ!」
翠星石は水銀燈にジュンが言った言葉をまだ気にしていた。
「あんな事ってどんな事だよ?」
何のことか全く分かっていないジュンは翠星石に聞き返した。
「フンッ!また来るですよ」
そう言って翠星石と蒼星石は帰っていった。
次に金糸雀がnのフィールドを通ってみっちゃんの家へ帰っていった。
最後に水銀燈がジュンの部屋の窓から帰ることになった。
「今日はありがとねぇ。人間、それに真紅」
「別にいいよ。それよりお前、僕は桜田ジュンって言うんだから、人間って一括りにして呼ぶな!!」
ジュンは少し怒った様な声で水銀燈に言った。
「わかったわよぉ。ジュン、真紅それじゃぁねぇ」
水銀燈は窓から飛び立ち闇に消えていった。
「水銀燈・・・・・思わぬ強敵が居たわ」
真紅が小声で呟いた。

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深夜の病院死を待つばかりの少女が寝静まろうとしていた時窓を軽く叩く音がした。
その少女は光などほとんど無い窓の外に目を凝らして見た。
そこには水銀燈が早く窓を開けろと目で訴えていた。
少女は微笑み窓の鍵を開ける。
「お帰り。今日は遅かったね」
水銀燈は窓の冊子に腰をかけた。
少女の言葉に水銀燈は微笑んで見せた。
「何かいい事あったの?」
「少しね。後、あなたのお願い事叶えてあげられそうに無いのよねぇ」
何の事か良く分からないそんな表情を少女はしていた。
水銀燈は呆れた表情で少女に言う。
「ほらぁ。あなたが私に力を使って早くあなたを殺してって・・・・・分かってるのぉ?メグ」
少女・・・つまりメグは今思い出したというような顔をした。
「そういえば・・・・そんなこと言ったけ。で、どうしてそれが無理なの?」
「今日はちょっと真紅の家へ行ってね。その時にジュンって人間に色々言われて真紅達と和解したのよねぇ」
水銀燈は少し照れ臭そうにしながら言った。
「つまないの・・・・・でも、まぁいいかな。死ぬ事はいつでも出来るし。水銀燈、今度そのジュン君って子連れて来てくれる?」
メグはあの水銀燈を懐柔したジュンに興味を示した。
次の日水銀燈はまた桜田家を訪れた。
ジュンは図書館へ勉強をしに行き今は居ないという。
仕方が無いので水銀燈はジュンが帰るまで待たせてもらう事にした。
「水銀燈、ジュンに何の用があるの?」
「そうねぇ。皆にも一応話しておこうかしら」
水銀燈は姉妹達をリビングに集めた。
「少し、皆に聞いてもらいたいの。私のミーディアムのメグっていう子が居るのよ。その子は重い病気でね・・・・・。まぁ、その子がジュンに会いたいと言うのだけれど皆はどう思う?」
水銀燈は皆に意見を求めた。
「私は別にかまわないと思うわ」
「僕も」
「私もです」
三体は直ぐに返事をした。
しかし、何故か雛苺と金糸雀は返事をせぬまま黙っている。
「雛はその話良く分からないの」
「カナもかしら」
「お前等馬鹿すぎです。つまり、水銀燈のミーディアムがジュンに会いたいって言ってるだけです」
先程の水銀燈の説明とさほど変わらない説明を翠星石はした。
それでも、雛苺達は疑問という顔をしている。
「まぁ、いいです。全員一致でOKです」
「そういう事よ。水銀燈何も気にする事無いわ」
真紅は優しく微笑み水銀燈に言った。
それを聞いた水銀燈も少しだけ笑い言った。

「ま、もし駄目だと言われても力ずくで連れて行く気だったけどねぇ。それより、ジュンが戻ってくるまでの時間どうせ暇でしょ?面白い話し聞きたくない?」
水銀燈の笑みは何だか怪しく見え、真紅達は生唾を飲んで頷いた。
「じゃ、話し始めるわよぉ。星を見る女って話なんだけどね。
ある晴れた夜の事、自室に戻ろうと階段を上っていたとある青年が、向かいのアパートの窓際に立つ美しい少女の存在に気付いたのよ。
その少女は輝く瞳で空を見上げて立っていてね。
一体何を見ているのだろうと青年も同じ様に空を見上げてみると、そこには満天の星空。
空を覆い尽くす星々の煌きに青年は時間を忘れて見とれてしまったのよ。
その少女もこの星空に心を奪われたんだなって思うと何だか青年は少女に親しみを覚えて、にこりと微笑みかけたの。
でも、彼女は青年に気付いた様子も無く、ただ空を見上げ続けていたのよ。
仕方なく青年は部屋に帰っていったの。
次の日も少女は窓際で空見上げて立っていてね。
その青年は今時珍しいロマンチックな子だなって思って、段々とその少女が気になっていったのよね。
翌日青年は落ち込んでいたのよ。
その日雨が降っていて星が出ていなかったの。
だから少女が見れないと青年は肩を落として帰宅をしていたのよ。
ところが、少女はいつもと同じ場所で雨雲に覆われた空を恨めしげに眺めていて、そんな少女に胸騒ぎを覚え思い切って彼女の部屋を尋ねてみる事にしたの。
彼女の部屋をノックしても返事が無いから青年はドアノブを回してみたの。
すると、鍵はかかっていなくて、ドアを開けてみたの。その時彼は全てを悟ったわ。
彼女は星を見ていたのではなく窓際で首を吊って死んでいたの・・・・・・・。
どう、この話結構リアリティあるでしょ」
笑顔で真紅達に水銀燈は意見を求めてた。
すると、真紅は妙に怒ったような顔で水銀燈に言い放った。
「水銀燈・・・・次からこの手の話は私の居ない場所でして!それに誰からこんな話聞いたの!?」
「なぁに、真紅もしかして怖かったのぉ?この話はメグから聞いたの。言い忘れたけどメグ・・・・死にたがってたわねぇ」
嬉しそうにこの事を話す水銀燈に真紅達は何も言えなかった。

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