関西組ってこれから11話だったのか…じゃぁこの話はリアルタイムと言う事で(w
ローゼンメイデントロイメントの第10話後〜11話までの間奏話として読んでください。
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朝の光が射し込んでリビングに陽だまりを作っている。
「さぁ、朝食の準備をしなきゃ…」
のりは一人で朝食の準備に取り掛かる。
いつもより広いリビングは、帰らぬ思いを待ち続けるかのように静かに朝を迎えてる。
まぶたを閉じれば、聞こえてきそうな雛苺の幼い声。
しかしこの部屋ではもう、蒼星石と雛苺の姿を見る事は無い。
その静寂を聴いて初めて知る、気づかなかった家族としての絆。
雛苺が倒れた昨日の午後、彼女はのりにさよならも告げずに巴の家に帰っていった。
永遠に失ってしまった別れの言葉。のりにはあまりにも唐突で、あまりにも悲しい現実。
ささやかなのりの願いは容赦のない現実によって無情にも打ち壊された。
年長者として気丈に振舞ってはいるものの、平凡でも暖かい、
そんな家族の日常を夢見ていたのりにとって、その事実はとても寂しい事だった。
夢の様に楽しかった毎日、どうしてこんな事になったのだろう。それがのりには解からなかった。
昨夜、遅くまで帰ってこないジュン達の事を一人でずっと待っていたのり。
雛苺のちいさな落書きが残る部屋で、泡の様に浮かんでは消えてゆく忘れられない毎日の思い出。
無言で帰ってきたジュンたちからもたらされた雛苺の運命。
悲愴な決意を秘めた真紅達の顔を見たのりは、それが意味する事を何となく理解した。
でも、彼女にはそれを聞く勇気が無かった。
聞いてしまえば体を張ってでも止めなければならない位危険な事なのだろうが、それがのりには出来なかった。
そしてその夜は、そのまま誰とも言葉を交わさずに今日の朝を迎えた。
「あの子たちの為に、今日の朝ごはんは花丸ハンバーグにしましょう…」
今日、ジュン達は何か大切な事をやろうとしている、のりはそれを感じている。
ずっとここに居て欲しい、そう思っていないと言えば嘘になる。
それでも、真紅たちを笑って送り出してあげる事が、自分の役目なのだとのりは思っていた。
様々な胸の想いを振り切るようにキッチンで手を動かしながら、
冷蔵庫の中の卵に手を伸ばしたのりは、新しい落書きを見つけて目を止めた。
そこにあったのは雛苺が残した無邪気ないたずら。
クレヨンで卵の殻に描かれたジュンや真紅やのり達の顔、みんなの顔が仲良く一緒に並んでいる。
それは雛苺が描いた幸せな家族の肖像。
その卵の落書きがのりには、いつまでも一緒にいたかったという想いを込めた、雛苺の最期のメッセージに思えた。
雛苺には解かっていたのかも知れない。もうこの家には二度と帰れないという事が。
ひとつひとつ手にとりながら、のりの目から涙が自然にこぼれだした。
「…ごめんね…私、なんにも出来な…」
窓辺に置いた写真立の中では、自分の運命など知る由もない雛苺が、みんなと一緒に笑っている。
涙をこらえて朝ごはんを作りながら、のりは知らずに雛苺の作った歌を口ずさんでいた。
「はなまるさん はなまるさん たまごとおにくのハーモニー…」
その歌の無邪気さとは裏腹に、のりの目からは涙が溢れ出してとまらなかった。
やるせない心のより所を求めて、窓越しに遠く見上げた高い空からは
のりの気持ちなど素知らぬように、夏の光りがガラス越しに降り注ぎ、
リビングに陽だまりをつくりながら、帰らぬ人を静かに待ち続けていた。
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…やっぱりおいらにゃ、ネタバレ回避の構成ができませんでしたよ。
すまんこってす。