「……僕のせいなんだ」
ジュンは腕で涙を拭い取ると、震えのない声で言った。
「僕が、真紅を壊したんだ。 僕がもっとはやくに気づいていれば、真紅は壊れずにすんだんだ」
「それは違うですよ、ジュン」
「なにが違うって言うんだよっ!!」
ジュンの怒声が響き渡る。その勢いで翠星石に振り返り、正面に立つ。そんなジュンの行動に、翠星石はたどたどしく視線を逸らした。
「僕はアイツのミーディアムなんだ! なのに、なのに僕はアイツに何もしてやれなかったんだ!」
「わたしの――」
ゆっくりと翠星石が視線をあげてジュンを見た。オッドアイの双眸には、押し殺せずにいる感情で溢れ返っている。
「わたしのミーディアムも、ジュンですよ」
ジュンは言葉を詰まらせた。
左手に視線を走らせる。
真紅の存在が大きすぎてすっかり忘れてしまっていた。そこには翠星石と契約を交わした時に大きくなった指輪が鈍く光っていた。
「ジュン、私じゃダメですか……?」
とても真剣で悲しげな表情。
「私は、大事な人を失った悲しみを知ってます……自分の半身を奪われた様に、それはとても辛く哀しいことです」
以前ローザミスティカを失った、正しくは奪われてしまった彼女の片割れのことが、ジュンの脳裏に浮かぶ。
立場は違えども、翠星石と自分は同じなのだ。互いに大切のものを失ってしまったのだ。