トゥルルルル……
巴 「はい、柏葉ですが」
謎の男「巻きますか? 巻きませんか?」
巴 「あの、どちら様ですか?」
意味不明な言葉に気味の悪いものを感じる。
謎の男「巻きますか? 巻きませんか?」
ガチャン!
巴 「なにこの悪戯電話……」
トゥルルルル……トゥルルルル……
また今の電話だろうか? 出ないわけにはいかないし、恐る恐る受話器を上げる。
巴 「柏葉ですが」
謎の男「巻きますか? 巻きませんか?」
巴 「……い、いったいどちら様なんですか? 悪戯はやめてください!」
ガチャン!
トゥルルルル……トゥルルルル……トゥルルルル……トゥルルルル……
何度も繰り返される電話。かれこれ3日以上鳴り響いている。
最近テレビでよく問題になっている、ストーカーというやつだろう。
一体だれが……自分が知る男子の顔を代わる代わる思い浮かべる。
巴 「もしかして、桜田君……」
トゥルルルル……
確かめてやる。
巴 「桜田君……桜田君なんでしょ! いい加減にやめて!」
謎の男「巻きますか? 巻きませんか?」
巴 「一体何が目当てなの? 『巻きます』とか……」
ブツッ
携帯を切り、一人の男がグッっとガッツポーズを決める。
謎の男「まったく強情な子だったな。しかし私の勝ちのようだったな」
フッ……と笑みを浮かべながら、リストにチェックをつける。
謎の男「さて、仕上げだ」
車のトランクに用意していた鞄を取り出す。彼女の部屋の窓めがけ、円盤投げの要領で高速回転をしながら投げつける。
謎の男「とべっ!!! 雛苺ぉぉぉぉおおぉぉぉ!!!」
闇の中に男の叫び声が響く。次いでガシャーンと窓ガラスの割れる音が響く。
謎の男「散々私をてこずらせたお嬢さんの顔を見たい気もあるが、見つかったら事だ。ずらかるか」
次は桜田の子か。久しくあっていない男の顔を思い出す。あいつの子供なら楽勝だろう。
謎の男「なになに引篭り? あの男めなんて面倒なやつを押し付けてくるんだ。
これではまともに電話にでないじゃ……む? オカルトに興味をもっているか。
ならば私が手がける大預言社から手紙を送らせれば……」
ニヤリと唇の端を上げる。絶対に『巻きます』と答えさせてやる。それが私の生きがいである。
謎の男「桜田ジュン。貴様に逃げ道はない……」
謎の男「くそ、この文面でもダメかっ」
小声でうなりながら、少年の動向を監視する。
きちんと少年が巻きますに丸をしたことを確認しなければ、ルール上問題になってしまう。
私が徹夜で作った手紙を「ふん」と鼻をならしながら、床へと投げ捨てる。
『霊界パワーで必ず幸せになれる! イジメも克服! あなたも幸せのネジを巻こう!』
謎の男「この文面のなにがいけなかったんだ……」
少年が投げ捨てた手紙を拾いながら、悔しさに唇を噛み締める。
私の読みが外れるなど何十年ぶりだろう。この少年……もしかして。
謎の男「ふっ、ひさびさの強敵だな。だが、最後に笑うのは私だ」
ベッドの下から、やる気のなさそうな少年の顔を見上げ宣言する。
必ずこの真紅は貴様に渡してやる。
手元の鞄をさすりながら、まだかまだかと出番を待っている娘を落ち着ける。
謎の男「よし、次は呪いのご案内だ。少年勝てるかな。『いじめたあいつを暗黒パワーで仕返ししよう……』」
ジュン「なんか最近変なおっさんの幻聴が聞こえるな。本物の呪いグッズ引き当てちゃったのかな……無言電話もかかってくるみたいだし」
桜田少年との生死を彷徨う激闘から数日後……。私の仕事も終わったと思っていた。
しかし……
「全く……あんなひどい人間に、可憐でキュートな私を渡すなんて何考えてやがりますか!」
足元で必死に腕を振り回しながら、抗議する翠星石。
「ふむ……」
「ふむ……じゃありませんですわ。もう少し慎重に選びやがれですぅ。だから人間なんて信用できないですぅ」
私が選別した人間と折りが合わなかったらしい。うっすらと頬をぬらしている。
「では、どうする? アリスゲームを降りるのか?」
「そ、それは……」
アリスゲームを降りることは、彼女達にとって死を意味する。
それを悟ったのだろう。先程まで怒鳴りちらしていた勢いはどこかへ消え、うつむいてしまった。
「ま、他に手がないでもない」
「……えっ?」
あっけにとられた顔で、目を見開き私を見上げる。
「真紅の元にいってみるか?」
きっと私を苦しめたあの少年ならば、この娘に人間というものをもう一度信じさせることができのではないか。
「さあ、急げ。出かける準備をするぞ」
「飛べっ!!! 翠星石ぃいぃぃいぃぃっ!!!」
ガシャーンと心地よい硝子の音が木霊する。
「あとは任せたぞ、桜田少年……君ならばなんとかしてくれるはず」
ここでCMです。
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