雛苺が動かなくなった
只の人形になってしまった
この前まであんなに元気だったのに
今は只の人形
笑うことも話す事もない只の人形
冷たく、固くなっていた
暖かく、柔らかい雛苺は帰ってこない
もう声も聞けない
初めは鞄から出して話しかけたりもしていた
一生懸命話しかけても返事がない虚しさ
悲しみを増大させる
だから今はあまりしていない
そしていつしか雛苺を鞄から出さなくなった
段々と雛苺がいない生活に慣れてくる自分
雛苺の存在が私の中から薄れていく
でも
なにか心が軽い
心が半分ないみたいに軽い
授業で上の空だった
部活も上の空だった
雛苺がいないからだ
慣れたと思ってた
でも本当は違った
無理に忘れようとしてただけ
本当は寂しくてたまらないんだ
家に来たばかりの雛苺の気持ちが分かった気がした
久しぶりに雛苺を鞄から出してあげた
少し心が満たされた
それと一緒に心が痛んだ
雛苺、長い間だしてあげなくてごめんなさい
私はバカだった
いつ雛苺がまた起きるかわからないのに
鞄に閉じこめたままにしておくなんて
ごめんなさい、雛苺私はあなたのマスター失格ね
寂しくさせてごめんなさい
だけどこれからはあなたを一人にしない
寂しい想いをさせない
雛苺がいつ起きても良いように苺大福も買っておく
寂しくないように毎日話しかけてあげる
桜田君の家にも連れてってあげる
だからいつか必ず
またあの元気な声で
私の名前を呼んでね雛…