「いやです!離すですぅ!」
男は強引に翠星石の腕を引っ張り、嫌がる翠星石を引きずって歩いている。
「うるせえな。お前が俺のピッツァを食ったのが原因だ。それ相応の躾をしてやらないとな。覚悟しとけ」
翠星石は喚いていたが男はひたすら無視し続けている。
そうしている内に男は頑丈そうな鉄のドアの前で止まった。
「ここだ。入れ」
ドアを開け、電気をつけると翠星石を勢い良く蹴り飛ばした。
顔面からコンクリートの硬い床に叩きつけられた翠星石は少し痛む顔を抑えながら男に罵声を浴びせた。
「いった!いきなり何をするんですか!」
途端に頬に激痛が走る。
男は拳をハンカチで拭うとそれを翠星石に向かって投げ捨てた。
「俺に素手で殴らせるんじゃない。薄汚いおもちゃめ」
「翠星石はおもちゃじゃないですぅ!人形ですぅ!」
再び同じ箇所に拳が飛んでくる。今度は先程よりも力が篭っているのか、翠星石の体は爽快に壁に叩きつけられた。
「何度も言わせるんじゃない。俺に殴らせるな。食い意地張った豚みたいなおもちゃに触ると手が腐る」
翠星石は怯えた表情で男の顔を恐る恐る見いやった。
「翠星石をどうしようというのですか?」
先程の威勢の良さとは打って変わって、相手が脅威だと分かると恐怖の余り怯え、大口を叩けなくなる。
翠星石とはその程度のおもちゃだ。
「どうしちまったんだ?さっきみたいに吠えたらどうだ?」
「……」
俯いたまま返事は返ってこない。
「黙秘権なんてないんだぜ!質問には答えな!」
男は翠星石の両手を掴んで持ち上げると、今度は腹部に膝蹴りを食らわせた。
その痛みから彼女は目を大きくかっと開き、声を出そうにも出せず、口を大きく開けて喉の奥から裏返ったような声を出した。
「おいおい、また触っちまったじゃねえか。そこにある布切れを取れ」
痛がる暇もなく、翠星石はハンカチを拾い、男に手渡した。
すると今度は顔面に靴底が物凄いスピードで押しかかってきた。
「だーから、俺の手に触れるんじゃねえって言ってるだろ。いい加減にしてくれよ豚が」
「す、翠星石は豚じゃないですぅ」
踏みつけられながら、必死に反論する翠星石。
どうやらまだこの状況が読めていないらしい。
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「この期に及んでまだ俺様に楯突くとは相当な馬鹿か、カス野郎のどっちかだな」
男はM1911A1をホルダーから引き抜き翠星石に突きつけた。
「そ、そんなおもちゃなんて全然怖くないですぅ!」
「おもちゃかどうか試してみるか?」
「へ?」
トリガーを引くと、大きな銃声が響き渡った。
翠星石は瞑っていた目を開き、右手を見ると、自分の手首から先が無くなっていることに気づいた。
「ひ!ひぃぃぃぃ!翠星石の、翠星石の手がないですぅ!」
「もう一発ぶち込んでやろうか?45口径だから威力は絶大だぜ」
オートマチックピストルのトリガーに人差し指を掛ける。
この指にさらなる力を加えれば、銃の構造上の仕組みによって鉄の弾が飛び出す。とても貫通力の高い弾である。
「もうやめてですぅ!撃たないで!」
怯える翠星石を見て男は乾いた笑い声を上げた。
「あっはっは、そんな表情見せられたら余計に苛めたくなっちまうぜ翠星石ちゃ〜ん」
男はトリガーを引いた。1度だけではなく、何度も、弾が切れるまでトリガーを引いて翠星石を蜂の巣にした。
「こいつ弾が七発しか入らないのが欠点なんだよなぁ。どうせならマシンガン持ってくれば良かったぜ」
翠星石の腕や体は銃で撃ち抜かれ球体関節などは砕け散っていた。
「こんな酷いことして・・・許されると思っているですか」
髪の毛で表情は見えないが、衣装には水滴がぽつぽつと零れている。
「カスが。口だけはガキ並みに達者な奴だな」
男は銃のバレルの部分を持ち、グリップで翠星石の顔面を横から叩き殴った。
「あう!・・・もうたくさんですぅ!」
「そうかい。なら消えちまえ」
男は巨大な斧を振り上げた。このまま真っ直ぐ振り下ろせば脳天に直撃である。
「短い人生にさようならって言っときな!」
「あぁああああぁあ!!!・・・え?生きてる?」
振り下ろされた斧は頭ではなく、腹部に突き刺さっていた。
「なんてな。簡単に殺すわけないだろ」
「あ・・・う、動けないですぅ。お腹が痛いですぅ」
「いてえに決まってるだろカス。髪の毛洗うのに暴れてもらっちゃ困るからな」
そう言って男が持ち出したのは黒いガラス細工のボトルであった。
ラベルには危険なものという雰囲気を醸し出すかのように髑髏のマークがあった。
「何をするんですぅ?」
「散髪を兼ねてのシャンプーさ」
そしてボトルの蓋を開け、翠星石の頭に振り掛けた。
ボトルが空になるまで振り掛けると、それを翠星石の頭に叩きつけた。
「痛いですぅ!頭が・・・え?これは?」
頭を押さえた手を見ると、そこには何本もの髪の毛がついていた。
「え?え?ええぇぇぇぇ!?」
「めんどくせえな。全部抜いちまえ」
「あああぁぁ!やめるですぅ!」
男は翠星石の髪を鷲づかみにし引っ張った。
すると土の中に埋まった人参を抜くかのように、彼女の髪の毛は綺麗に抜けてしまった。
「アッハッハッハッハ!スキンヘッドとは傑作だぜ!ピンでも刺してヘル○イザーにでもするか!」
「酷いですぅ。翠星石の、翠星石の髪がぁ」
笑いこける男とは対照的に、泣きじゃくる翠星石。
だが男は翠星石に悲しむ暇すら与えない。
すぐさま翠星石の顔面に釘バットが飛んでくる。
「っぶぉ!な、なにを!」
「おいハゲ。その面で泣くと気持ち悪いんだ。さっさと潰させろ」
女ったらしのような目をしたハゲた人形が泣く姿は笑えるというより不気味で気持ち悪い。
滑稽というより、醜い。
「とりあえずその胴体真っ二つにするか」
男は翠星石を摘み上げ、部屋を出た。
数分経って着いたのは得体の知れない工場のようなところだった。
翠星石は恐る恐る辺りを見渡す。これから何をされるかと思うと恐怖で身震いする。
「余所見してるんじゃねえ。お前を切断するのはこれだ」
鉄板の台の上に仰向けに乗せられたかと思うと、ロープで手足を縛りつける。
「今度は一体なんです!?」
「これだよ、これ」
翠星石の目の前で大きな音を立てて回転するノコギリ。
「これで腹を切り離してやるんだよ」
「嫌ですぅ!そ、そんなもの近づけたら・・・」
「そう、バリバリと肉を削って内臓が飛び散る。ま、それは人間の場合で人形はどうかのか知らんがね。それじゃ」
男はノコギリを両手で持つと、徐々に翠星石の腹部に近づける。
「待つですぅ!やめてぇ!誰か助けてくださいですぅ!ぁあああああぁあ!!!」
激しい音を立ててノコギリは翠星石の体を深く切り刻んでいく。
そして鉄板に擦れる位置まで到達すると、電源を切った。
「うぅ、翠星石の足が・・・ひどい」
「きたねえ足晒すんじゃねえよ馬鹿が」
そう言って残った切断された下半身をハンマーで粉々にした。
「お前はこれから一生俺に躾をされるだけの存在だ。簡単に殺しはしない。生き地獄ってやつを味わせてやる」
男は翠星石の残った上半身だけを抱えて暗い部屋へ消えていった。
The End
今日も軽快にPhil CollinsのEasy Loverでノリながら書かせてもらいましたとさ