エロ無し馬鹿ネタですが、よろしかったら投下させていただいてイイでしょうか。 

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「おやつの真価」 (エロ無し馬鹿ネタSSです、失礼) 

1. 
 桜田ジュンの知らない内に、激闘を繰り広げている真紅と水銀燈。メイメイとホーリエ、二体の 
人工精霊も、それぞれの光の軌跡を描きながら、花火のように激しくぶつかりあい、弾けては交差している。 

 ジュンに無許可のまま、指輪を介して力を吸収している真紅は、(この頃、ジュンは寝起きにげっそり 
しているのはそのせいである)ついに、水銀燈を追いつめる。 
 黒い羽の奔流をはねのけ、刃物のような薔薇の花びらが、水銀燈を襲い、必死にかわした水銀燈の 
先に、素早く位置を占めた真紅が立ちふさがる。 
「水銀燈・・・ここまでね・・・」 
「しっ・・・しぃんくゥゥゥ!まだ、まだよぉッ!」 

チリリリリリ・・・・ 

「あ・・・」 
「?」 
 周囲に立ちこめる殺気とはまるでそぐわない、可愛らしいベルの音。懐から小さな懐中時計を取り出して、時間を確認する真紅。 
「・・・おやつの時間だわ。」 
「は?」 
 思わず、ちょっと間の抜けた声で聞き返す水銀燈。 
「なんども言わせないで。おやつの時間なのだわ。・・・・決着は、また今度ね。」 
 懐に懐中時計をしまい込んで、後はとどめを刺すだけになった宿敵に、あっさり背を向ける真紅。 

2. 
「・・・・」 
 想像していなかった反応に、硬直したまま、無言で真紅を10歩ほど見送ってしまって、 
はっと我に返る水銀燈。 
「ちょ・・・ちょっと、待ちなさいよぉ、真紅ぅ!!」 
「なに?後にして頂戴。せっかくのおやつの時間に遅れてしまうのだわ。」 
 真紅に掴みかからんばかりに迫る水銀燈。 
「何よぉ!おやつって!!」 
「?」 
 無言で首を傾げる真紅。 
「もう一歩で!あと少しで!私を倒せるでしょお!?ローザミスティカだって、奪えるのよぉ?」 
「・・・・でも、おやつの時間だわ。」 
「アリスゲームと、おやつと、どっちが大事なのぉ!!」 
 思わず胸ぐらを掴む水銀燈を不思議そうに見やって、少しだけ考えて、きっぱりと言う真紅。 
「水銀燈。あなたは、おやつの時間の真価を、しらないのだわ。」 
「・・・・なぁに、それ・・・?」 
 真紅は、胸ぐらをつかんでいる水銀燈の手を無造作に払いのけると、もう一度懐中時計を開いて、 
時間を確認して、少しいらだたしげに水銀燈を見下ろした。 
「・・・もう、おやつの時間がせまっているというのに・・・ 
 仕方ないわ。いいこと、水銀燈。 
 貴女に、教えてあげる。本当の、おやつの時間の意味を。」 
 言葉の中に潜む迫力に、思わず相手の言葉に耳を傾けてしまう水銀燈。 

3. 
「・・・お父様に・・・完璧な乙女、アリスだと、認めていただく・・・ 
 そう、姉妹達を全て破って、ただ一人の、至高の乙女とみとめていただく。 
 それに匹敵し、あるいは、それを凌駕する、唯一のもの。 
 それが、おやつの時間なのだわ。」 
 自分の説に絶対の自信を込めて、胸を張る真紅。 
「・・・・」 
「そう。 
 ジュンも・・・この頃は、ようやく、私の下僕としての自覚が出てきたのだわ。」 
「・・・・」 
「おやつの時間になると、私を、呼んでくれるの。・・・まあ、口調はまだまだ野卑だし、 
声量を抑えるのも苦手なようだけど・・・ 
 その声の中には、主人である私への、無限の敬意と、永遠の愛情が、どうしても 
隠せていないのだわ。」 
「・・・・」 
 止めることも忘れて唖然としている水銀燈に、つい、と真紅は形の良い鼻をそらす。 
「そう、そうして、私を、その手で・・・恭しく抱き上げて、席へ運んでくれるのだわ。 
 ああ、でも、いくら私への愛情が抑えられないからって、抱き上げたときに、なかなか 
離してくれなかったり、頬や髪をやたらと愛撫しようとするのは、まだ子供なのだけれど。」 
 実際は、ジュンが抱き上げるまで、じとっとした視線で要求しつづけ、抱き上げたら 
抱き上げたで、淑女としてはしたなくない範囲で、しっかりとしがみついてなかなか離さないのも 
真紅の方なのだが。 

(おい、席についたぞ。真紅。) 
(・・・座らせて、髪を整えて頂戴。) 
(・・・なんで、毎回・・・) 

4. 
(そう、もっと優しく・・・いいわ・・・) 
(へ、変な声出すなよ!) 
(貴方の指は、まるで、美しい戦慄をつむぐよう・・・) 
(も、もういいだろ!) 

 というやりとりがあるのだが、水銀燈は現場を見ていない。そこで、真紅は、唇の端をつりあげて・・・ 
どちらかというと、これは水銀燈の笑い方だが・・・水銀燈に、艶やかな嘲笑を向けた。 

「水銀燈・・・貴女、殿方に、抱きしめてもらったことって、ある?」 

 唖然としていた水銀燈に、質問の内容がしみこむまでの一瞬の後、真っ赤になって叫ぶ水銀燈。 
「・・・・なっ、何を!!」 
「そう、しかも・・・自分を心から慕ってくれている殿方から、かくしきれない愛情をこめて、 
優しく抱きしめて、愛撫してもらったことは?」 
「なっ、なっ、何・・・・!!」 
「無いのね。その様子だと、ただの一度も、無いみたいだわ。」 
 庭師の鋏のような鋭さで、斬って捨てる真紅。 
「可愛そうな娘・・・ 
 あの心地よさを、知らないのね。 
 自分の欲望を必死で抑えて、自分を呼ぶ殿方の声。私がそばに寄り添うだけで、高鳴る鼓動を 
 抑えられない殿方の、細工物を扱うような、頬を撫でる手の優しさを。」 
 思いも寄らない攻撃に、沈黙してしまう水銀燈。彼女は、一切人間とは契約せず、狂気に近い使命感と、 
「お父様」への想いだけで、長い長い年月を戦い続けてきた。「真紅の言うようなこと」の経験があるはず 
がないのだが・・・そう言う真紅も、当然、事実はこうである。 

5. 
(ジュン・・・たまには、肌をふいて頂戴。淑女は、肌の手入れも欠かさないものだわ。) 
(なっ、なんだよ!服着ろよ!) 
(のりが、服を洗濯してくれたのだわ。お風呂にもはいっていらっしゃいって・・・) 
(じゃあ風呂いけよ!) 
(雛苺達が入っているのだわ。主人の身だしなみの手伝いも、従者の大切なつとめよ。) 
(自分でやればいいだろ!) 
(・・・私の球体関節は・・・背中に手が届くようには、できていないの・・・) 
(わかった、わかったよ!) 
(そう、良い子ね、ジュン・・・) 
(背中だけだぞ・・・) 
(そう、お湯を良くしぼって・・・優しくね。乙女の肌は、とても繊細なのだから・・・) 
(・・・こ、こうで、いいのか?) 
(ああ・・・そう・・・とても、とても良いわ・・・ジュン、もっと、そう・・・ん・・・・) 
(だから、変な声を出すなって!!) 
 露骨な優越感を示しながら、じりじりと後退する水銀燈に詰め寄っていく真紅。 
「そ、そんなこと・・・アリスになることに、比べたらぁ・・・・」 
「あら。貴女は、その素晴らしさも知らないのに、比べられるの?」 
 舞台役者のように、芝居がかった動作で、くるりとスカートを翻して回ってみせる真紅。 
「そう・・・私達は、ドールズ・・・人間とは、結ばれるはずはないのに・・・」 
 胸の前で手を組み合わせて、眼を閉じる。 
「それでも・・・それでも、殿方から、愛情を受けてしまうのは・・・ 
 あまりに美しく、あまりに魅力的に造って頂いた、私の罪なのね・・・」 
 こちらも衝突をやめた人工精霊が、照明よろしく、真紅の周囲を静かに照らす。 
なぜかメイメイも一緒に手伝っていたりするが。 
「そう・・・そんな殿方に愛されるのは・・・きっと、アリスに選ばれるのぐらい、 
幸せで、価値があるのではないかしら・・・」 

6. 
 そこで、刃物のように細めた横目で、水銀燈をちろりと見やる。 
「水銀燈・・・貴女、殿方に愛を囁いてもらったことは?」 
「・・・・」 
「その熱い思いを、告白していただいたこと・・・もしかして、無いの?」 
「わっ、私はぁ!ただ、アリスになる、そのことだけを目指してぇ・・・!!」 
「あらあら・・・殿方の愛も引き寄せられないのに、至高の乙女に、なれるのかしら?」 
「しっ、しっ、真紅ゥウウウ!」 
 くるりともう一度回転する真紅の横顔を、二種類の人工精霊の光が、華やかに彩る。 
「そう・・・ジュンは、その愛情と欲望を・・・私を汚したくない一心で、必死に 
 抑えているの。いじらしい少年だわ。」 
 すさまじい殺気をこめてにらみつけてくる水銀燈の背後に、一瞬で回り込んだ真紅。 
両手で、水銀燈の肩を静かに押さえると、背中から、その耳に唇が触れるほど近づいて、 
囁きかける。 
「水銀燈・・・」 
「ひゃっ!?」 
「ジュンは、その欲望に身を焼きながら、必死に我慢しているの。 
 本当は、すぐにでも、私の、このドレスをめくりあげ、引き裂いて、この肌を 
 思う存分に、汚し尽くしたいと思っているのに・・・」 
「な、何を・・・」 
 何故か、耳まで真っ赤になってうつむく水銀燈の耳に、さらに吐息のようなささやき 
を送り込む真紅。 
「その、神工のような繊細な指で、私の身体の、隅々まで、巧みに愛撫して・・・ 
私のはしたない熱いあえぎを、その柔らかい唇で吸い取って・・・ 
 私の身体の全ての部分を、その指と唇で、快感で洗い流すの・・・ 
 そして・・・まだ幼い男性で、私の、私の純潔を・・・・」 
「きゃーっ!きゃーっ!!!」 

7. 
何故か思わず耳をふさいで逃げ出そうとする水銀燈を背後からがっちりとフルネルソンに 
極めてささやき続ける真紅。 
「でも・・・私を思いやり、慕う心は、その欲望より大きいの・・・だから、彼は、 
その指で・・・毎晩、自分を慰めて・・・でも、私が笑顔を向けると、その自制心も、時折揺らいで・・・」 
「きゃーっ!きゃーっ!!!」 
 これも、例に漏れず、実際には、テレビを見るときには、必ずジュンに抱っこして 
もらって、さりげなく、自分の胸や腰にジュンの手を導いていたりする。 
 そして、気付いて、あわててずらそうとするジュンを、時折、不思議そうに見上げてみたり、 
ちょうど良い位置にあるジュンのズボンの股間に、さりげなく自分のお尻を押しつけ、こすり、 
柔らかく体重をかけたりするのであった。 
 そのうえ、要所要所で、ジュンの手や腕に、頬をそっとすり寄せて、甘やかにため息を 
漏らしてみたりする。 
 少女の外見でも、実際は長い長い年月を体験した(歴戦の戦士)の技であった。 
 さらに、深夜にそうっと起き出しては、毎夜毎夜、熟睡中のジュンの耳元で、 
公共の放送では消して流せないような過激な単語が満載の、悩ましい物語を 
(当然、配役は真紅とジュンである)ささやき続けているのである。 
 思春期にさしかかり始めて、人生で一番性欲の強い時期の少年には、少し酷すぎる 
責めに、ジュンは、認めたくない(暴発)の後は、自己嫌悪に陥りながらの「事故処理」 
を行っているということなのだが・・・ 
 そこで、ふいに、ぱっと手を離す真紅。勢い余って盛大に地面に顔面をたたき付ける水銀燈。 
「いっ・・・いったぁい・・・」 
 ようやく身体を起こし、半泣きで鼻を押さえる水銀燈を見下ろして、穏やかに勝ち誇る真紅。 
「そう。幸せな、今、とても幸せな私は・・・ 
 もう、アリスだけを追い続けなくても、いいような気がするのだわ。」 

8. 
「な、何言ってるのぉぉぉ!!!」 
 あっさり自分の存在意義を否定する真紅に、絶叫する水銀燈。 
「だから、その、私を愛してやまない下僕のために、彼が整えてくれるおやつの時間は、 
 貴女を壊してあげることなんかより、ずっとずっと大切なの。」 
 そして、水銀燈を見下ろして、冷たく勝ち誇る。 
「ジュンは・・・まだまだ未熟な少年だけれど。でも、その愛情の深さには、こたえてあげなくてはね。 
 今日のおやつは、ジュンが焼いてくれたマドレーヌと、ジュンが入れてくれたアールグレイ。 
 私のために、私だけのために、用意してくれるのだもの。」 
 あっさりと他の三人の姉妹を無視する真紅。しかも、そうしないと、毎晩、呪いの人形よろしく、 
ベッドに入ったジュンを無表情ににらみ続けて嫌がらせをするのであるが。 
「ジュンは、私を膝の上に抱き上げて、その手で、私に取り分けてくれるのだわ。 
 私の肌への渇望を、必死に抑えながら・・・」 
 地面に両手をついた姿勢の水銀燈のうえにかがみ込んで、追い打ちをかける真紅。 
「その後は・・・優しい手で、私のこの髪を、丁寧に、丁寧に梳ってくれるの。 
 私があまりの心地よさに、まどろんでいると・・・自分の寝台に、そっと寝かせてくれたわ・・・」 
 耳をふさぐことすら許さずに、続けられる声。 
「そして・・・私の寝顔を見つめて・・・その想いに耐えきれなくなって・・・それでも、必死に押さえ込んで、 
 私の唇に、ほんの少しだけキスをして・・・私を守るように、寄り添って、一緒にまどろむの・・・ 
 ふふふ、寝顔は、本当に、無邪気で、綺麗なのだわ。」 
 これも、昼寝をしているジュンの足下から匍匐前進で進入して、その寝顔を淑女らしからぬ 
執拗さで鑑賞し、我慢出来ずにキスをかましたところで相手が起きかけたので、ネジが切れたフリをして 
ごまかしたのであるが。 

9. 
そして、ようやく身体を起こすと、とどめの一言を投げつける。 
「じゃあ、さようなら、水銀燈。 
 誰にも愛されたことのない、可哀想な、私の姉妹・・・」 
 淑女らしいしとやかな歩みで静かに立ち去りかけ、ふと懐中時計を取り出して、目を剥く真紅。 
いまだに照明役に徹していたホーリエを蹴り飛ばすと、力強いストライドでかけ去ってしまった。 

 地面に両手を付いて、ぼろぼろと大粒の涙を流していたせいで、そのシーンは見ずに済んだ水銀燈。 
「ああ・・・おとう・・・さま・・・ 
 なんで・・・・ 
 わたしは・・・だれもよりも・・・・おとうさま・・を・・・・」 
 透明な涙が、宝石のように流れ落ち、地面に吸い込まれていく。 
 慰めるように、ちかちかと瞬いて周囲を巡るメイメイが、不意に、思い切り握りつぶされた。 
「しっ・・・・ 
 しぃんくゥウウウウウウ!!!」 
 すさまじいまでの嫉妬に、その瞳が、激しく、冷たい光を放っていた。 

「・・・・なんだろ?」 
 不意に襲われた悪寒に、背筋を振るわせる桜田ジュン。 
「・・・ちょっと、あまり動かないで。せっかくの紅茶がこぼれるわ。」 
「だから、なんで、わざわざ膝の上で・・・・」 
「あらあらぁ、真紅ちゃんったら、甘えん坊さんなのねぇ。」 
「ああーん、ヒナも、ヒナもぉ!!」 
「ふん、チビ人間に抱き上げられて、何が楽しいのか、さっぱりわからんですぅ。 
 理解不能ですぅ!」 

10. 
「もしかして、君もしてほしいの、翠星石?」 
「はーい、ヒナちゃんは、私が抱っこしてあげますからねぇー。」 
「わーい、のりに抱っこぉ!」 
 一家揃って午後のおやつを楽しんでいる、桜田家一同。 

 ただ、次の日、何故か全裸でミイラ化寸前まで衰弱したジュンが発見されて、 
開闢以来のパニックに陥るのであるが、それは別のお話。 

「・・・・はぁ・・・・」 
 まだ熱さの残った身体の余熱を逃がすように、そうっとため息を漏らす水銀燈。 
「・・・・たしかに、アリスゲームより・・・ 
 大切なものなのかもしれないわねぇ・・・ 
 ねぇ、メイメイ?」 
 乱れた服を丁寧に直しながら、ぽぅっとした表情で、つぶやくのだった。 
「また、あいにいきましょう・・・・」 

おやつの真価 完 

お目汚し失礼しました。 

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