「―――翠星石のオナニー写真を撮るかしらー!」 
 薔薇乙女1の頭脳派を自称する第2ドール金糸雀は、桜田家宅の庭でそう叫んだ。 
その右手には、翠星石の写真をこっそりしっかり撮る為のカメラが握られている。 
金糸雀は他のドール達の盗撮を過去に何回も行い、その写真をみっちゃんに提供していた。 
しかし盗撮を繰り返す内に、似たような写真ばかりを撮っている事をカナは悟る。 
 同じような写真ばかりではダメだ、もっと今までに撮った事のないような写真を撮り 
みっちゃんを仰天させてやりたかった。今までに無かった写真は何だ、とカナは思考しながら桜田家へ向かい 
桜田家の庭へ到達した瞬間にカナは閃いた。そうだ、オナニーを撮ろう、と。 
 そしてカナは人目を全く気にせず叫んで意気込んだのだ。 
「……そうと決まればまずは隠れてチャンスを―――」 
「―――あ! 金糸雀なのー!」 
 身を隠そうとしたその時、居間の窓を開けた雛苺の無邪気な声が響いた。 

 遊びに来たと勘違いされたカナは雛苺に袖を引っ張られ、桜田家の居間におじゃまする事になった。 
雛苺が言うには、蒼星石はまだ来ておらず、翠星石と真紅はジュンの部屋に居るという。 
よってたまたま居間に1人で居た雛苺が、庭に居るカナを発見したという。 
「何して遊ぶかしらー?」 
 盗撮をしにきました、等と到底言えるはずもなく、遊びに来たという事にしておいた。 
「じゃあ、くんくんのビデオみるのー!」と、雛苺は元気に言うと 
テーブルの上にあるDVDを取った。 
「これは……ビデオじゃないかしらー?」 
「しらないの〜」 
 雛苺はそう言うと、小走りでDVDデッキにDVDを入れる。 
普段の雛苺なら、これはビデオだと言い返すのであろうが、今はくんくんのDVD1巻を 
DVDデッキに入れる事を最優先していた為いつものうるさい言い争いにはならなかった。 
 そしてくんくんのOPが始まった途端、廊下で何かが転げ落ちるような音が鳴り 
その直後居間のドアを蹴破って真紅が息を切らせながらやって来た。 
「あなた達! くんくんを見る時は私を呼びなさいと言ったでしょう!」 
 完全に平静を失った真紅は、裏返った声でそう叫ぶと、ソファーに飛び乗った。 
そして真紅に遅れてジュンと翠星石も居間にやって来る。 
(翠星石!) 
 薔薇乙女1の頭脳派(自称)、第2ドール金糸雀の眼光は 
くんくんのOPを見ていつものように発狂し始めた真紅を見て、ため息を着いている翠星石を捉えた。 
 とはいえ、翠星石が自慰行為をしない事には始まらない。今のカナにできる最善の行動は機を待つ事だ。 
カナは無邪気にはしゃぐ雛苺の隣に腰を掛け、テレビを見た。 

「――ねえしんく、おなにーって何なのー?」 
 唐突に雛苺が真紅の袖を引っ張り、そう尋ねた。 
それを聞いた金糸雀とジュンは目を丸くさせて雛苺を見たが、翠星石はこれといった反応を見せなかった。 
真紅は真紅で、くんくんが映っているテレビ画面を見ているだけで、まるで聞いちゃいねぇ。 
「ど、どこでそんな言葉覚えたんだ……?」 
 無垢な雛苺の口から、さらりと出た発言にジュンは恐る恐る尋ねた。 
「さっき庭でかなりあが叫んでたのー!」 
 カナはあの時の雄叫びを、雛苺にこっそりしっかり聞かれていた事を今更ながらに悟った。 
 そして雛苺の言葉を聞き、ジュンは驚きと軽蔑に満ちた目で 
お庭の中心でオナニーと叫んだ薔薇乙女1の頭脳派を自称する金糸雀を見た。 
ジュンの嫌な視線を感じるが、カナはそれを無視するよう心掛けた。 
「……?」オナニー、という単語の意味を知らない翠星石は首を傾げる。 
 真紅に聞いても反応すら得られずに頬を膨らませてる雛苺は、次に質問相手としてジュンを指名した。 
「ジュンー、おな―――」 
「―――ぼ、僕トイレ行って来る!」 
 ジュンは雛苺の質問から逃げるようにそう言うと、小走りで居間を出てしまった。 
首を傾げる雛苺は、金糸雀に尋ねようと金糸雀の方を向いた。それを見たカナは慌てて 
「カ、カナより物知りの翠星石に聞いてみるといいかしらー?」 
と、質問の矛先を翠星石に向けるよう促した。そして促されるがままに 
雛苺の探究心に溢れる視線は翠星石に向けられた。 

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(……おなにい、とは一体何なのですか……) 
 翠星石は胸の内でそう呟いたが、それを口に出すような事は彼女のプライドが許さなかった。 
いつも自分は物知りだと雛苺や金糸雀に自慢していたのに、このまま“分からない”と答えるのは格好悪い。 
そんな可愛い気のあるプライドと雛苺による答えの分からない質問を前にして翠星石が下した返答は、 
「チ、チビ苺ごときに教えてあげないのですぅ!」だった。 
「えー、つまんないのー!」 
 雛苺は先ほど、くんくんを見て発狂している真紅に無視された時よりも大きく頬を膨らませた。 
「本当は知らないんじゃないかしらー?」 
 金糸雀はニヤリと笑みを浮かべると、あざ笑うかのように翠星石を見た。 
それを見た翠星石は立ち上がり、激怒して言った。 
「知ってるですぅ! 翠星石は無知なチビチビ共なんかとは違うのですぅ!」 
「じゃあ説明できるわねー?」 
「当たり前ですぅ!」 
「じゃあ、してみるかしらー?」 
「…………」 
 翠星石は唇を噛むと、悔しそうに押し黙った。両者は沈黙し、居間に響く物音はテレビの音と、真紅が暴走している声だけであった。 
「喧嘩はやめようよー……」2人の様子を心配そうな目で見ていた雛苺が、仲裁に入った。 
 雛苺に止められては、流石にこれ以上責め立てる訳にはいかない。 
「……もう帰るかしらー」 
 金糸雀はそう言うと、踵を返して窓から出て行ってしまった。 

 金糸雀が帰った数分後、入れ替わるようにして遊びに来た蒼星石は、双子の姉と寄り添う形でソファーに座っている。 
居間にはこの双子の姉妹の2人しか居ない。雛苺はお昼寝中で、ジュンは自室で勉強中、真紅も彼の部屋で読書をしていた。 
翠星石は先ほどの言い合いでかなり機嫌を悪くしていたが、蒼星石が遊びに来た途端に一変して上機嫌になった。 
 その様子を、実は帰っていなかった金糸雀が庭の茂みに隠れて見ていた。 
蒼星石は懐から紙で包んであるアメ玉を2つ取り出すと、その内の1つを翠星石に手渡した。 
「おじいさんからアメもらったんだ、いっしょに食べよ〜」 
「あ、ありがとうですぅ……」はみかみながらも、翠星石は素直にそう呟いた。 
その仕草はとても可愛いらしかった。 
 その様子をじっと傍観している金糸雀は、2人がやけに機嫌が良さそうに思えた。 
あの双子の姉妹は2人きりになると、いつもあんなにベタベタしているのだろうか。 
「蒼星石、きゅうくつだから離れるのですぅ」 
 翠星石はアメの包み紙を剥がしながら、自身とピッタリと密着している蒼星石に言った。 
しかし蒼星石が離れる気配はなく、ついには翠星石と腕を組んでしまった。意地でも離れないと言わんばかりの妹を見て 
翠星石は、しょうがないですね、と呟いてアメ玉を口に放った。この心地良い窮屈さをもう少し堪能していたい。 
「……あ」蒼星石は呟いた。 
「な、なんです……?」 
「翠星石がメロン味のアメ食べちゃった……僕が食べたかったのに」 
「早いモン勝ちですよ〜」 
 翠星石は口の中にあるメロン味のアメを転がしながら、自慢気にそう言った。 
 蒼星石はしょんぼりとうつむいて手元にあるイチゴ味のアメ玉を見つめた。 
同じ色の包み紙に入っているため、包み紙を剥がさなければ中身が分からないのだ。 
普段の蒼星石ならば、こんな子供のような無邪気な態度は取らないであろう。しかし翠星石と2人きりになって 
安心し切った途端、互いに寄り添ったり交代で膝枕をしたりと、デレデレ状態になるのだ。それは翠星石も同様である。 
 この間にも金糸雀は、普段は見れない双子の姉妹のじゃれ合う光景を、こっそりしっかりカメラに収めていた。 
「翠星石〜……メロン味……くれない?」 
「ダメですぅ〜、取れるモンなら取ってみるですよ〜♪」 
 翠星石が満面の笑みを浮かべてそう挑発した直後、蒼星石は両手で翠星石の顔を掴んだ。 
「!?」翠星石は驚き、慌てて何をするのかと言おうとしたが、その時にはもう自身の唇と双子の妹の唇が重なっていた。 
 金糸雀は目の前の光景に唖然としているが、すぐにハッとしてシャッターを押した。 
「んくぅ……」 
 蒼星石の舌が自身の口内に割って入って来るのが分かった。翠星石はどうしていいのか分からず、されるがままに弄ばれている。 
しかし、決して嫌な感触ではなかった。故に拒むようなことはしなかった。 
くちゅりくちゅりと、淫らでいやらしい音が静かな居間に響いた。 
 そして、濃厚なディープキスの終わりは唐突であった。 
「――ぷはぁ……っ」蒼星石は翠星石の唇から舌を引き抜いた。 
 心地良い感覚が唐突に終わり、翠星石は、とろん、とした目を蒼星石に向けた。 
「……おいしい」 
 蒼星石は満足気な笑みを浮かべて、翠星石から口移しで取ったメロン味のアメ玉を舐めていた。 

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 これは冗談でしている事だ、そこに性的な欲求など何も無い。……相手は双子の姉なのだから。 
蒼星石は双子の姉の唇と一緒に奪ったアメ玉を舌で転がしながら、胸の内でそう自分に言い聞かせた。 
「…………」 
これは冗談だ、とアピールするかのように蒼星石は笑顔を浮かべているが、いつまで経っても虚ろな瞳で宙を仰いでいる姉の姿を 
見て、無意識にその笑顔は強張った。姉は細い両腕で自身を強く抱きしめるようにし、その呼吸は荒かった。 
その姿は蒼星石の股間を疼かせたが、今はグッとこらえる。 
「す、翠星石……?」流石に笑みを消し、蒼星石は気遣わしげに声を掛けた。 
流石に調子に乗り過ぎたか、と蒼星石は胸の内で嘆いた。そして翠星石の虚ろな視線がゆっくりと蒼星石に向けられた。 
「……へ、へんたい……」今にも泣き出しそうな表情で、ポツリと翠星石は呟いた。 
「え……」 
「きもちわるいですぅ……じ、実の姉にこんなことして恥ずかしくないのですか……」 
 この言葉で、蒼星石は何を言われたのか分からないかのように固まり、数秒の間を置いて、ようやく自分が 
何を言われているのかを理解した。頭の中が真っ白になり、そして徐々に恥ずかしさと悲しさが込み上げて来た。 
「ご、ごめんなさい……」蒼星石は、顔を真っ赤に染め、うつむいて謝罪した。 
しかし翠星石は呆れたように、そっぽを向いてしまった。無視されるくらいなら、いつものように怒鳴りつけられた方がまだ良い。 
「え……えーと……」蒼星石はテーブルに無造作に置かれたイチゴ味のアメ玉を取ると、それを翠星石に差し出した。 
「ほら! 食べる? い、イチゴもきっとおいしいよ!」懸命に明るく振る舞おうと笑顔を浮かべているが、かなり強張っている。 
 泣きそうな者が無理に作り笑いを浮かべると、こんなにも哀れみを誘うのだろうか。と翠星石は思った。 
しかし、その表情もまた可愛いらしい。 
(ちょっといじめてやるですぅ♪) 
蒼星石のあのディープキスは、心地の悪い物ではなかった。むしろあのまま自分からも唇を重ねようとしたが、それだけではつまらないと 
翠星石は思い、ちょっとした悪戯を思いつき、それを実行しているのだ。 
 そうとは知らずに、蒼星石は懸命に機嫌を取ろうとしている。 
「そ、そうだ! 明日メロン味のアメいっぱいもらってくるよ! ふた、ふたりで一緒に……」 
「…………」 
「一緒に……いっしょ……」 
 泣いた。 
蒼星石の作り笑いという仮面が剥がれ落ちてしまい、そのまま泣き崩れた。 
 翠星石は驚いた表情で双子の妹を見た。まさか泣いてしまうとは思わなかったのだ。しかし、妹を傷付けたという罪悪感の中にあるこの 
快感は何だろう。 
「きっ……きら、嫌いに……ならないでぇ……」泣きながら蒼星石は懇願した。 
 流石にこれ以上責めるのは可哀想だ。と翠星石は思った。 
この可愛い泣き顔をもっと見る為にも、もっと虐めてやりたいという好奇心を抑えて。 
「それじゃあ……」翠星石はにやり、と笑みを浮かべた。「おなにー、の意味を教えてくれたら許してやるですぅ」 

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「そ、そんなぁ……」 
 蒼星石は翠星石の言葉を聞き、そう情けない声を出した。 
「早く説明するです! “おなにい”とは一体なんの事なのですか!」 
「えっと……その……」勿論蒼星石は反応に困る。 
 発音が微妙に違うとはいえ、自慰行為の名称を何の恥じらいもなく声高らかに怒鳴る様子からして、本当に知らないのだろう。 
女王様気質で妹をいじめに掛かるくせに、妙にウブな所が憎めない。 
「早くするですぅ!」 
「えーっと……本当に知らないの?」蒼星石は疑問に思い、そう尋ねた。 
翠星石は自慰行為をしない訳ではない、現に以前彼女がそれをしている真っ最中に蒼星石が偶然それを目撃してしまい、その日は 
ほとんど口を利いてくれなかったのをよーく覚えている。もしかしたら、自慰行為そのものを知らないのではなく、自慰行為の名称を 
知らないだけなのではないだろうか、と蒼星石は思った。 
「知らない物は知らないのですぅ! どんな物かさっさと教えやがれですぅ!」 
もうこうなったら言うしかない、しかし、恥ずかしくて顔から火が出そうだ。 
 すう、と深呼吸をし、言おうと試みる。 
「えー……そ、その……――いいこと……」 
「ブツブツ言うなです! はっきりと物を言いやがれですぅ! 答えないと絶交ですよ!」翠星石は苛立ちを隠さずに怒鳴った。 
このまま知らないままでは金糸雀にバカにされ続けてしまう、こんな事を聞けるのは蒼星石しか居ないのだ。 
 絶交、という言葉に衝撃を受けて、蒼星石はやむを得ないと意を決した。 
「き……気持ちイイ事だよッ!」半分ヤケになって蒼星石は声を張り上げた。 
言い切った直後に顔が一気に紅潮するのが分かった。両手を紅潮した頬に当て、そのままうつむいてしまう。 
「気持ちイイ……?」翠星石は首を傾げた。「もっと具体的に説明するですっ!」 
「え……?」 
 乳房や乳首、性器を愛撫したりして快感を感じる行為、だなんて恥ずかしくて言える訳がなかった。 
しかし、ここで“翠星石がこの前してた事だよ”と言ってしまえば、あの時の事を蒸し返された翠星石はさらに不機嫌になって 
蒼星石をいじめ続けるであろう。 
「――その……なんていうか……」蒼星石は、はにかみながら先ほどより小さい声で呟き始めた。 
「……あーもう! イライラするです! 説明が嫌なら今ここでやれですぅ!」 
「……へ?」蒼星石はとんでもない事をさらりと言ってのけた姉の言葉を聞き、固まった。 

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 翠星石は自分が双子の妹にとんでもない事を言った事をまだ自覚していない。 
蒼星石に突然“自分の目の前で自慰行為をしろ”と言っているのだ。しかし、翠星石はそもそも“オナニー”という 
単語の意味を理解していないのだ。 
「早くやりやがれですぅ!」 
「…………」 
 蒼星石は黙し、頬を紅潮させてうつむいているだけであった。もう口でオナニーの意味を教えるしかない。 
蒼星石にとっては死ぬ程恥ずかしい事であるが、身を持って教えるのはもっと恥ずかしい。 
「あ、あのね……翠星石」かろうじで聞こえるであろう声で、蒼星石は上目遣いで言った。 
「オナニーっていうのは……その……む、胸を触ったり……オシッコがでるとこをね……さ、触ったりして……気持ちよくなる事……」 
「……!?」 
翠星石の表情が徐々に紅潮するのが分かった。オナニーとは自慰行為を示す言葉だと今更ながらに悟り、自分がさっきまで 
自慰行為という下品な言葉を声高らかに怒鳴り散らしていたという事実を受け入れられずに居るようだ。 
居間で金糸雀と言い争いを始めた時に、ジュンが動揺しているような反応を示した理由もやっと理解した。 
翠星石は蒼星石は同じくらいに顔を真っ赤に染め、固まっていた。 
 オナニーの解説を終えた蒼星石は恥ずかしさのあまりに、ソファーに顔を埋めて嗚咽を漏らしていた。 
穴があったら入りたい気分だ。 
「へ……変なこと言わせないでよぉ……」 
「あ、え、えと……」翠星石は口ごもる。 
翠星石は先ほどまでの自分を客観視して、かなりおバカでお下品な事を問い詰めていた事を改めて感じた。 
いかにプライドの高い翠星石といえど、この状況で必死に弁解や言い訳をしてもますます惨めになる事くらいは分かっていた。 
そうだ、“サディティックな自分はわざと恥ずかしい単語の意味を問い詰めて、蒼星石の困った反応を楽しんで居た” 
という言い訳はどうだろう? これを思いついた翠星石は、我ながら冴えてると思った。現に少し楽しかった。 
しかし、これほど動揺した後でこれを言っても言い訳をしていると思われるだろうし、どの道舌も上手く回らない。 
「ご……ごめんなさいですぅ……」 
 翠星石は蒼星石と同じように、頬を紅潮させてうつむき、そう言った。今自分にできる最善の行動は謝る事だと思ったのだ。 
言い訳のような事をベラベラ述べて、惨めな思いをしたくはない。何よりそんな醜態を蒼星石に晒す事など翠星石のプライドが 
許さなかった。そしてその後何を思ったのか、翠星石はそのまま立ち上がり、小走りで居間を飛び出してしまった。 
恥ずかしかったのだろうか。 
「…………」 
 居間に1人残された蒼星石は、もう口の中で半分くらいの大きさになってるアメを舐めながら、自身の性器が 
疼いているのを感じた。自分はマゾヒスティックな一面を兼ね備えているのだろうか? 
だからこそ、あの言葉責めが決して心地良い物に感じたのだろう。 
(早く……鎮めなくちゃ……) 
 蒼星石はソファーへ寝転がり、おもむろにズボンを下ろし始めた。 

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「……スクープショットの予感かしらー?」 
 先ほどの一部始終を桜田家の庭の茂みに身を潜めて、カメラを構えながらじっと盗撮を続けている金糸雀はそう呟いた。 
予定では翠星石のオナニーを盗撮するはずであったが、蒼星石のオナニーを撮れるとは思いもしなかった。 
そしてカナは、蒼星石がズボンと下着を太股の辺りまで下ろし、右手で自身の性器を、左手で服の上から乳房を愛撫しているのを見て 
シャッターを押した。この位置では声こそ聞こえないものの、彼女の口の動きを見れば快感に喘いでいる事など容易に理解できる。 

「んあ……翠星石……っ」 
 金糸雀の思った通り、蒼星石は甘く喘いでいた。そして蒼星石はおもむろに愛液が付着している指を口に入れると 
翠星石から口移しで奪ったアメ玉を取った。もう食べる前の3分の1程の大きさにまで溶けている。 
「翠星石の……舐めたアメ……」虚ろな瞳でアメ玉を見つめ、呟いた。 
虚ろだが、愛しげな熱い視線をアメ玉に向けている。まるで眠っている翠星石を見ているような視線であった。 
ただのアメ玉も“翠星石が口に含んだ”というだけでこれほど愛しい感情を抱くような物になるとは思いもしなかった。 
蒼星石は何を思ったのかアメ玉をつまんで、それを自身の性器に擦りつけ始める―― 
 ――ガタッ、突然物音が鳴り、蒼星石は飛び起きて下着とズボンを上げながら物音がどこから聞こえたのかを探った。 
物音はドアの周辺から聞こえたのだと悟る前に、ドアからひょっこりとこちらを覗いている愛しい翠星石の姿が視界に入り 
蒼星石の頭は混乱し、真っ白になった。 
「あ……え、えと……」 
混乱している蒼星石には、もはや言い訳すら浮かばなかった。翠星石は瞬きもせずに、あたふたする蒼星石を見ている。 
その瞳には、驚きと同時に探究心や好奇心が見え隠れしていた。そしてその胸には、双子の妹を弄びたいという欲求が渦巻いていた。 
 翠星石は無言で小走り出すと、あたふたと混乱している蒼星石に飛びつき、そのまま胴にまたがり 
双子の妹の細い両肩をソファーに押し付けた。 

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「アメでそんな事する変態見たことねーですよー?」 
 翠星石は蒼星石の胴にまたがり、そのまま両肩を強くソファーに押し付けた。蒼星石は双子の姉の言葉に頬を紅潮させる。 
「……い、痛いよ……」 
「あ、ごめんですぅ」 
 蒼星石は両肩の痛みを訴え、翠星石は謝罪はしたものの、自身を抑えつける力は緩みはしなかった。 
そして翠星石は妹の右肩を抑えていた手をゆっくりと右腕へ、右手首へと移動させ、先ほどとは打って変わり優しく細い手首を掴んだ。 
左肩を抑えていた力も緩んだが、蒼星石は姉を振り払うような事はしなかった。 
「お詫びにいい物をあげるですよ……」翠星石は口を蒼星石の耳元で甘くささやいた。「蒼星石の大好物ですぅ……」 
 耳を甘いささやき声と吐息でくすぐられ、蒼星石の体が僅かに震える。 
 翠星石は優しく掴んだ手首を口元へやり、人差し指を舌の先でペロリと舐めると、そのまま人差し指と中指にしゃぶり付き始めた。 
「……! ちょ、な……何してるの……?」 
 わざとらしく音を立てながら一心に自身の指をしゃぶっている翠星石は、蒼星石の呼びかけを無視した。 
2本指に翠星石の柔らかい舌がまるで蛇のように絡みついている。 
「んちゅ……さあ、痛くしたお詫びですよ♪」 
翠星石は舌で散々弄んだ双子の妹の指を、妹自身の顔に近づけた。蒼星石は翠星石の唾液が多く付着している自身の指を 
舐め回したい衝動を懸命に押さえ、いかにも平静で冷静な表情を自分の体にまたがっている姉に向けた。 
自分の本能に素直になることを、蒼星石は許さなかった。 
「……いい加減にしないと、いくら僕でも怒るよ」 
「……いらないのですかー?」 
 翠星石は突然冷静な表情になった蒼星石を見て関心していた。身の内に疼く性欲を“平静な表情”という仮面で 
これほどまでに隠している演技力に。しかし平静を保てるのは表情のみ、体は素直にしっかりと反応してくれている。 
この仮面……無理矢理剥がしたらどうなるだろうか? 答えは簡単だ。 
 自分を弄ぶよう懇願し、股を開き、快感に喘ぎ、自分の足にすがり付いて唾液を欲する……。 
 翠星石は、にやり、と笑みを浮かべると、自分の口元から垂れている涎を人差し指で拭うと、その人差し指を 
蒼星石の頬に当て、涎を塗りつける。 
「……やめてくれないか? 翠星石」 
 凛とした声で蒼星石は冷たく言い放った。そして、翠星石の笑みを僅かにムッとさせる事に成功した。 
本当に邪魔な仮面だと翠星石は思った。そんな仮面など付けていても、快感を欲している事は分かっているのに――― 

 ―――剥がしてやる。 

 翠星石は蒼星石の左手を優しく掴むと、それを服の上から自分の乳房へ当てた。 
「……!」 
「ほーれ、触っていいのですよー?」 
蒼星石は尚も平静を装うが、顔は完全に紅潮しまっている。しかし抵抗は見せないものの、蒼星石は翠星石の胸を 
揉みしだくような事はせず、翠星石の意表を突いた。てっきり興奮して揉んでくれると思っていたのに。 
翠星石は自分の胸に当てている蒼星石の手を上下左右に揺らして、揉むよう促してみた。 
ゆさゆさ、と乳房が揺れ、翠星石の呼吸が僅かに荒くなる。翠星石は蒼星石の左手の人差し指を摘むと 
その指を自分の乳首に擦り付けた。 
「ん……」翠星石は、ビクッ、と快感に身を震わせた。 
 手から伝わる妙に生々しい感触は、確実に蒼星石を欲情させていた。 
 翠星石は双子の妹の頬に口付けをすると、彼女の白い首筋に舌を這わせた。 
「ひゃあ……っ!」蒼星石は思わず声を上げてしまい、慌てて声を押し殺した。 
平静という名の仮面は着実に剥がれ始めているのが分かる。表情も段々と弛緩して来ているのを本人はまだ自覚していないようだ。 
そろそろ、蒼星石の仮面を剥がす決定的な一打を与えてやるとしよう。 
 翠星石は蒼星石の左手から手を離すと、そのまま蒼星石のズボンの中に手を突っ込んだ。 
「ん……!」 
 疼いている性器に突然快感が走り、蒼星石は奥歯をかみ締めて必死に声を押し殺している。 
 そして翠星石はズボンに突っ込んだ手で引き続き蒼星石の性器を愛撫しつつ、蒼星石の耳元で囁いた。 
「……姉にこんな事されて興奮してるですかぁ?」ふっ、と耳の中に甘い吐息を流し込む、それとほぼ同時に 
蒼星石の体が震える。「蒼星石は変態さんですぅ……変態……へんたい……へ・ん・た・い……♪」 
何かの呪文のように、翠星石は耳元でこの言葉を囁き続けた。 
「―――て……」 
「?」 
 蒼星石は何かを呟いたが、翠星石は聞き取る事ができなかった。耳元で呪文を囁くのを中断し、翠星石は顔を上げた。 
「……やめて……」 
 そこにあった光景は、平静という名の仮面を見事に引っ剥がされた蒼星石の姿であった。 
弛緩し切った顔は紅潮し、口元からだらしなく垂れている涎は、彼女のほのかな色気を引き立てていた。その虚ろな視線は 
自身に圧し掛かっている姉に向けられている。 
 翠星石はそんな蒼星石を見て、胸の内が“ゾクゾク”して身震いし、その瞳は支配欲への渇望で異様な狂気とも思える 
物を帯びており、口元には勝ち誇ったような笑みが浮かんでいた。 
「……やめてほしいですか?」蒼星石はゆっくりと頷く。「じゃあ―――」 
翠星石は蒼星石の右手首を先ほどとは裏腹に乱暴に掴むと、それを蒼星石の顔の前へ出した。 
翠星石自身の唾液がたっぷりと付着している2本指を……。 
「―――これに蒼星石が犬のようにむしゃぶり付けば、考えてやってもいいですぅ♪」 

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更新遅くてスンマセン(´・ω・`) 

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「だめ……だよ……」 
「……!」 
 声は先程とはまるで別人のような快感に緩んだ甘い声だが、はっきりと蒼星石は翠星石の要求を拒否した。 
それを見た翠星石の表情が一気に曇る。それと同時に、双子の妹のズボンから手を引き抜いた。 
(……この後に及んで……まだ……!) 
翠星石は内心でそう呟くと、悟られぬように奥歯を、ぎり、と噛み締めた。そしてため息を着き 
蒼星石の両肩を先程よりも強くソファーに押し付けた。 
「……や、やめようよ。だめだよこんな事……」 
双子の妹の口から今にも泣きそうな声が漏れる。イイ声だ、今度は快感に狂う声を聞きたい。 
翠星石は蒼星石の手を掴むと、唾液まみれの2本指を無理矢理蒼星石の口へ入れた。 
「早く舐めろです」翠星石は笑みの消えた表情でそう言う促す。 
「むぐぅ……ん……!」 
 蒼星石は抵抗はしなかった。その気になれば大鋏で脅すなり、蹴り飛ばすなりしてこの行為を中断する事ができる。 
その自信が蒼星石には充分あった、それでも抵抗はしない理由は簡単だ。 
(……翠星石にいじめられるのがこんなに気持ちいいなんて……僕ホントに変態なのかな……) 
 蒼星石は自分の指を口に含み、舌を転がしてしゃぶりついた。恥ずかしくて、翠星石の顔をまともに見る事はできない。 
なるべく翠星石から顔を背けて、ぴちゃぴちゃ、と音を立てながら指に付いている翠星石の唾液を味を堪能する。 
それを魅入られたように、じっと見つめている翠星石の表情はあの勝ち誇った笑みに戻っていた。 
その瞳はギラギラとした異様な光を帯びており、呼吸が荒くなっている事から、かなり興奮しているのが分かる。 
「み、見ないで……」 
 今、自分が押し倒している蒼星石が自身の指をしゃぶりながら、虚ろな瞳を自分に向けている。 
「ああ……可愛い、可愛いですぅ……」 
「も、もういいでしょ……?」 
 返事を待たずに、蒼星石は指をしゃぶるのをやめた。指が糸を引いているのがまた色っぽい。 
「いいですよぉ……今から言う事を聞いたご褒美をあげるですぅ……」 
「な、何する気……?」 
 そう呟くと、翠星石は蒼星石の顔を両手で乱暴に掴んだ。 

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「口を開けるですぅ〜」 
 翠星石は蒼星石の顔を両手で掴み、そう促した。蒼星石は促されるままに、口を半開きにする。 
その直後、翠星石は口元から唾液を垂らし、その唾液は半開きの蒼星石の口の中へ吸い込まれるように落ちた。 
「―――!」 
「ご褒美ですぅ……」翠星石は、蒼星石の耳元で囁く。「ちゃ〜んと味わうですよぉ……」 
 双子の姉の悪戯な声と、興奮気味の甘い吐息が蒼星石の耳をくすぐり、彼女は震えた。口の中に垂らされた 
翠星石の唾液を、彼女に悟られないよう舌を転がして味わいながら。 
「どうですか?」 
「……ど、どうって?」 
「ご褒美をもらった感想を聞いてるのですよ」 
翠星石の悪戯な笑みが濃くなる。 
それを見た蒼星石は顔を赤らめて、翠星石から顔を逸らした。 
「知らないよ……そんなの……」 
「へー……じゃあ、感想を言うまで何もしてあげないですぅ♪」 
子悪魔のようにクスリと笑みを浮かべ、踊るような明るい声で翠星石はそう言った。 
 そして蒼星石は頬をさらに紅潮させ、ポツリ、とこう呟く。 
「……いじわる」 

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「早く感想言うですよぉ♪」 
 翠星石は蒼星石を押し倒したままの体勢で、そう促した。 
「どうしたですか? 早く言わないとこのまま放置しちゃうですよー?」 
「…………」 
未だに黙している蒼星石を見て、翠星石は眉を顰めた。 
「10秒待ってやるです、それでも言わなかったらもう終わりにするですぅ!」 
 そう言うと、彼女はカウントダウンを始める。 
「―――7、6、5、4……」 
「…………」 
「3、2、1……0……」 
十秒が経過したが、未だに蒼星石の口から発言は無かった。 
 翠星石は蒼星石の上から退くと、ため息を着きながら乱れた着衣を整えた。そして――― 
「―――じゃ、翠星石はおじじの家に茶を飲みに行って来るですぅ」 
 何事も無かったかのような口調で、翠星石はそう言った。 
“もう終わりだ”と断言したのに、これからまた理由を付けて続けるのもカッコ悪い。何とか蒼星石の方からこの行為を続ける 
きっかけを振って欲しかった。何より、蒼星石が“して欲しい”と自分にすがり付くという形を取りたかったのだ。 
帰ると言えば、引き止めてくれるだろう。必死に引き止める妹に“しょうがない”と偉そうに言ってみたい。 
 でも、もし引き止めてくれなかったら……。 
(あ、あれ……ホントにやめちゃうの……?) 
 蒼星石は驚いた表情で翠星石を見た。あんな事言っても、なんだかんだ理由を付けて続けてくれると思っていたのに。 
もう少し様子を見るか、蒼星石を引き止めて続けてもらうべきか……でも、感想なんて恥ずかしくてとても言えない。 
ここは様子を見る、と蒼星石は判断した。翠星石だってどうせしたいんだろうし、放っておけば何だかんだ理由を付けて 
再び自分を押し倒してくれるだろう。翠星石はいつもそうじゃないか、この前だって怖いテレビを見た時に“一緒に寝てやらない”と 
言われたのに、なんだかんだ言って一緒に寝てくれた。それと同じような物だ。 
 でも、本当に帰っちゃったら……。 

 翠星石はソファーを降りて、居間の出口の方へ歩く。 
しかし、一向に蒼星石が引き止める気配が、翠星石が戻ってくる気配がない。 
(何やってるですか蒼星石! 素直にこの翠星石にすがり付けば済む話なのですぅ!) 
(お、おかしいなぁ……もうそろそろ戻って来るはずなんだけど……) 
蒼星石の表情が不安に曇り、翠星石の表情が苛立ちに曇った。 
翠星石はドアの前にまで到達し、ドアノブにゆっくりと手を掛けた。もう限界だ、ここは下手な意地を捨てて、素直に行為を 
続行するしかない。ここまでやって、今更中断なんてごめんだ。 
 蒼星石は痺れを切らして、ソファーから飛び降りた。 
 翠星石は痺れを切らして、ソファーの方へと振り返った。 
「翠星石!」 
「蒼星石!」 
 2人の声が見事に重なる。 

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「な、何ですか蒼星石?」 
「え……いや、その……翠星石こそどうしたの?」 
 2人とも引きつった笑みを浮かべて、互いにそう尋ねた。 
「えーと……な、何でもねぇです!」翠星石は頬を膨らませ、そっぽを向く。 
「ぼ、僕も何でもない……」蒼星石はそう呟くと、恥ずかしそうに目を伏せた。 
「……ほ、ほんとに帰るですよ?」 
「帰ればいいじゃないか……」 
「……止めても無駄ですよ……?」 
「……うん」 
「…………」 
「…………」 
 2人は黙し、室内がしーんと静まり返る。 
(何してるですか蒼星石! 早く止めるですぅ! じゃないとホントに中断って事に……) 
(な、何してるのさ翠星石、早く戻って来て続きやろうよ……) 
 数秒、時が止まったかのように2人は固まり、互いに自分の期待している反応を待っている。 
 翠星石はドアノブに再び手を掛け、チラチラと蒼星石の方を見ながらもドアを開け、廊下へと出てしまった。 

「……ホントに止めてくれなかったですぅ……」 
 廊下をトボトボ歩く翠星石は、寂しそうにそう呟いた。帰るなんて言わなければ良かった、と後悔して 
深いため息を着いた。 

「……ホントに帰っちゃった……」 
 居間にポツンと残された蒼星石は、寂しそうにそう呟いた。やっぱりあそこは止めるべきだったのだろうか。 
蒼星石は今夜、桜田家に泊まる予定である。のりやジュン、他のドールの承諾も得ている。 
(今夜……思い切って誘っちゃおうかな……) 

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