>>前スレ685の続きです。お久しぶりです。
「・・・・・・・・・・・・きもちわるい・・・・・・・・・・・・」
ベッドの上で意識を取り戻したジュンを襲ったのは、まず自己嫌悪の煩悶だった。
『風呂場でやってる最中に、のぼせて、鼻血出して、ぶっ倒れてしまいました』
およそ、ヒト科のオスとして、あっていい話ではない。それほどの恥。
言い訳はいくらでも出来る。
何しろ彼は忙しい。実の姉の相手をしたり、幼馴染みの相手をしたり、夢の中でオッドアイ姉の相手をしたり、嫉妬に狂ったオッドアイ妹の相手をしたり、・・・・・・とにかく、彼は忙しい。
しかし、ジュンは理解している。
この自己嫌悪は、風呂場でかいた恥だけのものではないと。
「・・・・・・・・・・・・やっぱり、僕は・・・・・おかしいのかな・・・・・・・」
湯船の中で、真紅を相手に理性の仮面を脱ぎ捨てる。愛撫の手は休まず、愛の言葉をつむぎ続け、しかし、それでいて一点、彼の心中に存在する、氷のような醒めた心。
(・・・・・・・ダメだ。やっぱり・・・・・やっぱり、もう、普通のじゃ・・・・・・)
身体の自由を奪われ、眼も、耳も、口も、全ての感覚を遮断され、そしてそれ以上の性的敏感さを全身に植え付けられ、ペニスと乳首と肛門を晒して、ただ、もがき苦しむしか出来ない、あの興奮。
どうしても届かない。あの絶望的なまでの屈辱が生み出す、圧倒的な快楽に。
ジュンは、自分の肉体が、もう後戻りできない段階まで、性的な調教を施されているという事実を、改めて受け入れざるを得なかった。
何も恥じていたわけじゃなかった。今までは。
世間には、こういう性癖が存在すると言う事も、彼は知っていたし、その性癖が日常生活を送る上で、何ら支障をきたすものではない事も、彼は理解していたからだ。
(真紅に、どうやって謝ろうか・・・・・・・・)
そう思いながら、寝返りを打った瞬間、ジュンの網膜と鼓膜に、二種類の情報が同時に飛び込んできた。
「あら、何をどう謝るつもりなのかしら?」
一つは、感情の抑揚を押さえた、少女の声。
そしてもう一つは、血のように真っ赤なドレス。
「しっ、しん・・・・!?」
いつの間に、この部屋に入って来た?いや、いつの間に僕の心を読んだ?
「信じられないわねジュン。レディーを相手にさっさと一人で夢見心地になって、義務も果たさず、後始末もせず、こんなところで反省会?」
「あっ、あのっ・・・・・真紅、これは・・・・・」
「言い訳はおよしなさいっ!この真紅、生まれてこのかた、あんな恥をかかされたのは初めてだわっ!!」
「・・・・・・・っ!!」
「ジュン、座りなさい」
「え・・・・?」
「いいから、そこに座りなさいっ!!」
「はっ、はいっ!」
威厳に押されるようにベッドの上で正座するジュン。
・・・・・・・・もとより真紅は、ジュンの葛藤を承知している。
自分のM的素養を理解しつつ、恥じる事もなかった少年が、あえて彼女に対しては主導権を握ろうとしたのは、その涙と、その『不潔』という言葉によって、より深い衝撃を受けてしまったからだという事を。
ティーンエイジャーの潔癖な精神にとって、その言葉と態度の与えた衝撃は、やはり、大きすぎるものだったのだ。
例え、相手が、人間でなかったとしても。
しかし、自分の本心を押し隠した責めでは、しょせん、互いに深い満足を得る事は出来ない。
ならば、合わせるしかない。彼の流儀に。彼のルールに。
そこまで考える冷静さは、真紅は持ち合わせていた。
この少年に、唯一無二の存在として君臨するためには、誰よりも彼の官能を刺激する、絶対的支配者とならねばならない、という事を。
「ジュン、あなた本当に分かってるの?自分の犯した罪の深さを?」
「つみ・・・・・・?」
上目遣いに、恐る恐るこちらを見上げるジュン。伝わってくるのは、彼の中の後ろめたさ、不安。その表情は、まるで怯えた小動物のようにか弱く、今なら、自分のこの小さな手ですら、彼を縊り殺してしまえそうだ。
真紅はもう、いまやハッキリと認識していた。
彼は、この桜田ジュンという少年は、女たちの魂を狂わせる。
のりも巴も、翠星石も蒼星石も、彼を前にした瞬間に、目の色を変える。狂い出す。
そして、いまや真紅自身も、狂い出す寸前だった。
狂わせるのは、無論、彼のせいだ。
「あなたは、レディーに肌をさらさせて、唇を奪い、そこまでしてなお、殿方の義務を怠り、湯当たりにのぼせたブザマなブザマな愚か者よ。・・・・・・・ただでは許さない。死にたくなるほどの罰を与えてあげる」
そう言うと、真紅の小さな両手は、Tシャツの上から彼の乳首を摘み上げていた。
「ひいっ・・・・・!!」
「あなた、翠星石の乳首奴隷だったんですって?だったらさぞかし、いい声で鳴くんでしょうね・・・・・・?」
「あうっ・・・・・しっ、しんくぅ・・・・!!」
「気安く呼ばないでっ!!」
そう言うや否や、左手で彼の乳首を摘んだまま、真紅はジュンの頬を張り飛ばした。
「ひっ!」
もう一発、もう一発!もう一発!!もう一発っ!!!
びしっ、びしっ!びしっ!!びしっ!!!
「ひいっ・・・いいいぁぁぁ・・・・・・!!!」
何の抵抗も出来ぬまま、真紅の往復ビンタを受け続けるジュン。
「どうしたの!?気持ちいいの!?乳首つままれてっ、ビンタされまくってっ、そんなに気持ちいいのっ!?」
「はがぁっ!・・・・・・ひぐうっ!・・・・・・・いぎぃっ!・・・・・・」
「何言ってるのっ、ちゃんと訊かれた事に答えなさいっ!!」
ビンタがやまない事には、彼といえど答えようもないのだが、その気配は一向にない。
カラカラッ!
十数発目だったか、ジュンの眼鏡が、ビンタの勢いで飛んだ。
だが、真紅が思わず彼から身を離したのは眼鏡のせいではない。乳首をつまむその指に、何か異様な、濡れた感覚を覚えたからだ。
「なっ・・・・・何・・・・・これ・・・・?」
枯木のようにゆっくり後方に倒れるジュンの、白いTシャツの胸の辺りに、じんわりと濡れた痕跡が染み出している。
ようやく解放されたジュンは、天井を仰ぎながら荒い息をついている。
(これが例の・・・・・・翠星石が仕込んだっていう・・・・母乳・・・・・?)
ぺろりと指先を舐めてみる。甘い。・・・・・・・・そして、美味しい。堪らなく。
「それが答えなのジュン?このブザマなおっぱいが・・・・・・私の罰への、レディに恥をかかせた返答なの!?」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・・・・・・・」
荒い息を吐く少年が、何かを訴えようとしているのは明らかだ。その口元、その目つき、何より、その表情。
しかし、真紅はあえてそれを無視する。
「だったら仕方がないわね。レディに恥をかかせて、そんなふてくされた態度に出られたんじゃ、この私にも覚悟があるわ」
そう言うと真紅は、数枚の薔薇の花びらを取り出し、フッ、と吹いた。
「動いちゃダメよジュン」
その瞬間、花びらは剃刀のような切れ味を示し、彼の全身を包むと、たちまちの内にTシャツとGパン、更に彼の下着をも切り裂いてしまった。
「うわあああああああ!!!!」
あっという間に素っ裸に剥かれてしまった少年は、傍にあった毛布に手を伸ばし、まるで女の子のように震えながらこっちを見ている。
・・・・・・・・それにしても、なんという、この少年の魔力だろうか。
その全身から発散するマゾヒスティックな妖気は、もはや真紅の眼を捕らえて離さない。
それだけではない。自分以上に興奮し、これから始まる責めに期待しているジュンの心が、いやと言うほど指輪から流れ込んでくる。
「まずは、そのだらしない乳首から罰してあげるわ・・・・・・・」
ジュンの毛布を剥ぎ取ると、そこに見えるのは、ブザマなほどに勃起したペニスと、白いものをうっすら滲ませた、二つの乳首。
「しっ、真紅・・・・・・・」
「ブザマね、ジュン」
乳首に吸い付く真紅。
美味しいのは、この胸から湧き出る清水だけではない。彼の全身こそが蜜の塊なのだ。
「・・・・・・ひぃっ・・・・・はあふうぅっ・・・・・・・・!!!」
部屋の中から、もがき苦しむ少年の声が聞こえる。
仰向けに横たわった少年の乳首に吸い付いた真紅が、さらにペニスに手を伸ばしたのだ。
ジュンのペニスを刺激するためではない。
乳首への攻撃に耐えかねた少年が、早く楽になろうとペニスに伸ばす手。それを阻止するためだ。
「ダメよジュン。触っちゃダメ。あなたは乳首だけでイクの」
「そんなぁっ! そんなのひどいよぉぉぉっ!! しんくぅぅ!!」
「あなたなら問題ないわ。翠星石の元乳首奴隷だったあなたなら・・・・」
皮肉な口調でそう言うと、真紅は乳首に歯を立てた。
「いぎいぃぃぃっっっ!!!!」
叫び声と同時にそれ以上の量の母乳が、真紅の口の中に溢れる。
その白い蜜を堪能しながら、真紅はジュンの身体をちらりと見渡す。
その背中はエビのように反り返り、そのペニスは天空に屹立し、あと1グラムの衝撃でさえも、耐え切れずに、射精してしまいそうな気配がある。
(イキなさいジュン。イクのよ!イクのよ!!)
乳首に歯を立てる。舐める。吸う。転がす。
「・・・・っっっっ・・・・・・・・!!!!!」
乳首に爪を立てる。つまむ。ねじる。なでる。ひねる。
「・・・・ぁぁっっ・・・・・・・っっっ・・・・・・ぁぁぁ・・・・・・っ!!!」
歯を立てる。ねじる。舐める。ひねる。転がす。そして、つまんで一気に、吸う。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!」
ジュンはイッた。叫ぶほどの声すらなく、抗うほどの力もないままに。
そのスペルマは、ほぼブリッジのように弓なりの姿勢になった、少年の股間から噴出し、そのしずくの一部は、部屋の天井まで届いていた。
「・・・・・・・・・すごい・・・・・・・」
真紅は呆然と、ジュンを見ていた。
乳首だけでイきなさい。そう宣告したのは確かに自分だし、その意図の元で彼を責めたのも、確かに自分だ。
しかし、今のこの少年に、ペニスを経ない間接的な責めで、これほど大量の射精が可能などとは、真紅には、全く想像だに出来ない事だった。
しかも、今なお、彼の震えるペニスは硬度を失っていない・・・・。
彼女は改めて、この桜田ジュンという少年に瞠目していた。
その、底なしの『埋蔵量』。
その、際限のない『感度』。
そして何より、いまだ衰える事なく、全身から発散され続ける『妖気』。
(・・・・・素晴らしい。やっぱり、あなたは素晴らしいわ、ジュン・・・・・!)
疲労と快楽の極致で、むしろ白痴に近い表情を浮かべる己のミーディアムに、真紅は心から誓う。例え、どのような手段を使ってでも、この少年を独占してみせると。
「ジュン、これから、ようやくあなたに機会を与えて上げられるわ」
真紅は、そう言うと、もどかしそうに、己のドレスを脱ぎ捨て始めた。
しかし、気ばかり焦っているのか、なかなか上手く脱げない。
「機会って・・・・・・・・・・?」
ようやく意識が戻ってきたジュンが、それでも半ばうつろな目で訊き返す。
「決まってるでしょ!あなたが果たせなかった『殿方の義務』をもう一度果たすチャンスを上げようと言ってるの」
「とのがたのぎむ?」
「レディに選ばれた殿方には、優しくそのレディをエスコートする義務が生じるの。それがダンスだろうが、シャワーだろうが・・・・・・・」
「ベッドであろうが?」
「そうよ。・・・・・・って・・・・・・・・・・・ええい!!何でサクッと脱げないの、この服はっ!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぷっ」
「わっ、笑ったっ!?いま笑ったわねジュンっ!?ベッドのレディを笑ったわねっ!!」
「笑ってない・・・・・・・・笑ってないよ・・・・・・・くっっくっく・・・・」
「ジュンっっっ!!!」
そんな、真紅の『らしくない姿』こそが、いま最もジュンに必要とされる癒しだという事を、知ってか知らずか、とにかく彼は一息つく暇ができた事は事実だった。
「・・・・だから、笑ってないってば・・・・・真紅」
身を起こしたジュンは、優しい声で彼女に囁きながら、ドレスと絡まったリボンや、ヘッドドレスや、ボタンなどをテキパキと外し始めた。
「ジュン・・・・・・・・手馴れてるのね・・・・・・」
白い肌を、その名のごとく赤く染め、必要以上に皮肉な口を利くのは、羞恥のためか、それとも言葉通りの嫉妬のためか。
しかし、その真紅の説明しがたい感情も、彼の次の発言で、ぶっ飛んでしまった。
「馴れるもんか。お前らとやるのは、これが初めてなんだからな」
「・・・・・・・・・え・・・・・・・・・・・・・?」
「僕は翠星石とも蒼星石とも、本番はしちゃいない。あ、いや、翠星石とは、したと言えば確かにしたけど、あれは夢の中で現実じゃない。だから、本当にするのは真紅、お前が初めてだ」
「・・・・それは・・・・・・・『私たちの中で』と言う意味でしょう・・・・・・・?」
「すねるなよ。・・・・・・・・それとも、やっぱり厭かい? 実の姉にレイプされた男なんて・・・・・・やっぱりキビシイか?」
「なっ、何言ってるのっ。そんな些細な事で殿方を選ぶ私だと思うの!?それに、・・・・・・・・勘違いしちゃダメよっ!どんなブザマな姿になっても、あなたは私だけの下僕なのよっ!!」
「・・・・・・・・ありがとう」
そう言うとジュンは、真紅を自らのへその下に乗せ、眼で合図を送った。
乗ってくれ、と。
(この期に及んで、まだ騎乗位なのね)
そう思うと、真紅はおかしかったが・・・・・・・やがて、彼女はジュンの思う通りの体勢をとり、そして、あてがい、身を沈めた。
「むっきぃぃーーー!!あのバカ真紅め、今頃はチビ人間と、しっぽりたっぷり楽しみつつ乳繰り合ってるに違いないですぅーーーー!!」
「いつも思うんだけど翠星石」
「何ですかっ!!?」
「君は一体そういう言葉を、どこで覚えてくるの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・関係あるですか・・・・・!?」
「え?」
「それがこの、切迫した緊急事態に何の関係があるですかと訊いてるんですぅ!!!?」
「まあ・・・・多分、ないけどさ・・・・」
「むっきぃぃーーーー!!蒼星石ぃぃ、お前は一体何しに来たんですかぁぁ!!??」
何をしにもクソも、君が呼んだんじゃないかという声を、喉の奥でグッとこらえ、蒼星石はダイニングの方を振り返る。
キッチンでは、のりが夕食の後片付けをし、雛苺が洗い終わった皿を拭いていた。
何も知らない雛苺はともかく、のりの背中には、一部の感情の乱れも見えず、鼻歌すら聞こえてくるようだ。
しかし、さっき二階から聞こえてきた悲鳴がジュンのものだとすれば、ある意味、翠星石の怒りも当然に思える。
いや、それ以上に、ジュンの部屋で真紅を送って、二人きりにさせたのも、彼女だという翠星石の言葉を信じるならば、蒼星石としてもやはり、のりの心境は不可解と思わざるを得ない。
(アリスのような女性・・・・・・・・・・・に思えたんだけどなぁ・・・・・・・)
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「とにかくっ!!とっとと二階に行って、奴らの邪魔をしてやるですぅっ!!」
「だめよ翠星石ちゃん」
「なっ、のりっ!?」
猛然と振り返る翠星石の視界に、トレイに乗せたビスケットとアールグレイを持って、しずしずとリビングまでやって来るのりの姿が映った。
「この期に及んで何を言ってやがるんですかっ!? 今ジュンは、真紅の生け贄の祭壇に捧げられて、今にも・・・・・今にもその身を汚されそうになっているのですよっ!!それを黙って見てろっていうんですかっ!!」
「・・・・・くすくす・・・・おかしなコねえ、翠星石ちゃん」
「何がおかしいですかっっ!!?」
「『今にもその身を汚されそうに』って、あの子の身体で、まだ手付かずの綺麗な部分なんて、もうどこにも残ってないわ。そうでしょう?」
「っっっ!」
「そもそも不公平じゃないの。わたしも、あなたも、巴ちゃんも、蒼星石ちゃんも、思う存分あの子で遊んでるのに、真紅ちゃんだけ仲間外れなんて、可哀想よう」
「わっ、私は別に・・・・・!!」
「くすくす、真紅ちゃんから聞いたわ。例の四日間の犯人は翠星石ちゃん、あなただったんですって?」
「・・・・・・・・・・・・・」
イキナリ自分の犯行を言い当てられた翠星石は、口をパクパクさせてうろたえるしかなかった。
しかし、次にのりが言い出した言葉は、まさしく彼女の予想の範疇をさらに跳び越していた。
「勘違いしないで。別にあなたを責めてるわけじゃないの。でも・・・・・・・・・バカねえ、翠星石ちゃん・・・・」
「え?」
「ジュン君が欲しいなら、私に言ってくれれば、いくらでも好きにさせてあげたのに・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・のり・・・・・・・・?」
「あの子の・・・・・・ジュン君の身体はねえ、みんなのものなの。誰のものでもない、ジュン君自身のものですらないの。だから翠星石ちゃん、今度からはちゃんと私たちに言ってね?」
「でも、のりさん、あなたは、こうも言いましたよね?『あの子の心はあの子のものだ』って。今の発言は、その言葉と矛盾するじゃないですか」
蒼星石が恐る恐る突っ込むが、のりの口調はまるで変わらない。
「矛盾はしないわ。だって、いま私が言ったのは、あの子の身体の事で、心の事じゃないもの」
「のりさん・・・・・・・・」
「いいこと、蒼星石ちゃん。ジュン君の心は、確かにあの子自身のもの。でも、あの子の身体は私たちの・・・・・いい?私たちのものなの。ジュン君に残された最後の自由は、その所有者を選択する権利だけなの」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「分かった?ん。それじゃ、夕食後のお紅茶にしましょうね?」
そう言うと、顔色一つ変えずにビスケットを口に運ぶのりを見て、オッドアイ姉妹は、慄然と何も言えずに立ち竦むしかなかった。
「ねえ、のり?さっきから何のお話してるの?ジュン?真紅?」
「・・・そっか、雛ちゃんもいたのよね。じゃ、お茶が済んだら、みんなでジュン君のお部屋に行きましょうか」
「みんなでって・・・・・・チビ苺も連れてですか!?」
「そうよぅ。って、さっき言ったじゃない翠星石ちゃん。仲間外れは可哀想だって」
「・・・・・・・・のりさん。一体何考えてるの?僕らにも分かるように説明してよ」
「だぁかぁらぁ、いま私が言った事を、今度は真紅ちゃんにも分かってもらわなくちゃならないでしょう?あの子は、人一倍ジュン君に執着が強いみたいだから」
「分かってもらうって・・・・・・・?」
恐る恐る蒼星石は尋ねる。もう半分以上、回答の予想できる問いを。
そして、蒼星石の予想通りの答えを、のりは曇り一つ無い笑顔で言い放った。
「ジュン君はあくまで私たちのものであって、真紅ちゃんも『私たち』の一人に過ぎないって事。だから当然、ジュン君を独占する権利は無いって事、かな?」
・・・・・・・それって、のりさん。ジュン君の事実上の共有奴隷宣言じゃないか・・・・。
実の弟に対して、そこまでサラリと言ってのけるこの少女に、蒼星石は、恐怖で足もすくむ思いだった。
「あっ・・・・・あああああああ・・・・・・・・・!!!!!!!!!」
「・・・・・しっ・・・・・しんく・・・ぅぅぅーーーー!!!!」
真紅には信じられなかった。
ジュンのものが彼女の内部に放たれた瞬間、文字通り、もの凄いエネルギーが彼女の内部に発生したのを感じたのだ。
指輪を介して供給される精力どころの比ではない。もっと直接的な、圧倒的なパワーが、真紅の身体に流れ込み、その力がさらに巨大な熱量へと変換されてゆく。
もはや、エクスタシーなどという次元の感覚ではない。自己内部に、突然発生したこの巨大な波動は、真紅自身の精神はおろか、肉体までもバラバラにしてしまいそうな錯覚を与える。
「!!!!!!!!!!!・・・・・・・!!!!!!!!!」
これを快感と呼ぶのだとしたら、今まで自分が知っていたつもりのエクスタシーは一体なんだったのだろう?
そんな事を感じる余裕も無く、真紅の精神は消し飛んだ。
「きゃああああああああああ!!!!!!!」
いきなりビスケットを吐き出した雛苺が声高に叫ぶと、そのままソファからずり落ちて、のた打ち回った。
「あああああ!ジュン!!ジュン!!あああああああ」
「雛ちゃん!?雛ちゃん!?どうしたのっ!?」
「ひっ、雛苺っ!!しっかりするですっ!!」
「・・・・・・・・ジュン・・・・・・・・すごいのぉ・・・・・・・」
最後にそれだけ言うと、雛苺はその小さな手を、パタリと脱力させ、うつろな目で荒い呼吸を始めた。さすがに真紅のように失神までは行かなかったようだが。
「のりさん、水を」
「はっ、はい」
蒼星石の指示で、のりがキッチンまで水を注ぎに行く。
オッドアイ妹の手で水を飲まされた雛苺は、ようやく落ち着いたらしかった。
「雛苺、一体何があったの?」
「・・・・・・・わかんないの」
「分かんないじゃないですぅ!?ちゃんと答えやがれですぅ!」
「だって、ホントに分かんないもん!いきなり、もの凄い熱いものが身体の中に入ってきて、それが、ものすっごく気持よくて・・・・・気が付いたらこうなってたんだもん!」
「それじゃ、こっちも全然分からんちんですぅ!!」
「いいから翠星石!・・・・・・・それで、ジュン君の名前を呼んだのは?」
「その気持ちいいのが・・・・・・何かすごく、ジュンのイメージが一緒に流れ込んできたの・・・・・・・」
「ジュン君のイメージ・・・・・・・・!」
「やっぱり、おバカ苺ですぅ。何を言ってるのかサッパリですぅ」
「いや、そんな事は無いよ」
「へっ!?」
「雛苺は、指輪を介して真紅と繋がってる。という事は今、同じ事が真紅にも起こっていると見て間違いは無い」
「まあ・・・・確かに・・・・」
「しかも、いま真紅と一緒にいるはずのジュン君のイメージが流れ込んできたという事は・・・・・・!」
「真紅ちゃんとジュン君に何かあったって事なのねえ!?」
「急ごう!ジュン君の部屋へ!」
「・・・・・・・・・ジュン」
「大丈夫か真紅!?」
「・・・・・・・・・・・すごい・・・・・・・まるで・・・・・・・ああ・・・・・・・もう、例えなんか出て来ない・・・・・・・・・・・・」
「気持よかったのか?ひょっとして?」
「よかったのかって・・・・・・・?バカね、ジュン・・・・・・・・気持よすぎて、死ぬかと思ったわよ・・・・・・・・・・」
その表現は、真紅にとっては言い過ぎでも何でもなかった。いま、彼女の体内には、はちきれんばかりの純粋な精力が蓄積されている。
恐らくいま、アリスゲームでの戦闘状態に入ったとしたら、自分一人で、残り六人の姉妹をまとめて相手に出来るだろう。
だが、それ以上に、いま自分の感じている充足感はどうだろう?
ミーディアムとのセックスが、こういう効果を生むのか。それとも人間相手のセックスならば、相手は関係ないのか。それとも、桜田ジュンという少年が徹底的に特殊なのか。
その瞬間、廊下をばたばたと走る音がしたかと思うと、ドアがイキナリ開けられた。
「ジュンくぅぅぅん!!!!」
「・・・・・・・・お茶漬けのり・・・?」
「チビチビ人間っ!大丈夫ですかっ!!?」
「・・・・・・性悪人形・・・・?」
「ちょっと、あなたたち、マナーがなってないわよ!」
「真紅、一体何があったんだい?」
「何がって・・・・・ちょっとあなたたち!何なのよゾロゾロと!?」
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「・・・・・・・なるほど、そういう事だったのですかぁ」
「確かにありえる事だね。ミーディアムとの直接的な性交渉が、そういう結果を生むのは」
真紅は彼らに、一応さっき起こった出来事と、それに対する自分の見解を話した。
行為のあとのマッタリとした気分をぶち壊されて、いかにもジャマくさそうに、ではあったが。
その様子を、これまた興味なさげに、壁にもたれて見つめるジュン。
「さあ、もういいでしょう!?とっとと私とジュンの部屋から出て行って頂戴!」
「『私とジュンの部屋』あ!?」
真紅の言い草に、オッドアイ姉妹が、ギラリと抜き身のような殺気を込めて振り返る。だが、その火花にやんわり、そして着実に水をぶっかけたのは、のりだった。
「あらあら、何を言ってるの真紅ちゃん?ここは、そんなお部屋じゃないわよぅ」
「へえ・・・・じゃあここは一体、誰のお部屋なのかしら?」
いかにも挑発的な真紅の問いに、まるで駄々ッ子をあやすように、のりは答える。
「ここはジュン君のお部屋。で、それと同時に私たちのお部屋。でしょう?」
さすがに、いまのは聞き捨てに出来ないとジュンが反応する。
「ちょっと待てよ洗濯のりっ!私たちの部屋って、どういう意味だ!?」
「決まってるでしょう?私たちが順番に、平等に、ジュン君を可愛がってあげるお部屋」
「なっ・・・・・・・?」
「真紅ちゃん、独り占めはいけないわ。ジュン君を独り占めにしたかったら、まずは私たちと同じスタートラインに並ばなきゃ。・・・・・・それともその条件じゃ、自信ない?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いいわ、承知したわ、のり」
「おいっ、勝手に承知すんなっ!!」
そんなジュンの叫びは例のごとく無視されて、真紅の殺気を、のりは平然と笑顔で受け流していた。
「さぁて、それじゃあ雛ちゃん、さっきのお約束通り、ジュン君を使って、みんなで遊びましょうか?」
「わーーーーい!雛、遊ぶ遊ぶ!」
「ちょっ、ちょっと待ってよ姉ちゃん!もうこれ以上、僕に何をやらせる気なんだよ!?」
「そおねえ・・・・まずは、これまでずっと仲間外れになってた雛ちゃんに、『私たち』の仲間になってもらわなきゃならないし、真紅ちゃんを含めた全員で、親睦会もやっとかなきゃだし・・・・・」
「姉ちゃん・・・・・・・!」
「取り合えず、またまた楽しい夜になる事だけは間違いないわ」
「だめだよっ!もう、もう無理だよっ!これ以上したら、僕死んじゃうよぉっ!!」
「くすくす・・・・・・・大丈夫よぅ」
姉は、恐怖の形相であとずさる弟の頬に、そっと手をやり、眼鏡を取ると、その潤んだ瞳に口付けた。
「前に言ったでしょう、ジュン君。お姉ちゃんが『出来る』と言って、あなたに出来ない事は何もないって。お姉ちゃんが『やって?』とお願いして、あなたにそれを拒む権利もどこにもないって・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「いい、ジュン君?ジュン君にはもう何も無いの。あなたのものは全部、ぜ〜んぶ、みんなが持ってっちゃったから」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「確かなのは、みんながあなたを愛してるという事。そして、ジュン君に残されたのは一つだけ。その愛にこたえる義務、ただそれだけなのよぅ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ジュンの涙は止まらなかった。ほろほろ、ほろほろと、まるで清流の湧き水のように次から次へとこぼれ落ち、実の姉は、その涙をまるで千年の甘露であるかのように飲みつづけた。
その様子を、ドールたちはまるで圧倒されたかのように立ち竦み、見ていた。
「・・・・・・それじゃ始めましょうか。雛ちゃん、いらっしゃい」
「はっ、はいなのっ!」
のりは、ジュンの背後に回りこむと、さらに彼の横顔から、その涙を舐め続けた。
「・・・・・っく、ひっく・・・・ねえちゃん・・・・・」
「・・・・くすくす、ホントに泣き虫ねえジュン君は・・・・ねえ、雛ちゃん?」
「ジュン、ジュン、泣いちゃダメなの。おとこのこは泣いちゃダメなの」
「ほおら、雛ちゃんもそう言ってるじゃないのぅ。早く泣き止まないとねえ、ジュン君」
そう言いながら、のりはジュンの両乳首をつまみあげた。
「はああああああっっっ・・・・・・・!!!!!」
「ほら、どおしたのジュン君?泣き止むんじゃなかったのぅ?」
そう言いながらのりは、後ろから抱きかかえた弟の耳に舌を這わせ、さらにうなじへと攻撃のポイントをずらしてゆく。
「はああ・・・・・・・・・ひゃめて・・・・・・・ふはぁぁぁ・・・・・!!」
「のり、ダメなの。ジュンが全然泣き止まないの」
「雛ちゃん」
「はいなのっ」
「ジュン君のおっぱいをナメナメしてあげてくれる?」
「おっぱい?」
「そうよぅ。私たちでもっともっとジュン君を可愛がってあげるの。そしたらジュン君もきっと泣きやんでくれるわよぅ」
「はいなのっ!」
ジュンの乳首に飛びつく雛苺。その小さな舌は、まるで濡れた筆で嬲られているかのような感覚を彼に与える。
無論のりの乳首責めも終わったわけではない。舌と爪の同時攻撃がジュンを襲う。
「ああああっ、雛苺っ、だめだっ!そこは・・・・姉ちゃん・・・・あああああぁっ!!」
「えっ・・・・・・ダメなの、ジュン?」
「・・・・・くすくす、雛ちゃんが訊いてるわよぅ?ジュン君」
「・・・・・え・・・・・・・・?」
背後から、のりが直接耳に囁いてくる。妖精のような悪戯っぽい笑顔とともに。
「だから・・・・・・やめていいのぅ? おっぱいナメナメ」
「・・・・・・・・そんな・・・・・・・」
「やめて欲しくないなら、素直にちゃんとお願いしなきゃ、雛ちゃんに。ね?」
雛苺が乳首から舌を離した瞬間に、のりの指先も同じく彼の胸元から離れている。残されたのは、中途半端に刺激を受けて放り出された、ジュンの乳首だけだった。
ジュンは、眼前の、人一倍幼い容貌をしたドールを見る。
もとより雛苺に、性的な知識も技術もあろうはずがない。
彼女は心細そうな目線で、窺うように、不安そうにジュンを見ている。それこそジュンが心配で堪らない、という風に。
「さあジュン君、キチンとお願いするの。一体自分のどこをどうして欲しいのか。それとも、ズーッとこのままでいいの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ジュン君が言わないと、本当にこのままだよぅ。い・い・の?」
いいわけなどない。もう乳首への疼きだけで、ジュンは気が狂いそうだった。
でも、何も知らない雛苺に、この明らかにイノセントな幼女の姿をしたドールにまで、屈服の声を聞かせるのは、いくら何でもためらわれた。
(でも、でも・・・・・・・!)
「・・・・・・・・・・・・・・ちご」
「・・・・聞こえないわよぅジュン君」
「・・・・・僕の、胸を、なめて、雛苺・・・・・」
「胸じゃないでしょう?おっぱいでしょう?おっぱいナメナメして下さい、でしょう?」
「おっぱいナメナメして下さい、雛苺っ!!」
泣き顔を、更に恥じらいで赤く腫らして叫ぶジュン。
彼のその表情と、のりを交互にみた雛苺は、のりの微笑返しを見て、ようやく確信を持ったらしかった。
「はっ、はいなのっ!!」
ジュンの乳首に飛び込む雛苺。それと同時に、のりの指による乳首責めも再開された。
「ああああああああっっっっっっっっ!!!!!」
適度な痛さとくすぐったさが共存する、爪と舌の責めを喰らい、ジュンは全身の力で暴れだした。
「ちょっ・・・・・ジュン君、じっとしてなさいっ!」
「でっ、でもぉっ・・・・・・・・ああああああっ・・・・・・・・!!」
「きゃはははは、ジュンが暴れてるぅ。おもしろーい」
「雛ちゃん、ジュン君を動けなくしてあげてっ」
「はいなの。ベリーベル!」
どこからともなく発生した苺蔓が、ジュンの両腕を後ろ手に縛り上げる。
「ねえのり、ジュンのおっぱい、とっても甘いの」
「そうよ、ジュン君の身体は、とってもとっても美味しいの。雛ちゃんももっと、味わってあげて」
「はいなの!」
いままで雛苺が舐めまくっていた乳首から、のりの爪が撤退する。その瞬間、ジュンは自分の胸が強烈に吸い上げられる感覚を覚えた。
「うわあぁぁぁぁぁっっっ・・・・・・・もうっ、もうやめっ・・・・あああああっ!!」
「おいひいっ、おいひいのっ、のりっ!」
「そう、よかったわね雛ちゃん」
「はいはのっ!!」
「・・・・・・・・あああああああああ!!もう、辛抱たまらんですぅ」
眼前の逆レイプに呆然と眼を奪われていた翠星石が、ようやく意思を回復させたらしい。ベッドに飛び乗り、絶叫した。
「のりっ、チビ苺っ、ジュンはお前たちだけのオモチャじゃないのですぅっ!!」
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「すっ、翠星石っ!」
「ええい、蒼星石うるさいですぅ!!文句があるなら、オマエもこっちに来やがれですぅ」
そう言うや否や、翠星石はジュンのもう片方の乳首に吸い付いた。
「ひゃぁぁぁあああ!!!」
「もとをただせば、このチビ人間だって、翠星石の乳首奴隷なのですぅ!!」
「やめっ・・・・・・もうっ・・・・・・・もうっ・・・・・・ああああああ!!!」
「あ〜ッ、翠星石ずるいのっ。いまはジュンのおっぱいは雛のものなの!」
「じゃかあしい、黙りやがれですぅ!!こういうのは早い者勝ちなのですぅ!!」
「だったら雛のほうが早かったのぉ!!やっぱ翠星石ずっこいのぉ!!」
「まあまあ、いいじゃないの雛ちゃん。おっぱいは二つあるんだから、仲良く、ね?」
「ちょっ・・・・・・待っ・・・・・たっ・・・・・助け・・・・・・・!!!」
ジュンはもう声も出ないようだった。のりは少し体勢を変えると、背後からジュンのペニスをつかむと、真紅や蒼星石に笑いかけた。
「あなたたちもおいでなさい。早くしないと、美味しいところは全部この子達に持ってかれてしまうわよぅ」
蒼星石は真紅を見る。・・・・・・・・彼女は怒りに燃えた眼でのりを睨みつけていた。
「どうしたの真紅ちゃん、それとも・・・・・・くすくす・・・・・・・自信ないのぅ?」
「のり・・・・・・・・・・・・・!!」
確かに、いまベッドで展開されている『絵』はとんでもなく象徴的だった。
両の乳首をそれぞれ雛苺と翠星石に吸い付かれ、全身を縛り上げられたジュンを、背後からのりが、うなじを舌で、ペニスを右手で、徹底的に責めながら、泣き疲れた少女みたいにさせた弟越しに、真紅に微笑を送っている。
それはあたかも、この子は私のものだと、少しでいいなら恵んであげると、のりが主張しているようだった。
・・・・・・・・・・・・いいわ、のり。あなたのやり方にのってあげる。そのかわり、あとで後悔しても、私は知らないわよ・・・・・・・!
「いくわよ蒼星石」
真紅はベッドに飛び乗ると、むしゃぶりつくように、ジュンのペニスを頬張った。
「まっ、待ってよ真紅!」
一人出遅れた蒼星石が、真紅を追ってジュンに取り付こうとするが、もう、彼の身体はのりや、他のドールたちで埋め尽くされている。
その様子を見ていたのりが、クスリと笑って、背後から抱きかかえていたジュンを、そのままベッドに横たえた。
「いいわよ蒼星石ちゃん。こっちにいらっしゃい」
「のりさん・・・・・・・?」
「ジュン君に、あなたの甘くて美味しいのを振る舞って上げて」
「はっ、はい!」
蒼星石が、やっとの事でゲームの仲間に入れてもらった子供のような、嬉しげな表情を浮かべると、いそいそとズボンと下着を脱ぎ、ジュンの枕もとまでやって来た。
「ジュン君・・・・・・・あの・・・・・・いいかい・・・・・?」
「くすくす、別にいいわよぅ、そんな許可を取らなくてもぅ。だってジュン君にはもう、いちいち答える余裕なんてないんだからぁ」
のりの言うとおりだった。もはやジュンはあえぐ事すら困難なようだった。
酸素を求めてあえぐジュンの口元に、蒼星石が腰を降ろしてゆく。
いまやジュンは全身をドールたちに、生きながら貪り食われていた。
まるで生きながら、軍隊アリに全身を取り付かれた、哀れなガゼルのように。
やがて蒼星石も、顔を赤らめて、ジュンの涙混じりのクンニに声を押さえ始めた頃、彼の股間はギンギンになり、その先端からは再び、カウパー液がこぼれるほどに分泌されつつあった。
・・・・・・・・美味しいのだ。この物体から発生する液体は、その精のみならず、その予備液でさえも、ふるいつきたくなるほどの甘露なのだ。
しかし、いま現在この物質を管理しているのは、ペニスを愛撫している真紅ではない。
「雛ちゃ〜ん、じゃ、そろそろ始めましょうか」
拘束され、ドールたちに全身を弄ばれていたジュンを楽しげに見ていたのりは、思い出したかのように、雛苺に声を掛ける。
「まっ、待ってのりっ!もう少しっ!!せめて、もう少しっ!!」
思わず声を荒げる真紅。しかし、その訴えを彼女が取り上げるわけもなかった。
「くすくす・・・・だめよぉ真紅ちゃん。あなたはさっき、たっぷり一人で楽しんだのでしょう?」
「でも・・・・・・・それはっ・・・・・・・・!!」
「ほうれすぅ、ひんくはひょうはもう、がまんするのれすぅ」
翠星石もジュンの乳首から口すら離さず文句をつけてくる。
「あの、のり、雛はどうしたらいいの?」
「取り合えず雛ちゃんは、お洋服を脱ぎ脱ぎしちゃってねぇ。すぐにそっちに行くわ」
「はいなの」
「蒼星石ちゃん、ちょっといい?ジュン君、ジュン君?」
「・・・・・・あっ・・・・・!ちょ・・・・待って下さい・・・・・・・のりさん・・・・・っ!!」
蒼星石が股間から、くちゃり、という音すら立てて、腰を上げる。
のりは、その蒼星石の股間の下で、ほぼ酸欠状態になっている弟に話し掛けた。
勿論ジュンに用件を聞き返す余裕はない。
「ジュン君、あと四回、頑張れる?それで今日はゆるしてあげるね」
「四回?」
その場にいる全員を代表して、蒼星石がその数字の根拠を訊き返す。
「雛ちゃんと、翠星石ちゃんと、蒼星石ちゃんと、あと私。・・・・・・・・・お姉ちゃんと、ね・・・・?」
瀕死の弟にそう尋ねる姉の表情には、今までにない真剣な眼の光と、それを隠そうとする照れ笑いのような、はにかみが窺えた。
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あれから、数日が経った。
巴が桜田家のチャイムを押すと、一分ほどしてインターフォンからのりの声が聞こえてきた。
「ああ、いらっしゃい巴ちゃん。いま開けるわよぅ」
無論、そのインターフォンの声の後ろからですら、鳴り止まない少年の喘ぎ声が聞こえてくる。
「おまたせぇ」
ガチャリとドアが開き、大ぶりなTシャツとジャージで、いかにもとっさに身に付けましたと言わんばかりの服装をしたのりが、乱れた髪をなでつけ、巴を出迎えてくれた。
「こんにちは」
「いらっしゃい。あっ、早く中に入っちゃって。最近ジュン君たら、声が大きくて困ってるのよぅ」
確かに、中からは、さっきインターフォン越しに聞こえた喘ぎ声が、半ば絶叫のような響きを伴い聞こえて来る。
巴は扉を閉めた。
その途端、つん、とした臭気が鼻をつく。
家中いたるところで、数限りなく行われたセックスの臭い。
巴は、お土産の苺大福を片手に、靴を脱いだ。
ジュンの叫びがだんだん大きくなる。
だが、巴は、リビングに入ったとき、初めて彼の声以外の音を聞き取った。
かさ、かさ、かさ、かさ、と何かが何かを這いずり回る音。
「ひゃはははっはっ・・・・・ひひひふひゃひひひゃひゃひゃ・・・・・」
「まだよっ!まだイカせないわよっジュンっ!!」
「きゃはははっ!ジュンが泡を吹いてるのぉ!!」
雛苺と真紅が羽箒で、拘束され、部屋の中央から吊るされたジュンの裸体をくすぐっている。
吊るされたといっても、彼が膝立ちになる高さだが。
翠星石や蒼星石はソファで紅茶をすすりながら、それを見ながらくつろいでいる。
早く順番かわってよねと言わんばかりの眼をして。
「桜田・・・・・君・・・・・・!」
「ふひゃはっ!!ひゃひゃひゃっふふっひひっ!・・・・たっ、たすけっ・・・・」
「あの・・・・のりさん・・・これ一体・・・・・・・?」
「ああ、今日のジュン君はね、くすぐり責めの日なのよぅ」
「くすぐり責め?」
見ると、都合十数本の毛筆、絵筆、ハケ、さらに耳掻き、毛皮の手袋、チアリーダーのポンポンやら、人体をくすぐるためのあらゆる道具が散乱している。
「あっ、トモエだぁ〜!!」
雛苺が羽箒を投げ捨て、巴に飛び込んで来た。
「トモエっ、トモエっ、ふにゅーは持って来てくれたっ?」
「あっ?・・・ああ、持ってきたわ、苺大福」
「ありがとうなの〜!」
「あら巴。あなたもやる?結構楽しいわよ。この新しい責め」
真紅は、そう言いながら羽箒から、ペンキ塗装用の大型のハケに持ち替え、ジュンの尻の割れ目を緩やかに刺激した。
「ひゃはははっ!!ふふひゃひょひひひゅひゅひゃひゃっ!!」
彼の表情は、もう正気を保っていなかった。
その眼は赤く充血し、その口元からは止めどなく涎が滴り落ち、まるでマラリア患者の発作のように、ガクンガクンと痙攣を続けていた。
「ああ真紅ずるいのぉ〜、一人でやってちゃダメなのぉ」
雛苺も、巴の胸から飛び降りるや、細身の毛筆を拾ってジュンの乳首に取り付く。
・・・・・・・・これは一体、どういう事なのだろう?
巴は、眼前で行われているこのサバトに、果てしない困惑を覚えずにはいられない。
ふと見ると、ギンギンに勃起したジュンのペニスの根元には、紐状になった細い木の芽が縛り付けられている。
どんな刺激を与えても、あえて射精させないための処置だ。
数日前、のりが言うところの『私たちの仲間』にオッドアイ姉妹、そして真紅と雛苺が加入してからというもの、この桜田ジュンに与えられる性的行為が、一気に性的虐待、いや拷問の域まで加速してしまった。
以前はこうではなかった。確かに、自分やのりも、あまり人には言えない行為を彼に実施したし、場合によっては強制したりもした。
しかし、それでも、この少年に対して自分なりの愛情を待っていたし、例えどんな恥知らずな行為を彼に強制したとしても、それは、彼を想うあまりの行為だった。それだけは自信を持って言える。
だが・・・・・・・この人形たちは違う。彼女たちが、ジュンに対してどのような想いを抱いているのかは知らず、いま見る限りでは、単に彼をオモチャ代わりにして楽しんでいるようにしか見えない。
特に、この真紅。
いままでは、落ち着いた雰囲気を持った、気品のあるドールだと思っていたが、彼女がジュンを責めている絵は、まるで理性のかけらも感じられない。
と言うより、あえて理性をかなぐり捨てているようにすら見える。
誰よりも激しい責めを、誰よりも酷い快楽を、しゃにむにジュンに与えようと躍起になっている。そういうことなのか。
しかし、このままでは遠からず、ジュンは確実に責め殺されてしまうだろう。
・・・・・・・実は、巴の考えている事は、少なからず図星だった。
真紅はジュンを諦めていなかった。誰の手にも渡さず、永遠に自分一人のものにしておきたかった。
あの日。初めてジュンと結ばれた夜の記憶が、未だに彼女の脳裡から離れない。
自分を、一人の女性として抱いてくれた凛々しいジュンの横顔は、真紅のまぶたにくっきりと焼き付いている。
しかし、そのためには・・・・・・どうしても、彼の心と肉体を自分の支配下におかなければならない。
誰よりも激しい責めをジュンに施し、誰よりも過酷な快楽を彼に与え、自分以外の女たちの必要価値を可能な限り、落とさねばならない。
さもなければ、おそらくジュンを、実の姉・桜田のりの手から奪う事は永遠に不可能だと、真紅は判断せざるを得なかった。
幼すぎる雛苺には、ジュンに対する純粋な独占欲はあまりない。
しかし、翠星石や、蒼星石も基本的に真紅と同じ考えだった。
ドールたちは確信したのだ。生半可な事では、のりを出し抜いてジュンを手に入れることは出来ないと。
あの夜ののりを見ていない巴には、真紅たちの考えている事は分からない。
だからこそ、ドールたちの加速していく責め嬲りが、客観的に見ていられなかったのだ。
その夜、ようやく十時間に及ぶくすぐり責めが終了し、食欲すらもなく、精根尽き果てたジュンを自室に運び込みながら、巴は、のりや、ドールたちの眼を盗んで囁いた。
「桜田君、あなた、このままだと確実に殺されるわ」
「え・・・・・・・・・・・・?」
「私と一緒に、逃げましょう・・・・!」
「柏葉・・・・・・・・・・・」