流れぶった切るようで悪いんだが、投下します。 
ジャンル的には、水銀燈陵辱モノ?です(需要があるっぽいので書きました)。 
苦手な人はスルーしてください。 
では投下。 

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「ここはどこかしら」 

真紅は辺りを見回した。見渡す限り一面の黒界。 
上も黒。下も黒。右も左も黒・黒・黒。 

「私は鞄で眠っていたはず・・・ここは、誰かの夢?」 

少し神経を集中させる。すると、よりはっきりとこの世界のカラーが分かる。 
ただの黒ではない。 
寒くて冷たくて、どうしようもないほどに孤独な黒。 
真紅の背中に怖気が奔った。 
ここはまともな場所ではないのだ。 
夢ならば早く覚めて欲しい。 

「欲が叶うは夢。叶わないも夢。何事も思い通りにはなるとは限らない。それこそが正しい因果律のあり 
方とは思いませんかな?赤い姫君」 

「ラプラスの魔…ここに私を引き込んだのはあなたかしら?返答次第ではグーで殴るわよ」 

「私はこの機会をずっと願って叶わなかった。そして今…ついに扉が開かれる。何の因果か、あなたもこ 
の機会を手に入れたのですよ」 

「答えに成っていないのだわ。説明なさい。ここは何処?あなたは何を知っていて、何をこの世界に求め 
ているのかしら」 

「見ると聞くでは大違い。百聞は一見に如かずとはよく言ったもの。…ほら、扉が開きますぞ」 

指差す方を仰ぎ見る。 
前方の空間が蠕動するかのような錯覚。黒い世界に黒い穴が開くのを視覚できるという異常。 
穴から吹き出たのは黒い瘴気。 
死体を詰めて何年も放置した壷を開けたような。 
真紅はハンカチで口を覆い眉を顰めた。 

「この穴もいつまで開いているか分かりませんぞ。 

さぁ入った入った! 
舞台の幕は開かれた。 
演目はなんでしょう? 
タナトス?エロス? 
はたまた 
カルナバル?グランギニョル? 
それは見てのお楽しみ…」 

ラプラスの魔は詠い、真紅を抱えて扉へと身を躍らせた。 

穴を抜けると、そこには一面の雪原。 
遠くに見える山岳は氷山。 
長年溜め込まれたであろう腐臭を吐き出した世界は、身を切るような寒さと透明感に溢れている。 
不快な異臭こそないものの、心を萎縮させるかのような、不安や絶望感を煽る雰囲気が漂う空間であるの 
は間違いない。 
その世界の中心に、大きな扉があるのを真紅は発見した。 

「これがあなたの知りたかったモノかしら?」 

いまだに自分を抱えている不届き者の鳩尾に肘鉄を抉りこませながら、真紅は雪原に降り立った。 
黒曜石のような透明感のある黒を基調に、鋭角的で排他的な外観を備えた豪壮な扉。 

「開いてみてはいかがですか?あなたも扉の向こうに興味がおありでしょう」 

鳩尾の一撃に不覚にも膝をついていたラプラスの魔が、膝についた雪を払いながら立ち上がった。 
ラプラスの魔をちらりと一瞥し、真紅は扉へと歩を進めた。 
この世界の中心を成す扉。 
真紅はそれを開こうと手を伸ばし、そして慌てて引っ込めた。 
触れてもいないのに、それは意志あるものを拒むかのような強烈な冷気を湛えていた。 
意を決し、もう一度手をのばす。 
扉に触れる。触れた指先から凍り付いていくような錯覚にとらわれる。 
反射的に扉から手を離してしまった。 
その時。 
ギシギシと不快な軋み声を上げながら扉が開かれた。 

―――それは記憶。 
   決して開いてはならない記憶の扉。グランギニョルが幕を上げた瞬間だった。 

「あなたが私のゼンマイをまいたのかしらぁ?冴えないかんじぃ…」 

時代背景は分からない。部屋の様子からすればヨーロッパのどこかの国といったところだろう。 
水銀燈を見上げて呆けている男は、薄汚れた服と、所々跳ねている髪型を見るに、没落貴族の様相を呈して 
いた。 

「私は、薔薇乙女第一ドール 水銀燈。そしてあなたは、記念すべき私の最初のマスター。」 

そういって艶然と微笑む水銀燈。 
そこには、人を嘲笑したり冷酷に接するような雰囲気は見受けられなかった。 

男は由緒正しき名家の生まれだった。その土地で絶大な権力を誇る家柄であり、であるが故に周囲との摩擦 
は絶えなかったといえる。 
その男の父親の代で権力は最高潮に達した。父親は貪欲な俗物であり権力に固執していたがそれを実現する 
に足る実力も保持していた。 
日々政争に奔走する父親は家族というものに興味がなかった。己の権力と財産の増大に愉悦と生きがいを見 
出し、家庭を顧みるどころか、家族すらも上昇への生贄として捧げていた。 
そんな父親の背中を見て育っていたからだろう。男も権力を欲した。父親が急病で逝去した時には小躍りし 
て喜んだほどだ。莫大な遺産は、その男の欲求を満たしながら、更にそれを加速させた。 
父親と男に違いがあるとすれば、それは単純にキレ者であったか否かであろう。家族を省みなかった父親は 
息子に処世術を教えることはなかった。息子は欲求こそ父親に勝るとも劣らないものを持っていたが、政争 
を勝ち抜けるほどの知識と知恵を持ちあわせていなかった。 
欲ばかりが先行した結果、その国内で時の権力者をも脅かすほどに巨大だった筈の名門はあっと言う間に没 
落した。 
天上から下界へと転落した男は、一人孤独と屈辱にまみれて極貧に喘いだ。 
父親と自分の違いを嘆き悲嘆に暮れて自害でもしようかというその時に、ドールズと出会ったのである。 

眼前の男は余りにも惨めで無様で、何よりも薄汚れていた。 
それが水銀燈は気に入らなかった。 

記念すべき最初のマスターがこんな様では、姉妹達に自慢できないじゃなぁい。 

最初に行ったのは、男の心に活力を与えることだった。 
下界というのは、その響きこそマイナスのイメージを持つが、国が豊かならそれなりに活気がある。 
上空からそれを見下ろしながら、水銀燈は初めてその能力を行使した。 
市場の活気、熱気を少しづつ皆から奪い、男に分け与えたのである。 

それからは住環境の改善や、薄汚れた貴族の服を脱ぎ捨て、装飾はないながらも清潔な衣服を手に入れたり 
等厳しく叱りつけながらも指導した。 
水銀燈に言わせれば 

「あなたみっともなさ過ぎるわぁ。不潔よ。無様よ。私のマスターなのだから、キチンとしなさい」 

ということらしい。 
男の方も、相手が神秘の存在であるが故に従うことに抵抗を感じなかったらしい。 

それからしばらく、二人の共同生活ともいえるものが続いた。 
外の世界というものに初めて触れた水銀燈は男を色々な場所へと連れまわし、男もそれを楽しんだ。 

…しかしそれもただの時間稼ぎにしか過ぎない。この物語に用意された結末は一つ。 
舞台は最悪の結末へと確実に近づいていくのだ。 

いつものように水銀燈を手提げのバックに入れて市街を歩く。(人目を避けるための苦肉の策だった) 
何気なく上に目を向けた男の視界に飛び込んできたのは聳え立つ城だった。 
下界から見上げる天上の城は、何よりも男の目には眩しかった。かつてそこを我が物顔で闊歩していたのだ。 
枯れ果てた筈の上昇志向が、僅かに燻った。 

思えば、この日が、水銀燈と男がまともな関係でいられた最後の日だったのだろう。 
この日を境に、男は夢を見るようになった。 

最初は、暗闇にポツリと白い点が浮いているに過ぎなかった。 
しかしその点は、日に日にこちらへ近づいてくるかのように大きくなった。 
その内に、白い点はただの点ではなかったことに気付く。 
それは他の誰でもない、間違いなく父親の顔だった。 

「…何故こんな所で燻っているんだ?我が息子よ」 

暗闇に浮かぶ顔が囁きかける。 

「その惨めな暮らしぶりはなんだ?情けない奴だ!お前みたいなモノが息子かと思うと情けなくなるわ!」 

罵倒と侮蔑。夢の中で吐き掛けられる屈辱の言葉は、日を追うごとに過激になり、男を苦しめた。 
最初の内は抵抗した。 
五月蝿い!黙れ!消えろ! 
そう叫べば父親の貌は跡形もなく消えた。 
しかし今では叫んでも喚いても消えない。それどころか貌だけだったはずのものが徐々に全身を現すように 
大きくなっていく。心が蝕まれていく。 
業を煮やした水銀燈に叩き起こされるまで悪夢から覚めない。 
水銀燈にしてみても、ようやくいくらかまともになったマスターが、出会った頃のように衰弱していくのを 
黙ってみてはいられなかった。何度も能力で活力を与えようと試みるが、しかし夢の世界は彼女の専門分野 
からは外れていたし、何より、水銀燈自身がまだまだ未熟だった。 

そして男は夢に現れる父親に屈服した。その頃には父親は全身を現していた。 
その身の至る所に宝石を散りばめ、豪奢な外套を翻し、壮年期の威圧を持った、男にとっては絶対に叶わない 
偉大なる父親だった。 

「その人形娘の力を使えばいいのさ。こんな小国に固執することはない。 
喜べ、息子よ! 
お前は世界を手にすることができる!」 
「やり方は覚えているか?お前は敵を蹴落とす時に何をした? 
その敵の妻を、金で雇った暴漢に襲わせて、それを口実に敵を蹴落としただろう! 
そして口封じにその暴漢も殺したな」 
「大臣の娘を無理矢理犯し手篭めにして、快楽で縛って、権力の階段を駆け登る。その愉悦を忘れたか!」 
「お前に処世術を教えたことはなかったな。今それを教えてやる。 
『女は喰らえ。快楽を手綱にしろ。好機は奪い取れ』 
今眼の前ににいる人形こそが、お前に残された最後の好機だ」 

父親の大きな両手が、萎縮している息子の顔を挟み込む。 
怯えた男の目に、父親の貌が映りこみ、 

「…奪え…!」 

「………………はい、父上…」 

心が、堕ちた。 

鞄を開く。 
少女人形が、器用に丸くなって眠っている。 
眠りは深い。 
そっと抱きかかえ、粗末なベッドに寝かしつける。 
ドレスのスカートを捲る。ショーツをそっと抜き取った。 
太腿の付け根。二つの球体間接の根元に、一筋のスリットがみえた。 
男は、どこか呆けた目でそれを眺め、そこに口付けた。 

―――その光景を見て声無く哄笑をあげる影が一つ。それは男の父親に酷似していた。 

下半身に奔るむず痒い様な、何ともいえない感覚に水銀燈は目を覚ました。 
視界には、いつもの部屋の天井が見える。 
鞄の中で眠っていたはずだ。 

「…っぁう!」 

突然全身が跳ね上がった。慌てて下半身を見やる。 
スカートが不自然に盛り上がり、その下で何かが蠢いていた。 
考えるまでも無い。マスターであると知れた。 

「な、何やって…!」 

怒りが一瞬で沸点まで駆け上る。 
怒鳴ろうとして、そのとき男が口戯を止め、スカートから顔を覗かせた。 

「…マスター?」 

目の焦点が合っていない。こっちを見ているようで、しかし全く何も見ていないような。 
両膝に手が掛かる。そのまま、勢い良く180度に股が開脚させられた。 
球体間接が、悲鳴を上げた。 

「ぎゃっ!」 

メキメキという嫌な感触とともに、軋むような痛みが水銀燈を襲った。 
悲鳴を無視して男は唾液に濡れた秘裂に再度舌を這わせた。そして無遠慮に嘗め回す。 
膝を押さえる手には凄まじい力が籠められていた。人間だったなら、手形のような痣が付くほどに。 

「ぐっ!…ぐがぁ…」 

痛い。あまりにも、痛い。堪えきれず涙が出た。水銀燈がこの世に生まれて、初めて流した涙だった。 
快楽のための前戯の筈である。しかしそれは許容限界ギリギリの痛みによって完全に打ち消されていた。 
男が秘裂をむさぼる間中、股関節に走る痛みにくぐもった悲鳴を上げながら、水銀燈はポロポロと涙を流した。 

―――部屋の隅でその行為を見ながら愉悦に浸る「影」。その存在に、未だ誰も気が付かない。 

膝の拘束が解かれ、秘裂への口戯がようやく終わった。 
水銀燈は虚ろな視線をを虚空に漂わせていた。見開かれた目からは未だに涙がポロポロと零れ落ちる。 

「…おわった…のぉ…?」 

自分の体を掻き抱いて、体を捩りながら水銀燈が呟いた。 
太腿に奔る鋭い痛みのために、上半身を捩る程度の抵抗しかすることができなかったのだ。 
その僅かな抵抗も空しく、男が水銀燈の上半身へと手を伸ばした。 
掻き抱く手を振りほどかれ、ドレスの襟元を掴まれ。 
力任せに、一気に、ドレスが引き裂かれた。 

「いやぁーッ!やだ、やだ、やだぁ!!」 

泣き叫ぶ。 
引き裂かれた生地を掻き抱くようにして胸を隠そうとする水銀燈の手が、ベッドに押さえつけられた。 
頂きに桜色の蕾を冠した薄い胸が男の眼前に晒される。 
股関節の痛みに加えて押さえつけられた腕からも新たに痛みが走る。 
恐怖。 
恐怖に、水銀燈の身体は震えた。ガタガタ ガタガタと。 
震える体を虚ろな目で見やる男は、その未発達な乳房に顔を埋めた。 
鳩尾に舌を這わせ、啄ばみ、唇を吸いつけて強く吸う。 
舌でなぞり上げながら、左の乳首を啄ばみ吸う。同様にして右の乳首にも。 
細い唾液の筋が水銀燈の震える体に筋道を創る。 
硬く強張っていた身体が、弛緩する。 
諦め。 
恐怖に支配された思考と身体は、既に震えることしか出来なくなってしまっていた。 
チョロチョロと。 
唾液に濡れた秘裂から、失禁の音が響いた。 
弛緩しきった身体への陵辱はその後も暫く続いた。 

男がズボンを脱ぐ。赤黒い怒張は興奮のためか、ドクンドクンと脈打っていた。 
まるで独立した意志を持つ何かの生物のようだ。 
それとは対照的に男の顔は何処までも呆けていた。 
虚ろな目は少なくとも、これからむさぼりつくすことになるだろう少女を見てはいない。 
まるで何かに操られているような――― 

開ききっていない秘裂に怒張を押し当てる。 
股関節に奔る痛みと、乙女の大切な場所に押し当てられた灼熱に、水銀燈の最後の理性が叫びを上げた。 

「…やだぁ…うぅ…それだけは、ゆるしてぇ…」 

怒張が、秘裂を滑る。穴を探ろうとするかのように。 

「もう、ぃやぁ!なんで…なんでこんなことするのぉ!」 

泣き叫ぶ。 

その時。 

―――選ばれたのさ 

部屋の隅。闇から、声が聞こえた。 

「だ、誰?!」 

水銀燈を組み敷く男の背後から、「影」が湧く。 

―――私は夢魔。サッキュバス、インキュバスの長にして、夢世界の魔王。 
   今宵、貴女とこの男は、私の為の尊い生贄選ばれたのだよ 

「そんなの、知らない…!はなしてぇ!わたしたちのことをはなしてよぉ…」 

―――それは出来ない相談だね。 
   幸運に思っていいよ…数ある牡と牝のペアの中から、貴方等だけが選ばれたのだから。 

さあ! 
断末魔の絶叫(喜びの悲鳴)をあげたまえ! 
それが、私の糧となる…! 

怒張が純潔を引き裂いた。 

「ぐぎいぃ!いあ゛あ゛あ゛ああああああ!」 

幼い秘裂に大人の怒張がめりこむ。 
最奥まで達したそれは、何の遠慮も容赦も無く律動を始めた。 

「あがっ!あぐぅっ!」 

突きこむ。抉る。掻きだす。 

―――ははは!それだ、その声だ!もっともっと絶望の悲鳴(可愛い鳴き声)を上げてくれ! 

その時。 

「………水…銀……燈…っ」 

男が、初めて、声を出した。 

「マスターっ?!…マスター…いた、いのぉ…も、やめ、てぇ…!」 

「…僕に…は……止め…られ…ない…」 

男の腰は無慈悲に動き続ける。 
左目。 
それまで、感情というものを宿さなかった男の両目のうち、左眼が理性を宿して水銀燈を見ていた。 

「…水……銀………こ…ろ………せ…」 
「な、に?…きこ、えない…」 

左眼に強い意志が宿った。 

「……僕を…………殺…せ…」 
「!!!」 

「やだぁ!やだ!いやぁ!」 

水銀燈は叫んだ。 
短い間とはいえ苦楽を共に歩んだ。 
この世に生を受け、初めて触れ合った人間。 
そんなこと、できない…! 

「できない!そんなのいやっ!できない!」 

泣き叫ぶ水銀燈を見下ろす左眼に優しい光が灯る。 
男の指にはめられた指輪が光る。 
水銀燈の心に、男の意識が流れ込んだ。 

ささくれて、ひび割れて、どうにも弱った心に、光を注いでくれた天使への感謝 
最後の最後で心の弱さにつけこまれ、こんな事態を引き起こしてしまったことへの謝罪 
言葉にできない。語りつくせない。清水のように溢れて尽きない、天使への愛情…! 

そして…さよなら 

「…あり…がと、う…さよ…なら…僕だけの…天、使」 

それが、男の最後の言葉。 
左眼の眼に灯った小さな火が、消える。 
秘裂を犯す怒張の存在も、もはや気にならなかった。 

「マスター!マスター!マスター!」 

叫ぶ。 
水銀燈の身体が光る。神々しい光がその身をつつむ。 
怒張がビクリと震え、精を吐き出した。 

「マスタ…マスタ――――ッ!!!」 

部屋が光に包まれ、水銀燈は意識を失った。 
夢魔は、光にあてられ、悲鳴をあげて、消滅した。 
跡形も無く。 

暗闇に包まれた部屋の中で、水銀燈は身を起こした。 
隣には抜け殻となった男の亡骸。 
全身に残る痛み。 

「…くすっ」 

「…クスクス…フフフ」 

「フフ…ハハハ…アハ、あははハハハはははハハハハハハハハハはははははは!」 

「ははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」 

「ははははははゲホッ!ぐふっ!けほけほ…」 

笑いすぎて、むせる。 

「けほ、けほ………………………………うぅっ」 

「うぅ…!うぁぁ…!」 

涙が零れる。 

「あうぅ…!あぐっ…!あぁぁぁ…!」 

ベットに散らばった服を掻き集める。 
痛む身体を引きずって、ベッドから飛び降りる。 
ずきりという痛みにバランスを崩し、床に無様に転げ落ちた。 
転げ落ちたその格好のまま床を這う。這ってたどり着いた先には鞄があった。 

鞄の中に転がり込む。 
鞄が閉じる。 
完全に閉じきろうとする直前。 

「うぁぁ…!わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」 

絶望の泣き声と叫び声が、響いた。 

ギシギシという音をたて、黒い扉が閉じる。 
舞台の幕は―――閉じた。 

「何て…何て、こと…」 

いつの間にか、真紅の目からは涙が零れていた。 

「これが、この空間の正体、ですか…」 

ラプラスの魔の歯切れもいつに無く悪い。 

「ここは、水銀燈のフィールド。彼女が自分を守ろうとするために創った。 
忘れ去りたい、しかし忘れられない記憶を閉じ込めるための隔絶した世界… 
これで、あの腐臭にも説明がつく…」 

その時、ラプラスの魔が、弾かれたように上を見た。 

「穴が閉じますぞ…さぁ早くここからでなければなりません」 

ラプラスの魔が自失している真紅のことを抱え上げ、飛ぶ。 
そして、この雪と氷の世界から脱出した。 

「彼女はここでのことを覚えてはいないでしょう。『世界』を一つ作り上げてまで封じ込めた記憶だ。 
それを貴女は知ってしまった。 
…貴女はこれから何を考え、彼女にどのように接していくおつもりですか?」 

ラプラスの魔は真紅に問う。 
その問いに、真紅は答えることができなかった。 

「水銀燈…」 
ポロリと。涙が、零れた。 

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以上です。 

最後に… 

銀様ゴメン 

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