「今日もまた同じ・・・・」
巴は今日もいつも通りに部活のため学校へ向かう。夏休みだというのに毎日変わらぬ
日常・・まるで呼吸する時と回数さえ全て同じではないかと思えてくる。
(私は縛られている―両親に、教師に、クラスメイトに、そして何より自分自身に・・・)
そう思うと疲れてくる。もう休みたい・・・と、巴の足は無意識のうちにある家に向けられていた。
「ごちそうさまーなのー」
元気の良い声がリビングに響く。桜田家では少し遅めの朝食が終わったところだった。
「ヒナは象さんでお花にお水をあげるのー」
雛苺は椅子から下りると庭の花に水をやるため象さんの如雨露を持ち駆け出していく。
そんな雛苺を真紅はお茶を飲みながら黙って、翠星石は呆れたように見つめていた。
ピンポーン♪
呼び鈴が鳴り、のりが返事をしながら玄関へと向かう。
「あらぁ、巴ちゃんいらっしゃい」
のりの挨拶に巴も「おはようございます」とお辞儀して答える。
「どうしたの?これから部活かしら?」
「・・・・」
のりの問いに巴は答えられず少し気まずくなった。
「トゥモエー!」
そんな巴を救ったのは雛苺の元気な声だった。雛苺は駆け出して巴に抱きついた。
「雛苺、元気にしてた」
「うん、してたしてた」
雛苺が答えながら巴に甘える。その仕草が巴にはとても愛らしく自分を癒してくれる。
のりへの問いに答えぬまま巴は雛苺を抱きながら桜田家にお邪魔した。のりもどこか不審に思い心配しながらもリビングに通しお茶の用意をした。
「トモエ、今日は部活はいいの?」
「え、あ、今日は大丈夫だから・・・・」
雛苺の質問に曖昧に答える。この可愛いドールを心配させたくなかった。
そこへようやく目を覚ましたジュンがリビングに顔を出した。
「おはよう」
眠い目をこすりながらジュンが挨拶する。
「おはよう」とそっけなく答える真紅。
「遅いですぅ、もう9時近いですぅ、とっとと起きやがれですぅ」
翠星石が相変わらずの口調で朝から毒づく。
それをとりあえず無視して窓の方を見ると雛苺が巴に甘えるように遊んでいた。
「あ、あれ来てたんだ・・・」
巴を確認したジュンがつぶやいた。
「あ、ジュンなのー、ジューンおはようなのー」
雛苺が朝の挨拶をしながらジュンに抱きついた。
「おはよう」巴がジュンをみて挨拶する。
「え、あ、お、おはよう」
雛苺を下ろしながら戸惑ったようにジュンは挨拶を返した。
(なんでここにいるんだろう・・部活なんじゃないのか・・・)
制服を着て竹刀も持っている巴を見てジュンもおかしいと感じていた。
だが、まあいいかと思うとテーブルについて勝手に朝食を摂りはじめる。
その間も巴は雛苺を相手に遊んでいた。ジュンはチラチラとその様子を見ていたが巴の表情は笑顔でいるもののどこかに翳を感じていた。
「は〜いみんな〜、そろそろ準備してね〜」
掃除と洗濯を終えたのりがみんなに呼びかけた。
「ってなんの準備だよ?」
「今日はね〜みんなでお買い物に行くのよ〜、ジュン君もどう?」
「・・僕はいいよ、家にいる」
「引き篭もりのチビ人間、たまには外へ出やがれですぅ〜」
「うるさいな、お前らだけでいけばいいだろ」
「仕方のねえやつですぅ〜、ヤドカリみたいにずっと閉じこもっていればいいですぅ〜」
「な、なにぃ〜」
「まあまあ翠星石ちゃん、ジュン君は勉強もあるし、真紅ちゃんは行くわよね?」
「私?私も別に行く気はないわ」
真紅の答えは呆れるほどそっけない。
「チビ人間と同様に真紅まで引き篭もるですかぁ!」
「あの〜真紅ちゃん、今日ここでこんなのもあるんだけどな〜」
翠星石を制してのりがデパートのチラシを広げて真紅に見せつける。そこには11時より屋上でくんくん探偵ショーが行われるということが載っていた。しかも先着50名様にはくんくんとの記念撮影までできると書いてある。
「何でそれを早く言わないの!のり!翠星石!雛苺!早く準備なさい!」
真紅は豹変としか言いようのない態度で全員を促した。
「そ、それじゃあジュン君お留守番お願いね」
「あ、ああ行ってらっしゃい・・・」
そこでのりとジュンはようやく気が付いた。巴のことを・・
「あ、あの巴ちゃんはどう?ヒナちゃんも行くし・・・」
「え、わ、わたしはいいです」
「いいですって、じゃあ・・」
ジュンが言いかけたときのりが助け舟を出した。
「じゃあ巴ちゃん、ジュン君といっしょにお留守番してくれる?」
「は、はい・・・」
巴がのりの提案に承諾する。
「え、あ、ちょっと・・・」
ジュンが戸惑い、言葉を失う。
「のり、何をしてるの早く行くわよ!」
真紅は最早くんくんのことしか頭にないようだ。のりを急き立てる。
「じゃあジュン君、巴ちゃん行ってきま〜す」
「トモエおみやげ買ってくるね!」
「しっかり留守番するですよ〜、あと勉強に気を抜くなですぅ」
ドアが閉まり4人は出て行った。
真紅たちを見送ったあとジュンと巴はリビングのソファーに座っている。だが2人の間に会話はなかった。見送ってまだ20分も経っていないのに2時間くらい経ったような気がする。何でこうなったんだろう?ジュンは話術のない自分に苛立ちながら考えていた。
「ねえ?」
そんな思考を打ち破ったのは巴の声だった。
「桜田君は普段彼女とどんな話をしてるの?」
「え、彼女・・・真紅のこと?」
ジュンの言葉に巴は無言でうなずいた。
「べ、べつに真紅とはたいした会話なんてしてないよ。ただ真紅から紅茶を淹れろとかそんなこと言われて紅茶を淹れて、その紅茶の味やお湯の温度に真紅がまたいろいろケチをつけて、それに僕が応酬してるだけで・・・」
ジュンは日常をありのまま巴に語った。別に虚構もなければ誇張もない。つまらない会話だろと巴に言った。
「・・羨ましい・・・・」
ジュンは戸惑った。自分の答えた言葉の中にそんなものがあっただろうかと自問する。
「桜田君、彼女の話で何だかイキイキしてた。だから・・・・・桜田君、彼女のこと好きなんだね」
「え、な、なに言って・・・」
「隠さなくても解るの・・・そうやって変わっていってるんだね、桜田君は・・・」
「・・・わたしは変わらない・・ううん変われない・・だから羨ましい・・・」
巴はそう言いながら目にうっすらと涙を浮かべてジュンの胸に顔を埋めた。
ジュンはただ戸惑っていた。幼馴染みがいつも気丈に振舞っている彼女が自分の胸に
顔を埋め涙を流している。そしてどうしていいか分からない自分が疎ましかった。
「・・・わたしは変われない・・それならいっそ壊れてしまいたい・・・」
ジュンの胸の中で巴は震えながら泣いている。まるで心が折れてしまったかのように。
「か、柏葉・・変われるよ・・変われるから・・そんなこと言うなよ・・」
陳腐な慰めだが、誠意のこもった優しい言葉だった。
「・・変えてくれる?・・桜田君が変えてくれる?・・・」
巴の瞳をジュンはしっかりと見据え頷いた。
「・・キスして」
その言葉とともに巴が瞳を閉じた。ジュンは巴を優しく抱きしめながら唇を重ねる。
巴も唇が重なった瞬間ジュンを強く抱きしめていた。
お互いに唇を離すと2人はお互いの瞳を見て頷き、ジュンの部屋へと階段を上っていった。
ベッドに巴を寝かせ制服を脱がし、ジュンも服を脱いだ。
「本当にいいの?」
ジュンの問いかけに巴は頷き、ジュンに微笑みかける。ジュンはもう1度巴にキスすると
小振りで綺麗な胸に触れた。
「ん・んあ・はあ・・・」
ジュンの指が胸を這い回るたび巴は静かにうめいた。さらに舌で舐めるとその声は少し大きくなった。そしてジュンは巴の乳首を吸い軽く噛むと、
「ひゃあ!・あああ・・」
巴は大きく仰け反ってうめいた。そのあとには荒い息遣いが絶え間なく続いた。
(え、もしかしてイッちゃったのか)
ネットでしか性の知識のないジュンは巴の感度の良さに驚いた。
「柏葉、だ、大丈夫か?」
「・・うん、ごめんなさい、わたしだけ・・・」
「あ、いやいいから、少し休む?」
「うん、桜田君、隣に来て」
ジュンは巴の隣で横になると、巴を気遣うように手を握った。そんな気遣いができるほど
ジュンが変わったことに巴は少し真紅に嫉妬した。
やがて巴は体を起こすとジュンにキスして「そのままじっとしてて」と囁いた。
巴の指がジュンの体を撫で回し、やがて最も敏感なところに触れた。巴はそれを優しく握るとゆっくりと上下に動かし始めた。
「え、ちょっと柏葉?」
ジュンの声に巴は微笑みで返すと、ジュンのモノを咥えこんだ。驚くジュンを上目遣いで制しつつたどたどしくも懸命にしゃぶり続ける。
「桜田君、気持ちいい?」
巴の問いにジュンは答えられなかった。敏感なところを刺激されうめくのが精一杯なのだ。
そんなジュンを巴は愛しく思った。そして手放したくない気持ちになった。
「柏葉、もう離れて、もう僕、あぁ!」
最後まで言い終えぬうちにジュンは巴の口の中に射精した。大量の精液が巴の口内に侵入する。巴はこぼさぬように一生懸命ジュンの精液を飲み下していく、最後の尿道に残ったものまで吸出し、丁寧に舐めまわしていった。
「か、柏葉、ごめん大丈夫?」
「これでおあいこだね」
巴はそう言ってジュンに向かって微笑んだ。
桜田君、まだまだ元気だね」
あれだけ射精したにも関わらずジュンのモノは萎えることがなかった。
巴はジュンの隣に横になるとジュンの耳に囁いた。
「・・・・して・・」
ジュンは起き上がりながら巴の顔に優しく触れた。
「柏葉、いいか?」
「うん来て桜田君・・・」
ジュンはなるべく乱暴にならないように巴と繋がっていく。巴も初めての痛みを表情に出さないようにお互いに気持ちを合わせていた。
「痛くない?大丈夫?」
「うん、大丈夫・・動いていいよ」
巴のその言葉にジュンはゆっくりと動き始める。やがてその動きは早さと激しさを増していった。巴のほうも痛みから快感へと感覚が変化していった。
「か、柏葉・・柏葉・・・」
「桜田君、桜田君・・」
お互いの名前を呼びながら、抱きしめあう2人、まるでお互いの足りないものを補い合うかのようにお互いを求めていった。
「か、柏葉、僕また・・・」
「来て桜田君、私の中に・・」
ジュンのモノが膨張し巴の中へ流れ込んでいった。2人は心まで1つにするかのようにまた抱きしめあった。
「桜田君」
「なに」
「ありがとう」
その言葉には感謝以外の意味が含まれていた。ジュンにもそれが理解できた。
「着替えよう、そろそろ姉ちゃんたちが帰ってくるから」
ジュンが優しく囁き、2人はいっしょにシャワーを浴び服を着替え、リビングに向かった。
「ただいま〜」
「ただいまなの〜」
「いま帰ったですぅ〜」
「ただいまジュン」
やがて4人が満足した表情で帰ってきた。
「おかえり」
ジュンが巴とともに4人を出迎えた。
「もうすごかったわよ〜いいお買い物ができたわ〜」
のりが能天気と思えるような感想を述べる。
「どうジュン、これを見て」
真紅はくんくんとの2ショット写真をこれでもかと言わんばかりに自慢する。
「ああやっぱり私とくんくんは見えない赤い糸で結ばれているのね」
さらにひときわ大きく拡大した写真を額縁に入れリビングに飾ろうとしていた。これでは金糸雀を笑えないだろうとみんな思ったが口には出さなかった。
「やっぱり行って良かったですぅ、チビ人間はしっかり留守番してたですかぁ」
「あ、ああしてたよ」
「次は翠星石がきちんと案内してやるから、ついて来いですぅ」
「トゥモエー、これおみやげなのー」
雛苺が手渡した袋には苺大福が入っていた。
「トモエいっしょに食べよ」
「ありがとう雛苺」
「うん!」
「桜田君も食べるよね」
「え、あ、うん食べるよ」
「わーいジュンもうにゅーなのー」
巴は雛苺を抱きながらジュンの手をしっかり握り締めた。
もう離すことのないように・・・ずっといっしょにいるために・・・
END