「これでいいか?」 
 一応これなら着れるだろうという古着を探し出し、見せてみる。 
「んー、ちょっと恰好悪いけど、それでいいわ」 
 首を傾げ、頷く。やっぱりこんな服は嫌なんだろうなぁ。黒に赤でHAPPYなんて服。 
 その色合いでは幸せなど全く感じさせない。コレを作った奴はどういうセンスをしてるんだ。 
「ごめんな」 
 謝って、その服を水銀燈に渡す。 
「どうして謝るの?」 
 少し驚いた顔をして水銀燈が言う。そんなのどうしてか、って当たり前じゃないか。 
 僕が水銀燈の服に精液をかけて、しかもこんなダサイ服を着せることになってるんだから。 
「僕のせいだからな。今度替えの服作ってやるよ」 
「あら、私は気にしてないわよぉ?でも、ジュンが服を作ってくれるなんて嬉しい」 
「あんまり期待するなよ」 
 フフと微笑む水銀燈。前まではこんな表情、見せたことがなかった。 
 愛おしい。頬を染めるその瞬間は人形を思わせない。まるで人間だ。 
 彼女が人形だなんて思えない。それは人形を愛してしまったという僕の現実逃避か。 
 いや、そんなことはない。きっと、彼女は―― 
「人間だよ」 
「何か言った?」 
 着替え中の水銀燈が僕に振り返る。胸が露出したままだ。 

「いや、なんでもないよ。それより早く服着ろ」 
「何よぉ。あんなコトした仲なのに照れ屋さぁん」 
 さっきより胸を強調して見せつけてくる。目のやり場に困ってしまう。 
「は、早くしろよ」 
「はぁーい。照れなくていいのに」 
 するりするりとHAPPYシャツを着ていく。何だかおかしい。もぞもぞと動く黒い塊にしか見えない。 
 着終わった水銀燈は更におかしい。ヘッドレスとその服は全くもってセンスレス。 
 思わず吹き出しそうになる。 
「むー、これは恰好悪いわねぇ」 
「ごめんな。じゃあ、それ洗ってくるから」 
 黒いゴスロリ服を持って部屋を出る。とりあえず下の洗面所で石けんをつけて洗えば大丈夫だろう。 
 洗面所の蛇口を捻り、ゴスロリ服のスカート部分を濡らす。ツンと精液の匂いが少し鼻をついた。 
 石けんを手につけ、匂いが強い箇所をゆっくり揉んでいく。泡が立ち、黒い布地を白く染め、石けんの香りが漂う。 
 それを洗い流し、ゆすぐ。多分、これでなんとかなる。 
 水銀燈の待っている自分の部屋に戻り、乾かしに取りかかる。 
「大丈夫なんでしょうねぇ?」 
 不安そうな瞳がさっきまでの自信を消し去っていく。 
 僕をそんな目で見ないでくれ。 
「乾いてアイロンをかければ、なんとか……」 
 ほら、こんな曖昧な事しか言えなくなる。 

「なんか不安だわぁ」 
「ご、ごめん」 
「まあ、失敗しててもジュンならすぐに直してくれるわよねぇ」 
「そんなプレッシャーって……」 
 焦った僕を水銀燈はフフフと笑う。僕は水銀燈に弱い。痛感する。 
 綺麗で、美しくて、時折見せる大人の魅力。そんな彼女に僕は敵わない。 
「でも、今日はずっとこの服なのよねぇ?」 
「うん。そうなるけど」 
「何だかいやらしくない?こういうのって恋人の部屋に泊まった彼女みたぁい」 
「ばっ、なっ、何!?」 
 いきなりそんな事を言われたら困る。勝手に顔が熱くなってしまう。 
「アハハ。ジュンったら可愛いー」 
「う、うるさい。水銀燈が」 
「えい。襲っちゃえ」 
「う、うわ」 
 言葉のままに水銀燈は僕を押し倒した。 

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次でそろそろエロに突入!……の予定 
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