「ネジ・・・、巻いてちょうだい・・・」 

僕は真紅の体にある、自分がドールである事を示す鍵穴に、さっきの行為と似た仕草で鍵を挿した 
キリ・・・キリ・・・ 
旧いゼンマイ仕掛け特有の気難しさを掌で探りながら、ゼンマイの巻き止まりを探りながらそっと・・・ 
真紅はゼンマイを巻かれ、僕に背後から鍵で貫かれ掻き回され、その心地よさに目を細めている 
キリ・・・・キリ・・・・・ 
掌に伝わる感触、 
僕は黄金の鍵を抜いた、偉そうな彫刻の入った鍵・・・真鍮丸棒とヤスリで40分で複製できそうな鍵 
真紅は鍵を抜かれて少しの間、呆然としてる、さっき別の物を挿れて抜いた直後とよく似た顔 
「ジュン・・・よかったわ・・・素敵よ・・・あなたは、わたしへの奉仕がうまくなったわ・・・」 
人とドール、男と女、真紅も僕も何かを間違えている、僕らは間違えた答えを出して偉そうにいる 
「真紅、これをあげるよ」 
ベッドの下に脱いだジーンズのポケットから、掌に収まるようなプラスティックのミニカーを出した 

真紅はプラスティックが嫌いだ、合成樹脂の元祖であるセルロイド、型に流し込んで人形を作る材料 
セルロイド人形が世に出てきた時、人形に魂を宿すことの出来た時代は終わった 

「ゼンマイ仕掛けの欠点は、巻きすぎるとあっさり壊れるってとこだね」 

僕が教えると真紅はミニカーを床に置いて後ろまで引いた、中のゼンマイが巻かれる、鍵もいらない 

ゼンマイが巻き止まりまで巻かれると、ゼンマイ自体が香箱の中で回ってそれ以上巻かれない 
刻み目をつけた香箱がチキチキチキチキ・・・・という感触を手に伝える事で、巻き止まりを使用者に伝える 
とてもシンプルで壊れる事も無い、賢いゼンマイ仕掛け、真紅の脇をくすぐり、手を離させた 

ゼンマイ仕掛けのミニカーは、部屋の床を疾走した、人間程でないがどのドールより足が速い 

「真紅、君より賢いゼンマイ仕掛けで、君より速く走る、学ぶべき所が多いと思うよ、350円だ」 
ミニカーを見つめる真紅の顔は見えなかった、僕らはいつか、間違いに気づくことが出来るんだろうか 

翠星石と蒼星石が入ってきた 
「こら!チビ人間!遊んでやるから付き合うです・・って・・・アーっ、二人で何してるですか?裸で! 
わかった!真紅と二人でお風呂ごっこしてたですね?イイ年しておままごとなんて・・・」 
翠星石、おまえは物を知らなさすぎる 
「ジュン君・・・真紅も昼間っから・・・何と言うか、若いというか・・・お盛んなのは結構ですが 
そのー・・・気をつけて、色々、気をつけて、その、ちゃんと着ける物を着けて励んだほうが・・・」 
蒼星石、お前は物を知りすぎる 
部屋に乱入しようとする翠星石と、部屋に漂う独特の饐えた匂いに足が止まる蒼星石は 
翠星石が何かを踏みつけた拍子に二人揃ってつんのめった 

「もぅ!チビ人間の部屋はちらかっててイヤですぅ!まったくこんなオモチャを・・・」 
「翠・・・ちょっと貸して・・・・!それは!!」 
翠と蒼は足元から拾い上げた速く賢い小さなミニカーを指でつまみ、その裏を見ると同時に声を上げた 

「幻の・・・・・・豆ダッシュ!」 

間違えるな、残念ながらそれはQセットに入ってた、再販の「偽マグナム」だよ 

おまえらと同じニセモノだよ、間違えるな 

ミニカーも、ドールも、家も学校もニンゲンも何もかも明日壊す 
全てを壊して、全てを捨てて、全てを清算する 

僕はもう、間違えない 

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