先に謝っときますが、今回エロ分がほとんど有りません。
とりあえず落ち回避の為、書きあがり分うPします。
それで今後のうPをOKかNGか判断して下さい。勝手でゴメス…
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日曜の昼下がり。
のり ジュン 翠星石 真紅は、四人そろってテレビを見ていた。
タイトルは懐かしの昭和歌謡曲全集。
日曜にはよくあるタイプの特集番組で、
珍しくのりが番組表を見て、その番組を見たいと言ったのが切欠だった。
ジュンもそうだが、のりは平成生まれ。昭和の曲に興味が湧いて仕方が無かったらしい。
リビングのソファーには四人に加え・・・
永遠ともいえる眠りに付いた雛苺と蒼星石が、のりと翠星石の横で目をつむり、静にその身を二人に預けていた。
「この国の歌はまだ良く分からないけれど・・・
今の良く分からない音楽や歌詞を使った歌よりも、いいものだわ」
その言葉からは、珍しく真紅がくんくん探偵以外の番組に気を入れているのが伝わってくる。
確かに情感を直接歌詞に書き上げ、メリハリのある曲調に乗せて歌う歌手の歌唱力は
今の歌手には無い力が有り、心に直接訴えかけてくる魅力があった。
「うん・・・今の歌より随分はっきり声が通ってるし、何か・・・心に響くよな」
J−POPや売れ線の歌手の歌も好きなジュンであったが、
今まで殆ど耳にする事が無かった昭和の歌謡曲が持つ魅力に、不本意ながら心を奪われていた。
「このニホンという国には演歌と言うのもあるですが、あれも中々いいものですぅ」
「あらぁ、翠星石ちゃん随分渋いジャンルの歌が好きなのねぇ」
「へぇ〜・・・おばはん臭いやつだな(ニヤニヤ)」
「ジュ、ジュン君っ!?」
「!な、なんですぅってぇー!もッぺん言って見やがれです、このチビめがね!」
「静になさい翠星石、ジュンはあなたが好きだからからかってるだけなのだわ」
「なっ!?」
「なな、なに言うんだよ し、真紅!」
「はいはい二人とも。仲良しさんなのは判ったから、歌の続きを聴きましょ?ね?」
「姉ちゃんまで!違うっての! だ、大体誰がこんな性悪悪魔人形なんか好きになるかよっ!」
「なな何言うですかのりはっ! だだだ、誰がこんな野暮ったいチビ人間なんぞ好きになるかですっ!」
赤い顔をして抗議するジュンと、真っ赤な顔をしてまくし立てる翠星石の声が
見事にシンクロしていたのが仲良しさんのいい証拠であるが、
それには突っ込まず、のりと真紅は再びテレビの画面に目を向けるのだった。
やがてテレビに映った歌手を見て、雛苺の手をつないでいたのりが黄色い声をあげた。
「きゃー♪ やっと出てきたわ〜♪」
「はぁ? ただのおばさんじゃん・・・姉ちゃんそんな趣味があったのか?」
「なに言ってるのジュン君!加藤登紀子さんよ、加納登紀子さんっ! 百万本のバラの花の加納登紀子さんじゃない!」
「知らないよそんなの!ってか何だよその百万本のバラって?」
「え?えーっとぉ・・・その、と、とにかくお姉ちゃんこの人の歌がききたくて・・・」
自分達の母親が好きだった曲とはさすがに言い出せないのり。
「聴けば判るのだわジュン。バラと言うからには、きっといい歌なのだわ」
そこに見計らって真紅が助け舟を出した。
「百万本のバラの花ですか・・・」
「?どうしたの翠星石」
「!な、なんでもないですよ・・・」
少し口ごもる翠星石の態度に、少しいぶかしがる感じでそう聞いた真紅。
その真紅から目線を外した翠星石は、目をつむり自分の肩に頭を預ける蒼星石の左腕をそっと掴むだけだった。
真紅は少し気になったものの 『・・・そう?』 と言って、画面に目を向け直した。
テレビから流れるその歌詞の内容は、
貧乏な絵描きが女優に恋をして百万本のバラの花を贈るが、結局片思いで終わったという物だった。
しかしその歌手の年齢を重ねた素晴らしい歌唱力と、悲しくも情熱的な曲にいつの間にかみんな聴き入っていた。
「あぁ〜〜、お姉ちゃんもこんなに想われて、百万本のバラを受け取ってみたいなぁ・・・」
「・・・なんで僕の方を見るんだ?」
「えぇーー!ジュン君くれないのぉ〜〜?」
「だれがやるかっ!大体そういうのは恋人同士がやるもんだろっ!」
「お姉ちゃん、ジュン君ならいいわよ?」
「だからっ!」
こう言う会話を何気に交わせるまでになった姉弟のやり取りを、
微笑ましい視線で見ていた真紅の目の前を、翠星石の腕が過ぎてゆき
リモコンを持ったかと思うと、その指先で『 ブチッ 』とテレビの電源を切ってしまうのだった。
「?!翠星石、まだみんな見ているのよ!?」
「おいコラ、性悪人形っ!何勝手に切ってるんだよ!」
「翠星石ちゃん?どうしたの一体?な、何か気に入らないことでもあったかしら?」
翠星石はそれらの批判や問いかけには答えず、
蒼星石の身体からそっと自分の身体を離してソファーを下り、
「観ていたかったら、お前らだけで観ていやがれです・・・」
そう言って部屋を出て行ってしまった。
「おい 何だよそれ!」
「よしなさいジュン・・・」 「いいのよジュン君・・・」
ムッとしたジュンはすぐ後を追おうとしたが、真紅と のりに止められ、仕方なく諦めた。
結局翠星石抜きで番組を見終えた三人。
翠星石にあんな態度を取られた為、半ば見流し状態ではあったが
それぞれの心中は、翠星石の態度の真意で膨らんでいた為、仕方が無い。
翠星石は一体どういうつもりでテレビの電源を落としたのか?
このままでも埒があく訳も無いので、のりはジュンに翠星石の様子を見て欲しいと頼み、
ジュンも本来なら嫌がって断る所だが、前出した状況の為、二つ返事でOKをした。
が、真紅は・・・我関せずといった面持ちでソファーで紅茶をたしなんでいた。
「・・・お前は行かないのか、真紅・・・仮にも自分の姉さんだろ、翠星石は」
「あなたはこの真紅のミーディアムであると同時に、翠星石のミーディアムでもあるのよ、ジュン」
「だから何だよ?」
「・・・女心をもう少し理解しなさい」
「・・・何だよそれ。じゃあお前は何だよ?翠星石の妹じゃないのか?!」
「ジュ、ジュン君、お願い。翠星石ちゃんの様子を見てきて。ね?」
翠星石の気が自分に向けられているとは知らない、
まだまだ少年のジュンには、真紅が何を言いたいのか理解できず声を荒げかけたが
のりのフォローで渋々リビングを後にした。
コンコン
(自分の部屋に入るのに何でノックしなきゃなんないんだ・・・大体なんで僕がこんなに気を使わなきゃ・・・)
心の中でぶつぶつ文句を言いながら、ジュンは部屋のドアを開け、中に入った。
「おい、性悪人形。何があったか話してみr・・・」
部屋にはいつもある筈の、翠星石のトランクが無かった。
「・・・ちょっと待てよ・・・なんで出て行かなきゃなんないんだよあいつは・・・」
・
・
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結局、翠星石がトランクごと帰ってきたのは夜遅くで、
のりが心配して尋ねても口ごもるだけで特に何も答えず、ジュンがふてくされながら尋ねても
関係無いと言うだけであって、妹の真紅には目を合わせないようにしてジュンの部屋に向かい、そのまま眠ってしまった。
「・・・なぁ真紅・・・」
「何・・・」
―― リビング ――
ジュンの淹れた紅茶を飲む真紅とジュン。キッチンでは食器の洗い物を片付けるのり。
三人はそれぞれの思案顔で翠星石の事を考えていた。
「・・・僕が悪いのかな・・・?」
「どうしてそう思うの・・・?」
「・・・判らない・・・けど、あいつのなにか・・・何かにもう少し気づいてやれない僕が悪いのかなって・・・」
「・・・そうね。あの子がただの我がままで皆の楽しみを奪う事などしないのは、この真紅が一番理解しているわ」
「う・・・」
「ドールにも人間と同じ、悩みもあれば・・・悲しみもあるの。あの子はきっと・・・昔を思い出したのだわ・・・」
「昔の事・・・?」
「そう・・・庭師のあの子の側にはいつも蒼星石がいたわ。特に庭園に咲く薔薇の手入れをする時は・・・幸せそうな笑顔と一緒に・・・ね」
「蒼星石の事を・・・真紅は、前に一緒の時間に目覚めた事があるんだ・・・あの二人と・・・」
「お互いが各地に別れさせられる前の・・・話よ」
話はそこで少し途切れを見せた。
リビングの天井・・・自分の部屋のある辺りを見上げ、ジュンは呟いた。
「なぁ・・・真紅。僕がしてやれることって・・・あるかな」
「・・・ええ。貴方にしか出来ない事がきっと・・・あるわ」
真紅は、我が子を見るような優しい視線をジュンに向けながらそう答え、
ジュンはその優しい声に振り向き、
「・・・翠星石には・・・笑っててもらいたいもんな」
照れくさそうにそう言うのだった。
洗い物をしながらそうの一連のやり取りを聞いていたのりは、そっと嬉しそうに微笑みながら
最後の一枚の皿を洗い終えながらこう思うのだった。
弟は確実に変わってきたと。 この不思議なドール達のお陰であると。
「・・・お茶入れたから・・・こっちきて飲めよ、姉ちゃん」
「うん・・・ありがとう、ジュン君」
靄(もや)のかかる視界。
誰かの声が聞こえる。
翠星石の視界から靄が取り払われる。
誰かの顔が自分の顔を覗き込んでくるのが判る。
ああ、この視線は、この香りは、この暖かさは・・・
(やっと起きたね、翠星石)
んん、蒼星石・・・もう朝ですか?
(なに言ってるのさ くすくす)
・・・ああ、そうでした、私、蒼星石の膝枕でお昼寝してたんでしたね。
(そうだよ、お姫様。まだ目が覚めていないようだね?)
そうですよ・・・だからちゃんと・・・目覚めさせて欲しいです。
(もぅ・・・しょうがないなぁ くすっ)
私は目をつむりながら蒼星石の首すじに手を回す。
蒼星石は私の身体を優しく抱いてくれる。
そして微笑みながら目をつむり、私と唇を重ねてくれる。
私の舌が蒼星石の口の中で彼女を探し、彼女も私を探し答えてくれる。
目覚めの陶酔に導こうとする彼女の舌と、甘美な陶酔に酔いしれたい私の舌。
でもいつも私の負け。
私の誘いを上手く交わして、私を目覚めに誘い出す。
そう・・・いつも私の口内から・・・私から・・・上手くさよならして行くんですから・・・
(・・・ぷぁ・・・さぁ、目を覚まして。僕の大事なお姫様・・・)
はふぅ・・・いつもそんなことばっかり言って・・・ずるいですよ。
そして私達は、庭園の薔薇の手入れをしながら話をする。
幸せです・・・この時間がずっと続けばいいのに。
(そういう訳にもいかないよ。もう少ししたら僕達も、このフィールドを後にしなくちゃならないんだから)
もぅ!ラプラスの言う事なんかほっとけばいいんです!
(だけど・・・金糸雀や水銀燈・・・それにこの前誕生したって言う子はもう・・・出てるんだよ?)
お前は心配しすぎなのですよ。目覚めや出会いが全て重ならない限り、アリスゲームは始まらないのですから。
(・・・姉さんは、翠星石はお父様に逢いたくはないの?)
もちろん逢いたいですよ?でも今は・・・この時間を大事にしたいです。
(・・・ふふっ、翠星石らしいね)
それに、誰があの子達を最後まで見送ってやれるですか?最後にここを出るのは私達でいいのですよ。
(翠星石・・・優しいね、君は本当に)
な、何言うですかこの子は・・・
(ふふ。 さぁ、手入れも終わったし、部屋に戻ろう。真紅と雛苺が待ってるよ)
そうですね・・・あの子はほんとお茶の時間にうるさいですから♪
(早くしないとアフタヌーンティーのお茶菓子、全部雛苺に食べられちゃうものね♪)
騒がしくも楽しいお茶のひと時。
こうしてると、いずれ私達が争わなければいけないなんて・・・とても思えなくなる。
そして私達はお茶の時間を終えて、それぞれの時間を過ごし始める。
窓から下の広い庭園には、私と蒼星石が手がけた色とりどりの薔薇達が、
優しい風にそよがれて、楽しそうに揺れているのが見える。
こうして見てると、本当に薔薇達が活き活きしてるのが良く分かるですねぇ。
(姉さんの如雨露と、僕の鋏であの子達を手入れしてあげてるから、それに答えてくれてるんだよ)
あの薔薇全てに囲まれて・・・幸せな日々を暮らせれば、みんな争うことなんて・・・
(・・・!そうだ。待ってて、翠星石はここに居ててね!)
そういうと蒼星石は私を窓辺に残して居なくなる。
その言葉どおりしばらく待っていても、あの子は戻ってこない。
少し不安になってあの子の名前を呼ぼうとした時、頭の中に声が響いてきた。
私と蒼星石が鏡映しの双子だからだろうか、時々こういう事が出来る。
(翠星石・・・お待たせ)
!どこです、蒼星石?!姿を見せるです。
(そこから廊下に出て。・・・そう、そのまま真っ直ぐ。その部屋に入って・・・)
もう・・・姉をからかうですか?入ったけど、ここはラプラスが趣味で集めた油絵のキャンパスしかない部屋ですー!
(そう怒らないで、僕のお姫様。じゃあ、その窓のカーテンを開けて、窓から下を覗いてみて)
まったく、急に居なくなったと思ったら何を一体企んでるのですか・・・ ・・・!!?
その窓の下には・・・
私の視界には・・・
色とりどりの薔薇達が・・・
庭園一面を埋め尽くしている薔薇達が・・・
私の瞳に映りこんできた・・・
その中心には・・・
私の妹が・・・
蒼星石が・・・
笑顔で両手を広げ・・・
私を見つめてくれていた・・・
こ・・・これは?・・・なんでこんなに・・・
(僕からのプレゼントだよ、翠星石・・・薔薇達にお願いして集まってもらったんだ)
なんで・・・急にこんな事を・・・
(これが僕の今の気持ちさ、翠星石。 僕は君が大好き・・・君の優しさが大好き・・・)
蒼星 石・・・
(だから、百万本の薔薇の花を・・・貴女に捧げます。 枯れる事のない貴女の優しさに・・・薔薇の花を捧げます)
そ ぅ 蒼星・・・石・・・
(いつまでも・・・いつまでも一緒だよ翠星石。 僕が争いから守ってあげる・・・)
蒼星石っ!
私は窓から身を乗り出し、蒼星石に抱きついた。
フィールドの浮遊力が柔らかく私の身体を蒼星石の身体まで送り届け・・・
蒼星石は私の身体を優しく包み込んでくれた・・・
涙が溢れる。嗚咽が洩れる。
私の妹は、これほどまで私を愛してくれて・・・包み込んでくれる。
蒼星石 蒼星石っ!・・・わ、わたしも・・・私も 大好き っ・・・で す ぅ・・・
(僕もだよ・・・姉さん・・・僕の大好きな・・・翠星石 僕が守りたい・・・お姫様)
私の視界が再び靄に包まれる。
この時間が再び・・・閉じられる。
私の想いが・・・閉じられてゆく・・・
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こんな感じですいませんです、ほんと…