「ジュン、紅茶を淹れて」 
 いつも通り、真紅の言いつけでジュンは台所に立った。 
 今日は翠星石が蒼星石の所に泊まると家を留守にしている上、のりがスペシャル花丸ハンバーグ 
に挑戦するとかで、雛苺も買い物について行ったおかげで今日は珍しく真紅とジュンの二人きりだ。 
 呪い人形が少ないとこんなにがらんとするのか。そんなことを思いながらも、翠星石の悪戯も雛 
苺の騒動もないと安心しきったジュンは呑気にテレビを見ながらお湯を沸かしていた。そのせいか、 
こぽこぽ、とお湯の沸く陰で囁きあう声にジュンは気づかなかった。 
「ほうら、一人でしょう?ちょっと忍びこんでみたらぁ?」 
「ほんとに今日はチャンスかしら♪真紅はちょっと怖いけど、一人なら何とかなるかしら♪」 
 サッシの隙間から黒い羽が一枚入り込んだ。羽はそのままサッシの鍵を開けてしまう。 
「ほら、あれに入れてみたらぁ?真紅が慌てる顔、早くみたいわぁ」 
 せかされた金糸雀はいつになく真剣な顔で窓から忍び込む。 
(今回は心配は許されないかしら。肉弾攻撃派の銀姉さまとガチンコなんて、頭脳派の金糸雀とし 
て無理かしら) 
 何とか忍び込んだ金糸雀は、水銀燈に渡された小瓶の中身をヤカンの中に放り込むと一目散に窓 
から外にとって返す。戻った先には腕を組んだ水銀燈が微笑んで待っていた。 
「銀姉さま、完璧かしら!」 
 ふうん、と水銀燈は当たり前だろう、という声を発すると、これから始まる喜劇に胸をときめか 
せながら、木の上へと飛んでいった。 

 水銀燈のようになりたい、とめぐが雑誌の通販で買った「小人化薬」を全く信じないほど水銀燈 
もすれてはいない。だいたい、めぐにそんな怪しげなものを飲ませるのは危なっかしい。そんなわ 
けで真紅たちに飲ませてみることにしたのだ。金糸雀を使っているのは、こんな莫迦莫迦しいこと 
を自分が直接やるのは気恥ずかしかっただけの話だ。 
 窓からこっそりと覗くと、真紅とジュンが差し向かいで紅茶を飲んでいるところだった。ふと、 
自分もめぐの病室に戻ってヤクルトを飲みたい気分になる。 
 二人がカップを傾ける。笑ったり、時折ジュンが膨れっ面したり。とくに変化はないようだ。や 
はり偽薬だったかと木から下りようとしたとき、ジュンがばたりとテーブルに突っ伏した。 
「ジュン、お行儀が悪いわよ」 
 真紅は怪訝な顔で声を掛けたが答えはない。真紅も異変に気づきジュンの肩を起こそうとした。し 
かし真紅の手は空ぶってしまう。 
「ジュン!」 
 目の前からジュンの姿がきれいさっぱり消えてしまう。慌てて真紅はジュンのいた場所に行く。 
「馬鹿!僕を踏むな!」 
 叫び声に目を下ろすと、そこにはフィギュアサイズのジュンが呆然と立っていた。 
「ジュン……」 
 真紅はそっとジュンをつまみ上げる。そして急に真紅の態度が変わった。 
「かわいいわ♪こんなお人形、ずっと欲しかったのだわ♪」 
 凍りつくジュン。そして窓の外で唖然とする水銀燈。だが真紅は危ない笑みを浮かべたまま言う。 
「一度でいいから着せ替え人形遊び、やってみたかったのだわ。ましてジュンの人形なんて最高」 
 窓の外でずり落ちかかる水銀燈。おびえるジュン。だが真紅の手はいきなり服にかかった。 
「やめろ真紅!馬鹿なことはよせよ!」 
「大丈夫。あなたは、幸せな私のお人形♪」 
 素早く上半身を脱がし、小さなジュンの乳首を指先でくりくりと弄り回す。ジュンはそれだけで 
身をよじらせ声を発することすらできなくなる。 
「何かしら、このふくらみ」 
 真紅は人差し指で下半身の膨らみをそっとなで上げる。びくびくと身を跳ねさせるジュンの頭を 
そっと撫でながらジーンズを脱がしていく。 
 すっかり裸になったジュンの体に、真紅は口づけていく。ぬらりとした舌が首筋、胸、脇の下、 
臍の中まで嘗め回していく。 
 遂に真紅の舌がジュンの象徴に到達した。まだ被ったままのそれを、真紅は口の中でゆっくりと 
転がし、遂に唇で剥き下げた。 
「いっ!」 
 ジュンの叫びに真紅は微笑みを浮かべ、ゆっくりと剥けたばかりのそれを舌でぬぐっていく。怒張 
した象徴は快感に何度もびくり、びくりと口の中を跳ねる。 
「何、何をやってるのかしら」 
 やっと木登りしてきた金糸雀に気づき、水銀燈は襟首をつまんで囁いた。 
「あんたや雛苺みたいなねんねの見るものじゃないわ」 
 そのまま金糸雀を自由落下に任せて放り投げつつ、水銀燈は自身の唇を舐める。 
(そういえばめぐ、寝汗がしょっぱいって言っていたわぁ) 
 水銀燈は自身の首筋を羽根でくすぐりながら甘い吐息をついて二人の痴態を凝視する。 
「真紅、もう、もう僕」 
「いいわ、ミルクティーも素敵だわ」 
 言って真紅は冷めた紅茶の残りを少し口に含むと激しくジュンの象徴に吸い付いた。大きくジュン 
の体が跳ね上がり、真紅の喉が液体を嚥下していく。 
 快感に気を失ったジュンをベッドに寝かせると、真紅はジュンの頬に口づけて添い寝した。 

「!?僕!」 
 慌てて飛び起きたジュンの横で、真紅は目をこすりながら起き上がった。 
「ずいぶんと騒々しい下僕ね」 
 真紅の言葉にジュンは、僕が小さくなっていたのに、それに真紅が僕を脱がせて、と言い立てる。 
すると真紅はジュンの頬をツインテールでひっぱたいた。 
「どこが小さいの?私より大きいいつもの通りじゃない。それに私がはしたないことをしたと言う 
の?勝手に寝てしまってつまらないから一緒に寝ていたというのに、本当にあなたは愚かね」 
 言われてジュンはやっと自分の状況を確認する。たしかに数時間経っているが、あとは何も変わり 
ない。ジュンは夢か、と呟いてトイレへと向かった。 
 ドアが閉まるのを確認して、真紅は窓の外に声を掛けた。 
「水銀燈、今日のことはこれで貸し借りなしよ」 
 窓の外では、ジュンのパソコンから金糸雀に注文させた「小人化薬」の注文確認ページの印刷物を 
握り締めた水銀燈が上気した顔でうなずいていた。 
「銀姉さま、そんな失敗薬どうするのかしら」 
「だからねんねは来るなって言ったはずよぉ」 
 水銀燈は再び金糸雀を蹴落としながら、めぐの体を想って唇をゆっくりと舐めた。 

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