アリスゲームは水銀燈の勝利によって幕が閉じられた。
「フフフ・・・ついに手に入れたわぁ・・・真紅のローザミスティカ・・・。」
水銀燈は不敵な笑みを浮かべ真紅のローザミスティカを飲み込んだ。
「ついにやったわ! これでローザミスティカが全て揃った! 私こそアリス!
これでお父様のもとへ行けるのよぉ!」
「し・・・真紅!!」
ジュンが駆け寄るも真紅はもはや原型を留めない程にまで破壊されていた。
水銀燈によって切り裂かれ、砕かれ、見るも無残なガラクタと化していた。
「お・・・お前ぇぇ!?」
怒りに満ちたジュンの視線が水銀燈に向けられるが、水銀燈は動じない。
「な〜にぃ? そんな怖い顔してどうしたのぉ?」
「どうしたもこうしたもあるか! お前狙ってただろ!? 真紅がこうなるのを・・・。」
もしこれがお互い万全の体調で、かつ双方の合意に基いて行われるアリスゲームで
あったならば、ジュンも悔しいながらも仕方が無いと退く事も出来ただろう。
しかしジュンは水銀燈が許せなかった。
雛苺のみならず翠星石と金糸雀まで食ってしまった雪華綺晶と戦い、勝利するも
心身ともに大きく疲弊した真紅に突然水銀燈が襲い掛かった。
既に雪華綺晶から大きなダメージを受けていた真紅が水銀燈に敵うはずも無い。
水銀燈は突かれきった真紅を一方的に嬲った。故意に苦しませ、苦痛の果てに
ローザミスティカを奪い取った。ジュンは水銀燈の卑怯な手口が許せなかった。
「返せよ・・・。真紅を返せよ!!」
ジュンは水銀燈に向けて駆け寄った。しかし水銀燈は動じない。
「馬鹿じゃない? お馬鹿真紅のマスターが私に敵うわけ・・・。」
水銀燈は己に掴みかかろうとするジュンに対し軽やかにかわそうとした。
だが、その時彼女に異変が起こった。
「え? 何か体に力が入らない・・・ってあ!」
水銀燈はかわす事が出来ず、ジュンのタックルによって地面に倒されてしまった。
「な・・・何で!? 何で私がこんな人間なんかに・・・。」
水銀燈は動揺した。ヒキコモリで体力の無いジュンに倒されてしまうなど
本来ならあり得ない事なのだから。おまけに今の水銀燈はローザミスティカを
全て集めアリスとなっている。当然力も本来の何倍にもアップしているはずであり、
ジュンに負けるわけがなかった。
「何で・・・何でアリスの私があんたなんかに押されなきゃならないのよぉ!」
「うるさい! 真紅を返せ! 返せ返せ返せ返せ!」
水銀燈は必死にジュンを引き離そうとするが体に力が入らない。どうもおかしい。
真紅のローザミスティカを手に入れてから・・・。だが、そこで彼女は気付く。
「まさか真紅のローザミスティカが私を拒んでると言うの!?」
これに近い経験は過去にもあった。以前奇襲によって蒼星石のローザミスティカを
横取りした時も蒼星石のローザミスティカが拒絶反応を起こした事があった。
それと同じ様に真紅のローザミスティカが内部から抵抗しているのである。
「くっ! 何で・・・せっかくアリスになったのに・・・くっ離しなさい!」
「離すもんか! お前が真紅を返すまで離さない!」
体に力が入らない水銀燈はジュンに簡単に押さえ込まれ動けない。
「返せ返せ返せ返せ返せ真紅を返せ返せ返せ真紅を返せ!」
「うるさい馬鹿ぁ!」
ジュンの顔面に唾が掛けられた。水銀燈はプライドの高いドールだ。
人間を糧としか思わない彼女にとって人間に負ける事は許せなかった。
だからこの様な状況になろうともジュンの言う事を素直に聞くわけにはいかないのである。
だが、それがジュンをますます怒らせる事になり、右拳を握り締め大きく振り上げた。
「お前・・・このままお前の綺麗な顔を殴って滅茶苦茶にしてやるぞ。
人形は顔が命と言うから相当な屈辱だろう・・・あれ? いやまてよ・・・。」
突然ジュンは拳を下げるとともにニヤリと笑みを浮かべた。
「お前に屈辱を与えられるもっと良い方法が思い付いた。」
「え?」
ジュンの不気味な笑みに水銀燈はいやな予感を感じた。その予感は的中した。
突然ジュンは水銀燈のスカートを捲り上げ、彼女のパンティーを下ろしたのである。
「キャァ! 何するのよぉ!」
「いくら人形っつっても女の子だからこうされると恥かしいだろう!?」
続けてジュンはノーパンになった水銀燈の太股を掴み、大きくM字に広げた。
忽ち水銀燈の綺麗な股間が露となる。
「こらぁ! 何するのよぉ!」
「あれあれ〜? 変だな〜人形のくせにアソコとケツの穴があるぞ〜。」
「嫌ぁ! 見ないでぇ!」
見下していた人間に大切な所を見られた水銀燈の顔は真っ赤になった。
しかし、ジュンは構わず水銀燈の尻の菊門に指を差し込んだ。
「キャァ!」
「お前人形だからウンコしないはずなのに何でこんなもんがあるんだ? おかしいだろ?
しかもアソコまで再現されてるしさ〜。ローゼンは何を考えてるんだ?」
「お父様を愚弄しないでぇ!」
水銀燈は顔を真っ赤にさせながら叫ぶが今の彼女が何を言ってもジュンの耳には届かない。
それどころか今度はジュンの指が水銀燈の女性器に差し込まれた。
「うわぁ! 柔らけ〜・・・。本物みたいだ。」
「あっ! ダメッ! 嫌ぁ!」
ジュンは人差し指と中指を水銀燈の女性器に差し込みつつ小指で菊門を弄くった。
そのたびに水銀燈は顔を赤くさせながらピクピクと痙攣する。
「今度はニ穴攻めだ〜。」
「アッ! ダメッ! 嫌ぁ! あんたぁ! こんな事してどうなるか分かってるのぉ!?
私はアリスなのよぉ! 穢してはならないこの世で最も至高の少女なのよぉ!」
「じゃあ何でローゼンはこう言う所まで再現したんだ? それってつまりローゼンが
求めたアリスって言うのも結局は俺達と同じ様にウンコもシッコもするって事じゃないか。」
「そんな事無い! 究極の少女アリスはそんな事しない!」
「そりゃ確かにお前達は人形だからそうかもしれないけど、仮にアリスが人間なら僕の言った通りだよ。」
「うるさい黙れ黙りなさぁい! アリスはお前達愚民なんかと違うのよぉ!」
水銀燈は首を左右に振って必死に反論した。しかし、今の無力な彼女が吼えても空しいだけだった。
「ハイハイ分かった分かった。アリスは素敵ですね〜。でもね、やっぱり女性器まで
再現されている以上はさ、やっぱいずれは男とやる事も前提にしてると思うんだ。」
「ええ!?」
その時水銀燈の顔は真っ青になった。突然ジュンが自らのズボンとパンツを下ろし、
水銀燈の眼前に勃起して固く大きくなった男性器を見せ付けたのである。
「キャァァァァァ! 嫌ぁぁぁぁ!」
「嫌とは何だ。これからお前の中に挿入なさるチンポ様に向かって失礼であるぞ。」
「え!?」
ジュンは再度水銀燈の太股を掴み大きく左右に広げると共に己の男性器を水銀燈の女性器に向けてキスをさせた。
「嫌ぁぁぁぁ! ダメダメダメェ!!! こんなの入るわけ無いぃぃぃ!」
「そんなのやってみなけりゃわかんないだろ?」
水銀燈はドール故に人間より小さい。当然女性器のサイズも小さい為、ジュンの男性器とは
かなりサイズの差がある。だが、そのサイズ差を無視してジュンは挿入しようとした。
「入らない入らない入らないぃぃぃ!」
「そんな事言って結構入ってるぞ。」
なんと言う事か。水銀燈の女性器は柔らかいゴムのように大きく広がると共にジュンの男性器を
受け入れ、今にも入る所まで来ていた。
「嘘! 嫌ぁ! 入ってる! 何で!?」
「僕の家に真紅が初めてやって来た時、姉ちゃんが洋物ダッチワイフと勘違いした事があったけど、
お前は正真正銘の洋物ダッチワイフだな。だって僕のチンポが入っちゃうんだぞ。
これって絶対男とやる事を前提に作ってるよな。ローゼンは・・・。」
「そんな事無いそんな事無い! お父様はそんな事しないそんな事しない!
嫌嫌嫌嫌! 入れないで入れないで入れないで入れないで! 止めて止めて止めて止めて!
おねがいですおねがいですおねがいです! 何でもしますから何でもしますから!」
必死に水銀燈は哀願する。もう彼女になりふりかまっていられる余裕は残っていなかった。
「本当に何でもするのか? なら潔く犯されろ!」
「痛ぁ!!」
水銀燈の必死の哀願も空しく、無情にもジュンの男性器は深々と挿入された。
忽ち水銀燈を激痛が襲う。
「ああああああ!! 痛ぁぁぁぁぁぁい!!」
「すごい! こいつ処女膜まで再現されてる。一体何者なんだローゼン・・・。」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」
「そんなに痛いのか? だがな・・・理不尽に真紅を奪われた僕の心の痛みはそれ以上なんだぞ!」
ジュンは泣き叫ぶ水銀燈を力一杯に抱きしめ、突いた。
今の水銀燈はもう薔薇乙女最凶のドールでもアリスでもない。
ただただレイプされて泣き叫ぶだけのただのオンナだった・・・
あれから何度やられただろうか。
ジュンの精液が水銀燈の中に注ぎ込まれた後、ようやく解放された。
「今日はこの位にしといてる。」
「うう・・・殺してやる・・・絶対に殺してやる・・・。お父様に会う前にまずはあんたを殺して・・・。」
「それは無理ですね。」
「え?」
二人の前に突然ラプラスの魔が現れた。
「残念ながら貴女はお父様に会う事は出来ません。」
「何故!? 私はアリスゲームを勝ち抜いてローザミスティカを全部集めたのよ!」
「アリスとは究極の少女を意味するのですよ。既に男を知って少女で無くなった貴女が
どうあがいてもなれる領域では無いのです。」
「え・・・。」
ラプラスの魔の言葉に水銀燈は真っ青になり、開いた口が塞がらなくなった。
そう、彼の言う通りアリスは究極の少女。無論一切の穢れも許されない存在。
しかし、水銀燈は無理矢理とはいえ既にジュンとのSEXを経験し、穢れを知ってしまった。
こうなってはいくらローザミスティカを全て集めようともアリスになる事は出来ないのだ。
「そんな・・・私は・・・アリスじゃないの・・・あは・・・あは・・・アハハハハハハハハハ
アァァァァヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ!!」
なんと言う事か。水銀燈は発狂してしまった。無理も無い。姉妹の中で最もアリスに
固執し、その為には卑怯な手口も厭わなかった彼女が己の手を幾重にも汚して
手に入れたアリスの座が露と消えたのだから狂わない方がおかしい。
「僕・・・ひょっとして酷い事してしまったのかな? これじゃあローゼンも報われないし・・・。」
「いえいえ、まだアリスが誕生する可能性が全て無くなったわけでは無いのですよ。」
「え?」
「その鍵は彼女が握っているのです。」
「え? コイツが?」
水銀燈が我に返った時、彼女は桜田家のジュンのベッドの上にいた。
「やっと目が覚めたか・・・。」
「ここは・・・あんたの家ね・・・そうなのね・・・・。」
水銀燈は無気力状態になっていた。無理も無い。せっかくローザミスティカを
全て集めたと言うのにアリスになれなかったとあってはショックを受けない方がおかしい。
だが、その原因を作ったジュンに対し復讐する事を予想していた彼は今の無気力状態の水銀燈が
あまりにも哀れに見えた。
「おいお前・・・しっかりしろよ・・・。」
「ほっといて頂戴・・・。もう私はアリスじゃないのよ・・・もう永久にお父様に会えないのよ・・・
生きていてもしょうがないのよ・・・あんたのせいで・・・あんたのせいでぇぇぇぇ!!」
無気力状態から一転、逆切れした水銀燈は拳を振り上げてジュンの顔面を殴った。
これが本調子の水銀燈であるならばジュンは忽ち血反吐を吐いていたであろう。
しかし、真紅のローザミスティカの拒絶反応によって大きく弱体化した
今の彼女がいくら殴ってもジュンに痛いと言う感触を与える事すら出来なかった。
「お前・・・これからどうするんだ?」
「あんただってどうするのよ・・・。もうあんたのマスターだった真紅は戻ってこない・・・。
私が殺してしまったのよぉ! 何でそんな哀れみの目で見るのよ! 私が憎くないの!?」
「そりゃ憎いさ。今にもお前の顔をぶん殴って、また犯しまくってやりたいくらいにな・・・。」
「!」
ジュンの言葉に水銀燈は一瞬怯えた。やはり先程のアレはショックだったのだろう。
その時突然ジュンが水銀燈の左乳房をガッチリと掴んだ。
「何するの!?」
「お前お前が喰った真紅のローザミスティカ何処にあるんだ? ここか? ここか?」
ジュンがそう言いつつ水銀燈の左乳房を揉み解すが、今の水銀燈に抵抗は出来なかった。
「あっ! 嫌ぁ! やめて!」
「何処にあるんだよ真紅のローザミスティカ。それが分かれば今にだって
お前の身体を裂いて取り出してやるのに・・・。おっとここかな〜・・・?」
続けてジュンは人差し指を立てて水銀燈の乳首に押し立て、クリクリと弄くった。
「あっ! ダメッ! こらぁ!」
口では嫌がっていたが、水銀燈は抵抗しなかった。抵抗出来ないのか、
本当に抵抗していないのかは分からなかったが、水銀燈はなすがままになっていた。
ジュンもジュンで、本当に真紅のローザミスティカを探したいのか分からないくらい
水銀燈の乳房を揉み解し続けた。
「さっきやった時もそうだけど、何で人形のくせにこんなにおっぱい柔らかいんだよ。」
「そ・・・そんなの・・・ア! 私は知らなぁい・・・ア! アッ・・・お父様に・・・聞いて・・・。」
水銀燈の乳房は柔らかかった。それでいて張りや弾力もあり、とても人形とは思えない程だった。
「(人間ともSEX出来るアソコと言いこのおっぱいと言い、やっぱローゼンは
あらかじめこういう事をやるのを前提に作ってたんだな。奴も所詮男だったって事か・・・。)」
真顔で水銀燈の乳房を揉み解しつつ、ジュンはラプラスの魔に言われた事を思い出していた。
「ローゼンメイデン第一ドール水銀燈。彼女は第一ドールと言うだけあって
ローゼンメイデンの試作としての意味合いも兼ねられていました。それ故に
”あの方”は様々な機能を持たせました。例えば背中に生えた翼などがそうです。
機能の大半は不要と判断され、後の姉妹には採用されませんでしたが、
その排除された機能の中の一つに”新たなドールを産み出す”と言う機能があるのです。」
「新たなドールを産み出す・・・?」
「そう。人間が男女の交わりによって新たな命を産み出すように、彼女にもその能力を与えられているのです。」
「って事は人形なのにアソコがあったのはそれが理由だったのか!?」
衝撃の事実にジュンは驚くが、真の驚愕はここからだった。
「新たなドールを生み出すと言っても彼女単体ではその機能は働きません。そう、人間も単性では
子孫を残せないように・・・。ですが、君が彼女に行ったある行動によって彼女の人工子宮が作動し、
もう既に新たなドールの生産が開始されたのです。」
「え!? 僕のある行動って・・・。まさか・・・。」
ジュンは蒼星石以上に青ざめた。ジュンが水銀燈に行った事。それは彼女を犯し、膣内に
大量に精子をぶちまけた事である。
「お・・・おい・・・何かの冗談だよな・・・。あいつ人形なのに人間の精子でなんて・・・どういう構造なんだよ!」
「さあ・・・そこは”あの方”にお聞き下さい。とにかく貴方の精子が彼女の人工子宮による
ドール生産機能を作動させる事になったのは事実です。そう・・・貴方は人類史上初の・・・
”ドールを孕ませた人間”になるのですよ・・・。」
「そんなの冗談じゃない! まだ結婚だってしてないのに・・・そんな事あってたまるか!
何とかして止められないのか!?」
「それは無理な相談。既に彼女の人工子宮によるドール生産は行われています。
彼女をやった時点でその覚悟は出来ていたのではありませんか?」
「出来てるわけないだろ!? まさかこんな事になるなんて思っても見なかったし!
ああああ! 真紅は失うしあいつは僕の子供作っちまうし! もう踏んだり蹴ったりだぁぁ!
加えて言うとあいつは真紅を殺した張本人なんだぞ。そんなやつと子供作るなんて
真紅にどう顔向けすればいいんだよぉぉぉぉ!!」
ジュンは頭を抱えて蹲った。
「この歳で父親になっちまうなんて・・・一体どうすればいいんだよぉ!」
「いいじゃありませんか。生まれるのはあくまでもドールなんですから・・・
人間の赤ん坊を育てるのに比べれば遥かに楽だと思いますけどね〜。」
「楽なわけないだろ! 今までだって真紅達に散々振り回されて・・・真紅・・・真紅・・・
真紅ぅぅぅぅぅぅぅ!!」
ジュンはすっかり真紅との生活の中で育まれた記憶の中に逃避してしまいたい気分になったが
だからと言って事態が変わるものでもなかった。
「まあ精々頑張ってくださいジュンパパ。」
「パパ言うなぁ!」
「あと付け加えておきますと、彼女の乳房もまた姉妹の中でも大きく作られていますが、
このドール生産機能によって生み出された新たなドールに母乳を与える為なんですよ。」
「そんな事はどうでも良い! 僕はどうすればいいんだよ!」
「そこまでは知った事ではありません。後はジュンパパ自信が決める事です。
責任を取って育てるか・・・放置するか・・・全ては貴方自信です。それでは・・・。」
そう言ってラプラスの魔は姿を消し、ジュンと水銀燈の二人が残された。
ラプラスの魔が去った後、ジュンは水銀燈をかかえて家に帰り、彼女をベッドへ寝かしつけた。
そして現在に至るのだが、ジュンは水銀燈の胸から手を離した後、水銀燈に訪ねた。
「真面目な話・・・お前はこれからどうするんだ?」
「さあ・・・。せっかくローザミスティカを7つ全部集めたのにあんたが私をレイプしたせいで
全てが台無しになったしぃ・・・。おまけにその時の恨みを晴らそうにも私の中の真紅のローザミスティカが
私を拒んでいるせいでヒキコモリのあんたにも体力負けする程弱くなっちゃったからぁ・・・。
もうこのままいずこへでも行ってのたれ死ぬしか無いのかもしれないわぁ・・・。そして残った体は
ゴミ捨て場に捨てられて夢の島行きよぉ・・・うう・・・。」
水銀燈は顔を両手で押さえると共に蹲り泣き崩れてしまった。
無理も無い。今の彼女の境遇は天国から一転地獄へと転落するようなものなのだから。
「やっぱりバチが当たったのよ・・・。蒼星石のローザミスティカを横取りし、雪華綺晶との戦いで
傷付いた真紅を不意打ちして弄った卑怯者の私がアリスなんかになれるわけが無いわぁ・・・。
もうめぐも死んでしまったし・・・。私にはもう何も無い・・・生きていてもしょうがない!!
このまま私も死ぬわぁ!!」
悲しみの余り我を失った水銀燈はジュンの部屋の窓から飛び出そうとした。しかし、それをジュンが引きとめた。
「待てよ! 気安く死ぬなんて言うなよ!」
「!!」
「アリスになれなくても良いじゃないか。また新しい生き方を探せば良いじゃないか。
それだけがローゼンメイデンの幸せじゃないんだろ?」
「え・・・。」
水銀燈は一瞬動きを止めた。
「それに・・・行く所が無いんなら僕の家に住ませてやるよ。べっ別にお前に同情したわけでも
可哀想に思ったわけでも無いんだぞ! まだ真紅を殺したお前に対する恨みは全て晴らせたワケじゃないんだ!
まだまだこれからもその清算をお前の体でしてもらわなきゃいけないんだ! それだけじゃない!
お前の中にある真紅のローザミスティカ・・・これも取り戻さなきゃならない。お前だって
自分をレイプしてアリスになれなくした僕が恨めしいだろ? なら僕の近くにいた方が
命も狙いやすいはずだと思うけど・・・。」
「あんた・・・お馬鹿さんじゃなぁい?」
その時の水銀燈はかすかに何時もの彼女に戻ったように思えた。
「あんたがそこまで言うなら住んであげても良いわぁ・・・。でっでも勘違いはしないでちょうだぁい・・・。
あくまでもあんたの寝首を掻く為であって、別に礼なんて少しも思ってないんだからぁ!」
何はともあれ水銀燈はジュンの家で暮らすようになった。当然彼女に真紅達の代わりが勤まるはずもないが、
それでも真紅達がいなくなって寂しくなった桜田家に若干明るみが戻った気がした。それだけじゃない。
性格が悪いのは相変わらずだが、今の水銀燈は以前の様な狡賢さや粗暴さが失せているように感じられた。
それはもしかするならアリスゲームと言う名の重圧から解放されたからかもしれない。
彼女は姉妹の中でも一番アリスゲームとローゼンに固執していた。だからこそ勝つ為にも手段を選ばず、
寝てもさめてもアリスゲームに勝つ方法や他の姉妹を出し抜く方法を考え続けていたのだろう。
その為に彼女はあえて非情に徹して来た。だが、今はもうそうする必要はなくなった。
アリスゲームに生きる必要が無くなったからこそ彼女の中のプレッシャーが抜け、若干丸くなったように
感じなれるのだろう。と言っても、もしかするならそれもいずれはジュンの寝首を掻く為に
ジュンを油断させる演技かもしれないが、少なくともジュンは水銀燈の心境の変化を信じたかった。
それから数日経った頃だろうか。突然水銀燈が真っ青になってジュンのもとに駆け寄って来た。
「たたた大変よぉ!」
「ん? 一体どうしたんだ? 僕は復学する為の勉強で急がしいんだけど・・・。」
「私・・・病気になったかもしれないのよぉ!」
「ハァ? 人形の癖になんで病気になるんだよ。」
「だって見て頂戴このお腹ぁ! 何でこんなに膨らんでるのよぉ! 別にご飯そんなに沢山
食べてるわけでも無いのにぃ!」
「うっ!!」
ジュンは椅子から転げ落ち、思い切り床に叩き付けられた。水銀燈のお腹、特に下腹のあたりが
本当に大きく膨らんでいた。ラプラスの魔の言う通り水銀燈はジュンの子をその身に宿していたのだ。
「(あいつの言ったのはマジだったのか? しかもあれから数日しか経ってないのに成長早すぎ・・・。)」
「どうしようどうしよう! やっぱり卑怯な手口で真紅を倒したバチが当たったのよぉ!」
「嫌・・・違うよ・・・もう良い。本当の事を話すよ。実は・・・。」
狼狽する水銀燈にジュンはラプラスの魔に言われた事を正直に話す事にした。
「実はラプラスの魔の奴がカクカクシカジカ・・・。」
「何言ってるのぉ? カクカクシカジカじゃわかんないわぁ・・・。」
と、ベタな展開も程々にして真実を聞かされた水銀燈は自分の大きく膨らんだお腹を
驚愕した目付きで見つめていた。
「うそ・・・うそでしょぉ? 私のお腹の中にあんたの子供がいるなんてぇ・・・。」
「僕だって嘘だと信じたいさ。でも・・・本当なんだ。」
丁度その時、水銀燈はお腹の中の何かが蠢く感触を感じ、
本当にジュンの子供を妊娠してしまったのだと認識した。
「そんな・・・そんなそんな・・・。それじゃあ私本当に乙女じゃ無くなっちゃうじゃなぁい!
これじゃあ”薔薇乙女”じゃなくて”薔薇妊婦”よぉ! しかもよりによってこんな奴の子供なんて・・・
私はアリスと認めてもらえなかったけど、アリスゲーム覇者なのよぉ! 誇り高きローゼンメイデンの
第一ドールなのよぉ! 強くて格好良くてお金持ちでその上私の言う事聞いて大切にしてくれる
優しい男の子供を身篭るならまだしも・・・、何が悲しくてこんなキモイヒキコモリで・・・しかも
私の事を性処理用玩具としか思ってないスケベでヘンタイな最低男の子供を産まなきゃならないのよぉ!
情けない! あまりにも情けなさ過ぎるわぁ!」
「おい・・・そこまで言うと本気で怒るぞ・・・。」
ジュンは水銀燈の顔面を本気で殴ってやりたくなっていたが、水銀燈が真剣に大粒の涙を流し
悲しんでいる所を見ると自然と殴る気が失せていった。
「そうよねぇ・・・あんたは確かに最低男だけど・・・私も人の事言えないものねぇ・・・。
お父様に会う為・・・アリスになる為とは言え・・・今まで散々悪行三昧を重ねて来た私が・・・
アリスなんかになれるワケがないわぁ・・・。そんな私なんて・・・ヒキコモリでスケベでヘンタイな
最低男の子供を産むのがピッタリよねぇ・・・。」
「お前・・・いくらなんでもそんなに自虐的にならなくても・・・。」
ジュンは怒りを通り越して水銀燈が本気に可哀想になって来た。そして彼女の肩に
軽く手を添えようとした時だった。
「うっ! うあああ!」
「ん!? どうした!?」
突然水銀燈はお腹を押さえて苦しみ始めたではないか。
「何ぃ!? これぇ!? く・・・苦しい・・・苦しいわぁ!」
「まさか! もう産まれるのか!?」
水銀燈は産気付いていた。だが、ジュンはこの時どうすれば良いか分からなかった。
「う・・・産まれるの!? 本当に産まれちゃうのぉ!? あんたの子供がぁ・・・。」
「どうしようどうしよう! 人形のお産なんて前代未聞だし・・・流石に病院に電話するわけにはいかないし・・・。」
ジュンが女性のお産に関して分かっている事と言えば子宮内の子供が
女性器から出てくる事くらいの事である。無論お産の時に何すれば良いか分からない。
その時とっさにジュンが取った行動は水銀燈をベッドに寝かすと共にスカートに手を突っ込んで
パンティーを脱がし、太股を掴んで左右に広げてM字開脚させる事だった。
「やぁ! あんたこんな時に何やってるのよぉ! 馬鹿ぁ! やっぱりあんたスケベヘンタイ
ヒキコモリ最低野郎よぉ!」
「うるさい! こんな非常時にグダグダ言うな! 少しでも産まれ易くする為だよ!」
「そんな事言っておいて思い切りチンポおっ勃ててるあんたが言える口ぃ!?
うっ! 痛い! 痛ぁぁぁ!」
水銀燈は両手でお腹を押さえてのたうった。
「痛い! 痛い! 死んじゃうぅ! 私死んじゃうわぁ!」
「しっかりしろ! 痛いと言う感触がある内はまだ大丈夫だから!」
「暴れてるぅ! 暴れてるぅ! お腹の赤ちゃんが暴れてるわぁ! お腹突き破ってくるわぁ!」
「そんな事は無いから落ち着けよぉ!」
泣き叫びながら苦しむ水銀燈のあまりの苦しみようにジュンも大慌てだったが、
直後水銀燈はお腹の子供が下腹部から股まで降りてくる様な感触を感じた。
「産まれる!? 産まれるの!? うっ産まれるぅ! 産まれるぅぅぅぅぅ!!」
「うわぁ! 本当に何か水銀燈のアソコから何かせり出てくる! マジで産まれるのかぁ!?」
大きく開いた水銀燈の女性器から小さなドールがゆっくりと現れた。
「産まれる産まれる産まれる産まれるぅぅぅぅぅぅぅ!!」
「オギャー!! オギャー!!」
ついに産まれた。水銀燈はジュンの子供を産んだ。そして全身に球体関節の見えるドールの赤ん坊だ。
「ああ・・・やっと産まれたのねぇ・・・。」
「元気な女の子だぞ!」
「そ・・・そう・・・。それにしても・・・お産ってこんなに苦しいものだったのねぇ・・・。」
そう言うと共に水銀燈は疲れたようにベッドに寄りかかるように倒れた。
「それにしても・・・これって気のせいだよなぁ・・・。」
ジュンは生まれた赤ん坊ドールをタオルで包んで抱いていたが、
その赤ん坊ドールはジュンと水銀燈の子供の割には二人と全然似ていなかった。
金髪に青い瞳を持つなど、むしろ真紅にそっくりだった。すると真紅そっくりの赤ん坊がジュンの
目を見つめてこう言った。
「おとうたま・・・こうちゃがのみたいのだわ・・・。」
「え・・・。」
あまりの衝撃にジュンはしばし呆然とした。
「お・・・お前・・・真紅・・・真紅なのか!? 真紅の生まれ変わりなのか!?」
「しんくってなんなのだわ? わたしわかんないのだわ。」
目の前の赤ん坊ドールに真紅の記憶は残っていなかった。しかし、ジュンは信じたかった。
この赤ん坊こそジュンが心の底から愛したドール、真紅の生まれ変わりであると・・・。
そうしてジュンが真紅似の赤ん坊ドールを優しく抱きしめた時、突如ジュンのパソコンの
ディスプレイからラプラスの魔が現れたではないか。
「ローゼンメイデン第八ドールのご出産おめでとうございます!
人形と人間の壁を越えた愛を垣間見させていただき、この私も感動の余り涙が出る次第であります・・・。」
「おい・・・。」
ジュンはラプラスの魔を睨み付けるが、ラプラスの魔は構わず二人に拍手を送った。
「お父様もほっと胸を撫で下ろしておられますよ。何故なら彼女がアリスゲームを制するも
乙女でなくなった為にアリスになる権利を失い、このまま誕生しないまま終わるかと思われた
アリスの候補になり得る新たな薔薇乙女が無事に誕生したのですから・・・。お父様はお二人の
頑張りに期待していますよ。産めよ増やせよとは良く言ったものです。これからもどんどん
子供を産みなさい。そして新たに誕生したローゼンメイデン達によって新たなるアリスゲームが行われるのです。」
「そんな事させるもんか!」
物凄い剣幕で叫んだのはジュンだった。そして真紅似の赤ん坊ドールを抱きかかえラプラスの魔を睨み付ける。
「そんな肉親同士で無意味な殺し合いなんて誰がさせるもんか! 僕は認めないからな!
アリスゲームも・・・ローゼンも・・・!」
「そうですか・・・でも、彼女はどう思っているでしょうね〜・・・ま、精々頑張ってください。」
ラプラスの魔はいずこへ消え去ったが、水銀燈はラプラスの魔の言葉に影響されて笑みを浮かべていた。
「私の子供の手で行われる新たなアリスゲーム・・・面白そうじゃなぁい・・・。
さあジュン! これからもどんどんあんたの子供産むわよぉ! そして・・・。」
「こら! 自分の子供同士で殺し合いをさせる親が何処にいるか!」
「でもお父様はそうだったしぃ・・・。それに親が出来なかった事を子が遺志を
受け継いで成し遂げるって凄く感動的な事だと思わなぁい?」
「そんな事あるか! お前は何とも思わないのか!? お前がせっかく痛い思いをして産んだ
子供同士で殺し合いなんて・・・僕はそんなの見たくない! これ以上大切な人形がなくなるのは
見たくないんだよ! それでもコイツらまでアリスゲームに巻き込むようだったら僕にだって
考えがある! 本当の本当にお前を性処理玩具にするぞ! 勿論コンドーム付けて妊娠しないようにしてな!
フェラだってアナルセックスだって何でもアリだぞ!」
かなりエロい方向に話が流れていたが、ジュンの目は真剣そのものだった。
先のアリスゲームによって起こった悲劇。これを繰り返したくないと言う想いが
ジュンの目には込められていた。そして水銀燈は真紅似の赤ん坊ドールを抱く。
「・・・。」
水銀燈は我が子の目を見つめた。自分に似るどころかあれだけ憎んでいた真紅にそっくりな赤ん坊ドール。
しかし、今の彼女には憎しみの念が沸いてこなかった。むしろ、大切にしていきたいと言う気持ちが
強く芽生えていたのである。
「ごめんなさい・・・もう少し考えさせてくれないかしら・・・。」
水銀燈はドレスを半分脱ぎ、真紅似の赤ん坊ドールに母乳を与えた。赤ん坊ドールは水銀燈の
乳首に吸い付き、母乳を吸って行く。が・・・突然その子は水銀燈の目を見つめてこう言った。
「おかあたま・・・こんなまずいおっぱいじゃなくてこうちゃがのみたいのだわ・・・。」
「あ・・・やっぱりアリスゲームさせちゃおうかしらぁ・・・。」
「おい・・・。」
ジュンと水銀燈の間に真紅そっくりの赤ん坊ドールが誕生して数日。明かりの灯っていない
真っ暗な部屋で、窓から差し込むかすかな月明かりに照らされながらジュンと水銀燈が抱き合っていた。
事はジュンが隠し持っていたエロマンガで手淫に浸っていた現場を水銀燈に発見された事から始まる。
勿論それを見付かってしまったジュンは焦った。これを咎められ、のりにまでばらされると思ったからである。
だが、水銀燈の反応は意外なものだった。
「そんな所であんたの精子無駄にするくらいなら私の膣にちょうだぁい!」
「ええ!?」
なんとまあ水銀燈は子供を産んで間もないと言うのにまた新しい子供を産みたがっていた。
おまけに子供にアリスゲームをやらせるかの問題は否かは未だ保留中の状態であるにも関わらずである。
「今度は男の子のドールを産みたいのぉ・・・。蒼星石みたいな男女じゃなくてジュンみたいな素敵な男の子のドール・・・。」
「お前・・・この間僕をスケベでヘンタイでヒキコモリな最低男って呼んでたのに何だこの変わり様は・・・。」
余りの変わりようにジュンは何かの罠かと案じてしまうが、その時の彼女の目は嘘を付いてる様に思えなかった。
と言いつつ、ジュンは水銀燈を抱いていた。手淫中で冷静な判断力が出来なかったジュンにとって
性欲処理の方が優先されてしまった為であろう。
「あっ! あっ! 凄いぃ! 凄いわぁ! ジュン・・・。」
「この間はあんなに嫌がっていたと言うのに何だ? この変わり様は・・・。」
ジュンと水銀燈の二度目のSEX。今度はジュンによる一方的な強姦だった一度目と違い、
双方の合意に基いた正統なSEXである。それだけに肉欲にまみれた一度目と違い、
愛が溢れており、ジュンが突けば突く程水銀燈は両胸の乳房を大きく揺らしながら腰を激しく動かしていた。
「あぁ! ジュン凄いぃ! 私腰が抜けてしまいそうよぉ!」
「で・・・出だすぞ! いいな!?」
「い・・・いいわぁ! 水銀燈の中に全部ちょうだぁい! それでジュンの子供・・・産むわぁ!」
「ううっ!」
ジュンの精子が水銀燈の膣内にぶちまけられた。それはもはや接合面から溢れ出る程にまで大量の物だった。
しかし、出し終わった後も二人は繋がったままベッドの上で抱き合っていた。月明かりに照らされながら・・・
「お前・・・一体どういう心境の変化なんだ? この間まで僕を散々嫌っていたのに・・・。」
「わ・・・私にも本当の事言うとどう説明したら良いかわからないわぁ・・・。でも、これだけは言えるの・・・
確かにこの間まであんたみたいな男の子供を産むなんて死んでも御免と思ってた・・・。
でも、何となく分かってしまったのよぉ・・・。あの真紅が・・・私が人間を糧としか思っていなかったように・・・
人間を自分に付き従う下僕としか思っていなかったあの子が真剣に貴方を愛した理由が・・・。」
「え?」
「もう貴方は最低の男なんかじゃないわぁ。今の私にはジュンこそがこの世で最も至高の
男性に見える・・・。もうくんくんだって足元にも及ばないわぁ。」
「その例え方はどうかと・・・。」
ドールズにとっての理想の男性像についてくんくんに例えてきた事にジュンは一瞬呆れたが、
水銀燈はジュンに顔を近づけていた。
「だから私はジュンの子供を産んでも良い! むしろ産ませて下さいと頼みたいくらい・・・。
でも、一つ個人的なわがままを言わせて貰うと・・・。」
「何だ? 言ってみろよ。」
「さっきも言った通り、私は男の子のドールを産みたいのぉ・・・。ジュンのような素敵な男の子のドールを・・・。」
「あんまり煽てるなよ。僕はお前が言う程の人間じゃないぞ・・・。それに、男なんて産まれるのか?
だって男だと薔薇乙女なんて言わないだろぉ?」
「それは私にも分からないわぁ・・・。今度の子もまた女の子かもしれない・・・。でも何時かは産みたいの・・・男の子・・・。
それに・・・男の子のドールならアリスゲームには関係ないでしょぅ?」
「個人的には蒼星石みたいなしっかりした奴が良いんだけどな。そんなに手はかからないし
家の手伝いなんかも率先してやってくれそうだしな・・・。」
「そんな事言わなくてもいずれ生まれてくるわぁ・・・。真紅そっくりの子が生まれてきたんですもの・・・。
蒼星石そっくりの子だってきっと・・・。」
ジュンと水銀燈は月明かりに照らされながら口付けをした。
しばし時が流れた。
ジュンはヒキコモリから完全に脱却し、高校生になっていた。
何時までもヒキコモリでいるわけにはいかないと言う気持ちもあったのだが、
どちらかと言うと学校に行く事を口実に子供の世話をバックレたかったと言うのが本音だった。
そして学校から帰宅するとジュンと水銀燈の間に生まれたニュードールズが出迎えた。
「お帰りなのー。」
「今日も無事に帰ってきたお父様の為にお菓子を作ったですよ。さっさと喰いやがれですぅ。」
ジュンと水銀燈の間には6人の子供ドールがいた。長女が真紅そっくりであったように、
皆何故か旧ドールズにそっくりな子供達だった。そしてニュードールズはジュンお手製のドレスを着ていた。
加えて説明すると、子供ドールは産まれる時は赤ん坊の状態であるが、直ぐに
旧ドールズと同じ程度にまで成長し、そこからドールズ特有の不老不死モードに移行するようだった。
その成長に関しても個体差があり、水銀燈の様なお姉さん体型にまで成長する子、
雛苺のような幼女体型にまでしか成長しない子、真紅のような中間型の子の三通りがあった。
「あなたぁ〜おかえりなさぁい。」
ジュンがキッチンのある部屋に行くと、エプロン姿の水銀燈が出迎えた。
どちらかと言うと薔薇乙女のドールズの中でもサディストお姉さん風で、露出度の高いスタイルで
女王様とお呼びぃとか言いながらムチを振るっていても違和感の無かった水銀燈であったが、
6児の母親になった為であろうか、今の彼女はエプロン姿の似合うママキャラに変貌していた。
だが、もしかするならこっちの水銀燈の方が本当の彼女の姿なのかもしれない。
水銀燈は薔薇乙女の第一ドール。即ち長女である。その為、まだアリスゲームが行われる以前、
姉妹共々ローゼンと暮らしていた時に妹達の世話などを任された事もあったはずである。
その時に家庭的な要素を学んでいても何らおかしい事は無い。それがアリスゲームを行っていた時に
そういう一面を見せなかったのは、イメージが崩れるからだったのだろう。
アリスゲームを戦っていた時の彼女はアリスゲームを勝ち抜く為に非情に徹していた。
だからこそ手段を選ばず、様々な残虐ファイトにも手を染めて来た。それは姉妹達に恐怖の
イメージを植え付け、相手の戦意を砕いて戦わずして勝つと言う彼女なりの作戦もあったようだが、
家庭的な所を見られてしまってはせっかく築いた恐怖のイメージは崩れてしまう。
だからこそ彼女はそれを封印していたのだろう。
「あなたぁ! 私のお腹見て見てぇ。もうここまで大きくなったのよぉ。」
「そうかぁ・・・。この間の子と違って無事に生まれると良いな・・・8人目の子・・・。」
7人目の子供は雪華綺晶にそっくりなピンクがかった白髪の子供だったのだが、
残念ながら死産と言う結果に終わってしまった。しかし、雪華綺晶がそうであったように、
その子供はアストラル体となって桜田家を見守っている事を皆は知らない。
そして今水銀燈のお腹の中にいるのは8人目の子供だった。
ジュンは椅子に座ってテーブルに置かれたお茶を飲んでいた。部屋の中では子供達が
じゃれあう姿が見られた。平和な日常。水銀燈は子供達にアリスゲームの事を教える事は無かった。
アリスゲームに触れさせず、平和に生きる事を選んだのである。
「フフフ・・・お馬鹿さぁん・・・。」
「何ですってぇ!? 顎に痛いの食らわせるのだわ!」
「お前等うるさいテレビの音が聞こえねぇですぅ! 二人まとめてぶっ殺すですよ!!」
ケンカをする事はあるが・・・まあ皆仲良く平和に暮らしている。
「ハハハ・・・でも、もしこのまま人間とも生殖可能な呪い人形がどんどん増えて・・・
逆に人間を滅ぼしてしまうなんてSFみたいな事は・・・無いよなぁ・・・。」
しかし、ジュンの言葉は遥か未来において現実の物となり、ドールの星となった地球で
ジュンと水銀燈の二人はドール界のアダムとイブとして語り継がれる事になるのだが・・・
まあそれは別のお話であろう。
完