水銀燈がアリスゲームを制してアリスへと昇華し、ローゼンの下へ旅立って数日が経った。 真紅を初めとするドールズが姿を消した桜田家はまるで灯が消えた様に寂しくなっていた。 「くそっ! あんなにあいつ等が僕の前から消えてくれれば…って思ってたのに 何でいざ本当に消えたらこんなに寂しいんだよ!」 ジュンは机を叩いた。これがアリスゲームの宿命。アリスになれるのは7体の内の1体のみ。 ジュンと暮らしていたドール、真紅もまたジュンの目の前で水銀燈にローザミスティカを 奪われた。しかし、今更水銀燈を怨む事はジュンには出来なかった。 その勝負は双方の合意に基いて行われた正統なアリスゲームであったからである。 そしてアリスゲームに敗れたドールズは皆水銀燈の糧となり、アリスとなった 水銀燈もまたジュン達の前から姿を消した。 「静かだ…でも以前の僕はこんな物を望んでいたのか?」 ジュンだけじゃない、姉であるのりもそう。各ドールズのマスターだった他の皆も きっと寂しい想いをしているのだろう。ローゼンメイデンと言うきっかけの下で 知り合い、仲良くなった者達もいた。しかしドールズが姿を消した今、それも全ては空しい。 本来ならばそれが普通の生活と言う物なのだろうが、ドールズとの賑やかな生活に慣れた ジュンにとても耐えられる代物では無かった。が…そんな時、突然一階の鏡の部屋から 何かが落ちるような音がした。 「ん? 何だ?」 ジュンが鏡の部屋に向かった時、何とそこには水銀燈が倒れているではないか。 アリスになってローゼンの下へ行ったはずなのに…と言うかしかも彼女の特長たる 漆黒のドレスが無く、一糸纏わぬ全裸体となっていた。一体何が… 「コイツ…一体何で…。」 正直ジュンは真紅を殺された恨みを晴らしてやりたかったが、その気持ちを抑え 水銀燈を抱えて自室に戻り、ベッドに寝かせた。それと、全裸だと可哀想なので 部屋に余っているシャツを着せてやった。 「あ…ここは…。」 「やっと起きたか…お前一体何があったんだ? お父様の所に行ったんじゃなかったのか?」 水銀燈が目を覚まして早々、ジュンは問い詰めた。アリスとなってローゼンの下へ行く事に 最も執着していたはずの水銀燈が何故桜田邸の鏡の部屋にいたのか、それをまず訪ねたかった。 「そ…それは…。」 「え?」 水銀燈の目に涙が浮かんでいた。何時もの彼女ではない。その姿…ジュンの知る 漆黒の堕天使と形容しても違和感無い程の凶悪なイメージとはかけ離れた弱々しい物だった。 「お父様が…お父様が…あんな下衆だとは思わなかったわぁ…。」 「え!? 下衆!?」 水銀燈がはジュンに話した。アリスとなってローゼンの下へ昇った水銀燈が体験した事を… 「おめでとうアリス。私は君と会う日を何百年と待っていたよ。」 「お父様…。」 ローゼンは水銀燈を優しく抱き、水銀燈もまた嬉しそうに抱かれた。 まさに父と呼ぶに相応しい程に大きく温かいローゼンに、水銀燈は これから始まる愛する父との新しい生活にときめいていた。 しかし、それからすぐにローゼンが水銀燈を連れて行ったのはベッドの上だった。 そして突然裸になり、また手慣れた手付きで水銀燈のドレスを脱がし始めたではないか。 「ちょっとお父様! 突然何をするのぉ?」 思わずローゼンの手を払って離れる水銀燈だが、ローゼンはそれが信じられない顔をしていた。 「何って…決まっているじゃないかアリス…。これから二人は交わるんだよ。」 「…。」 水銀燈は愕然とした。ローゼンは水銀燈とSEXがしたいと申していたのである。 「な…何よそれぇ! 何処の世界に実の娘とエッチする父親がいるのぉ!?」 「ここにいるじゃないか! さあ早くこっちに来なさい。それとも私が嫌いなのかい?」 「そんな事無いわぁ! 私はお父様を愛してる! でも…違う! こんなの違う!」 確かに水銀燈はローゼンを愛している。しかし、あくまでも父親として愛したかった…。 ローゼンには父親として娘の成長を祝福して欲しかった…。しかしローゼンがやろうとしている事は違う。 明らかに水銀燈のカラダを求めている。究極の少女アリスとなった水銀燈とSEXをしたがっている。 そんな事水銀燈は望んではいない。 「違う! こんなの違う! お父様は間違ってるわぁ!」 「間違ってないよ。私がアリスを求め、君達を作ったのは全てこの日の為だったんだよ。」 「そん…な…。」 ローゼンの告白に水銀燈は自分の全てを否定された気分になった。 ローゼンがアリスを求めたのもローゼンメイデンを作ったのも、自分専用の 最高のダッチワイフを手に入れる為以外の何者でも無かったのである。 「こんな…こんな事の為に…私達は…。」 真実を知った水銀燈はとてつもない程の罪悪感に襲われた。 こんな事の為に…こんな馬鹿らしい事の為に姉妹同士で殺し合い、また沢山の人々を 巻き込み犠牲にして来たのだから…。 「私がやろうとしている事は何か間違っているかい? でもね、男はみんなそうなんだよ。 誰だって美しい女性と交わりたいと思ってる。女性だって良い男と交わりたいと思ってる。 人間とはそういう生き物なんだよ。それに文句があるなら男女と言う二つの性をお作りになった 神様に言うしかない。」 「で…でも…実の娘と交わる父親なんて…間違ってるわぁ!」 水銀燈が異性に興味を持った事が無いと言うと嘘になる。しかし、いくらなんでも 実の父親と交わるなどと言う事が出来るはずがない。だがローゼンはそれをやろうとしている。 実の娘である水銀燈と交わろうとしている。 「いいからこっちに来るんだアリス!」 「い…嫌…。」 「私の人形のくせに偉そうな口を叩くな!」 「!」 この一言で水銀燈はローゼンの本心を知った。確かに水銀燈は長い間 ローゼンとの暮らしを求めるあまり彼を神聖視していたのかもしれない。 彼女の持っているイメージと本当のローゼンとのギャップに戸惑う事もあったかもしれない。 しかし、そういう言葉では片付けられない程本当のローゼンは下衆すぎた。 「こうなったら実力行使だ!」 「い…嫌ぁ!」 ローゼンは力ずくで水銀燈のドレスを剥がし始めた。気遣いなどまったく感じられない乱暴。 ドレスがビリビリに引き裂かれて行き、水銀燈は全裸にされてしまった。 「フフフ…美しい…美しいよアリス…。愛してるよ…。」 「い…嫌ぁ! こんなの愛じゃないわぁ! ただのレイプよぉ!」 水銀燈は力を振り絞って逃げた。翼を広げ、ひたすらに逃げた。 そして死に物狂いで逃げた先が桜田邸の鏡の部屋だった。 「そんな事があったのかよ…。」 「う…ん…。」 「で…お前はこれからどうするんだ?」 水銀燈は答えられなかった。ひたすらアリスになる為に…ローゼンの下へ昇る為に 他を犠牲にして来た上に、ローゼンさえ拒絶した彼女に帰る場所など無いのだから… 「なさけない話よねぇ…。究極の少女アリスになったはずなのに…現実はこうなんだからぁ…。」 水銀燈は自虐を言いながら涙を流す事しか出来なかった。そしてその姿、かつての敵であったとはいえ ジュンにとっても見てて楽しい物では無く、むしろ痛々しい物だった。 「少しの間くらい僕の家で面倒見てやっても良いか…。おっと勘違いするなよ! まだ真紅達を殺された恨みは残ってるんだ。どっか行くなら真紅達のローザなんとかとやらを 置いてからにしてもらわなきゃならんしな。」 「あり…がと…。」 もしこれが今までの彼女であるならば、ジュンに生意気な口を叩かれた時点で 次の瞬間漆黒の翼がジュンを切り裂いているに違いない。しかし、今の水銀燈には その気が全く起きなかった。 「ったくしょうがないなぁ…。」 ジュンは机に向かい、何やら図面を引き始めた。 「何をしてるのぉ?」 「出て行くにしてもそんな格好じゃ可哀想だからな…前のと同じとは言い難いけど… 僕がなんとか新しい服を作ってやるよ…。」 とまあ成り行きとして水銀燈を桜田家で面倒を見る事になった。 かつての敵であった彼女であるが、のりにとってはそんな事どうでも良いらしく 真紅ちゃんの新しいお友達ねー感覚でまた張り切って料理を作り始めた。 水銀燈も水銀燈で、それまであんまり良い物を食っていなかったらしく かなり喜んでいたのであるが、そんな事はこの際どうでも良いだろう。 桜田家で面倒を見る事になってから水銀燈は穏やかになった。 むしろ何か企んでいるのではないかと疑ってしまう程である。 しかし、これはこれで仕方の無い事なのかもしれない。彼女はアリスゲームに勝つ為に、 アリスになる為に、ローゼンの下へ昇る為に全てを賭けて来た。その為にあえて非情に徹し どんなに憎まれようともその目的を達成しようと頑張って来た。だが実際はどうだ。 理想と現実の余りの違いに水銀燈は己の全てを否定されてしまった。 だからなのだろう。現実を知って初めて自分のして来た悪行に気付いた。 そして罪滅ぼしの為なのだろう、彼女は進んで家の手伝いなどをするようになった。 そんな事をやった所で何にもならない程の罪を重ねて来た事は彼女が一番分かっている。 だが、それでも何かしなければ気が休まらないのだろう。 そしてそれとはまた別に可笑しな事をするようになった。 トイレに篭ったり、下剤を飲んだりなどである。 ドール故に排泄行為をしない水銀燈がそんな事をしても無駄であるのに 何故そんな事をするのかと言うと、自分が奪って来た他の姉妹のローザミスティカを 出す為なのだと言う。彼女は反省しているのだ。とにかく姉妹を元に戻して ちゃんと謝って、また一からやり直したいとそう考えていたのだろうが、 あんまりやりすぎてジュンにとっても痛々しく哀れに思えてしまう程であった。 挙句の果てには包丁で自分の腹を裂いてまで取り出そうとする始末。 「何が究極の少女アリスよぉ! こんな事も…こんな事も出来ないなんてぇ!」 「ああもうあんまり無理するな!」 数日後、ジュンの作った水銀燈の新しいドレスが完成した。 デザインを何とか思い出しながら作った物だが、別に写真などが残っているワケでも無い為 思い出せない部分もあり、そこはジュンオリジナルの要素でカバーした故に 本来のドレスとは若干異なる部分もあったが、これはこれで水銀燈は気に入ってくれた。 「そうよねぇ…。あんたタダのヒキコモリじゃないもんねぇ…。真紅が認めたマスターだものねぇ…。」 ジュンが持っていた水銀燈のイメージが変わったように、水銀燈の持っていたジュンのイメージも 一変した。それまでは何の取り得も無いただのヒキコモリであると思っていた。 そんな男をマスターとする真紅なんて簡単に勝てると思っていた。 確かに水銀燈は真紅に勝ってアリスになった。しかし無傷とはいかず、負けていたとしても おかしくない程の苦戦を強いられた。何故? あんなヒキコモリがマスターであるのに 何故こうも苦戦した? そう…彼はただのヒキコモリでは無いのだと。 ジュンがただのヒキコモリなら真紅は愛想を付かして別の人間をマスターにしていたはず。 翠星石や雛苺もジュンから離れていったはず。しかしそうはならなかった。 むしろドールズがジュンを中心に回っているかのように、彼は好かれていた。 ジュンには真紅達を引き寄せる何かがあったのか…それは水銀燈には分からない。 だが真紅達がジュンを好いていたその気持ち…今の水銀燈には分からないワケでも無くなっていた。 そして…その日の夜にそれは起こった。 ――――――――――――――――――――――――― 「ハァ…何か疲れたよ…。」 水銀燈の新しいドレスを作ったり、水銀燈との暮らしにジュンはすっかり疲れてしまった。 特に後者に関しては、真紅を殺された憎しみさえ萎えてしまう程可哀想な境遇のせいで 精神的な疲労がジュンに溜まっていた。 「ふぅ…。」 いつも夜更かしするジュンだが、今日は速めに寝ようとベッドに横になった時だった。 水銀燈が部屋に入って来てジュンの隣まで近寄ってきた。 「ねぇジュン…。」 「な…何だ…? もう眠たいんだから明日にしてくれないか?」 そう言ってジュンが布団に潜ろうとしたが、水銀燈が彼の服の袖を引っ張った。 「貴方に…お礼がしたいのぉ…。」 「え? ってうわ!」 次の瞬間ジュンの眠気が一気に吹っ飛んだ。何故なら突然水銀燈がドレスを脱ぎ出したのだから。 普段から黒いドレスに身を包んでいたし、ジュンが作ったドレスもまた黒かったからこそ その内に秘める彼女の白い肌はますます目立ち、まるで光り輝いているかのように見えた。 「わぁ! こら! いきなり何をし出すんだ!?」 水銀燈の裸体に興味を持ちながらもジュンの持つ理性が水銀燈から目を背けさせていたが、 水銀燈はジュンの視線の方に移動して自分の身体を見せようとする。 「ごめんなさぁい…。究極の少女アリスのはずなのにぃ…こんなカラダを使った お礼しか出来なくてぇ…。これじゃあ娼婦と変わらないわぁ…。」 水銀燈の目から涙が零れ落ちた。いくらアリスゲームに勝利して究極の少女アリスになったとは言え、 今の水銀燈に何も無い。裸一貫。そう形容するしかない程、その身以外には何も無かった。 「ジュン…私のカラダを見てぇ…。」 「な…何言ってるんだよ! とにかく服着ろよ!」 ジュンは水銀燈の裸体から目を背けながらドレスを渡そうとするが、水銀燈はそれを受け取らなかった。 「お願い…今の私にはこんな事しか出来ないけどぉ…今までのお礼をさせて欲しいのぉ…。」 水銀燈はジュンへ処女を捧げるつもりだった。これが裸一貫の水銀燈の出来る唯一のお礼だったのだが… 「ふざけるな! お前は人形だぞ! そんな事が出来るか!」 ジュンにだって良心と言う物がある。その良心が人形とのSEXを拒絶しようとした。 「ジュンの嘘付きぃ! 本当はやりたいんでしょぉ?」 「嘘なんて付いてない!」 「じゃあその股間から勢い良く立ち上がってるのは何ぃ?」 「あ…。」 水銀燈がジュンの股間を指差すと、そこには勢い良く勃起したジュンの男性器の姿があった。 「だ…第一お前はお父様とやるのが嫌で逃げて来たんだろ!? なのに何で僕には自分からやろうとするんだ!?」 「あらぁ? ならジュンはのりとエッチしたりするぅ?」 「するわけないだろ! だって姉ちゃんだぞ!」 「それと同じよぉ…。確かに私だってお父様を愛しているけど、あくまでお父様としての話。 だからお父様とやるなんて出来るわけ無いでしょぉ? でもジュン…貴方とやるのはまた別の話よぉ…。」 確かにそうだ。血の繋がった者同士のSEXは異常な行為であるが、血の繋がらない者同士の SEXならば話は別である。 「おねがぁいジュン…。」 「おい…水銀燈…。」 ジュンは躊躇した。しかし股間の男性器は未だ勃起し続けている。そこを水銀燈が見逃さなかった。 素早くジュンのズボンとパンツを下ろし、露出した男性器に食い付いたのだ。 「うわ! やめろってああああ〜…。」 ジュンは大急ぎで水銀燈の頭を掴んで引き離そうとした。しかしどうだろう。 まるで身体の力が抜けていく。だが力が吸い取られている様な苦しみは感じない。 快感。とても心地よい快感がジュンの全身を脱力させていた。 「あああ〜…やめろ〜…水銀燈〜…やめ〜…。」 「ほはぁ…やっふぁいいふぇふぉ〜…?(ほらぁ…やっぱ良いでしょぉ〜?)」 今の水銀燈は腐ってもアリス。究極の少女たるアリスのフェラチオで気持ち良くならない男など存在しないだろう。 水銀燈がジュンの男性器を少し嘗めるだけでジュンの全身に快感が走り、力が抜けていくのである。 「やめ…やめ〜…でもやめないでぇ〜…。」 頭がおかしくなりそうだった。人形のフェラチオなんて彼の人間としての良心が許さない… 嫌なのに…でも続けて欲しい…様々な想いの狭間でジュンの葛藤が始まっていた。 「ねぇ? 気持ち良いでしょぉ? だから…こういう形でお礼をさせて頂戴…。」 「じょ…冗談言うなぁ! お前は真紅を殺した張本人だぞ! そんな事したら真紅に申し訳が立たないじゃないか!」 「でもジュン…。その真紅のローザミスティカは私の中にあるのよぉ…。確かに私は水銀燈を基本にしてるけど… 真紅でもあるのだわ。翠星石でもあるですぅ。雛苺でもあるのよ。だからいいでしょぉ?」 「うわぁぁぁ! 何か気味が悪いぃぃ!」 何しろその時の水銀燈、口調のみならず声まで真紅達そっくりに真似ていたのだ。 だがおかしな話ではない。ローゼンメイデン7体は元々1つだったのだ。 7つは1つ。1つは7つがローゼンメイデン。それ故に7体全ての特長を持つアリスが 真紅達の声や口調を真似る事など造作な事では無いのである。 「真紅や翠星石のローザミスティカに影響されてるせいかもしれないけどぉ…ジュン… 何だか貴方が愛しいのぉ…。おねがいジュン…私を真紅だと思って抱いて頂戴…。 それがダメなら翠星石と思っても良いですぅ…。もしかして雛苺が良いの〜?」 水銀燈は真紅達の口調と声色を明確に再現しながらジュンに迫るが、顔は水銀燈のままなのだから 不気味この上無い。 「おねがいジュン! 私を抱いて頂戴! じゃなきゃ…お父様と決別が出来ないわぁ! 気持ちを切り替えて新たなスタートを切る事が出来ないわぁ!」 「もう良いよぉ! 何時ものお前でいいから! やりたいならやれよ!」 突然裸で迫って来た事やフェラチオ、真紅達の声真似などから冷静さを失ったジュンは もうやけくそになっていた。 「だが…本当にお礼と言えるくらい気持ちよくしろよ…。」 「ありがとうジュン…。」 やっとジュンの了解を貰えた水銀燈はジュンに抱き付き、口付けをした。 なりゆきとはいえ、ジュンはどんな花よりも気高く、どんな宝石よりも無垢で、一点の穢れも無い、 至高の美しさを持った究極の少女であるアリスとなった水銀燈とSEXをする事になってしまった。 こういう事は男として光栄な事なのであろうが、それでもジュンにとって水銀燈は人形であるし、 また真紅を殺したかつての敵でもある。しかし今更逃げる事は出来ない。 もうこうなったら腹をくくる。徹底的にやってやる。ジュンは意気を飲みながら水銀燈の 太股に手をかけてM字に開いた。 「腰が抜けても怨むなよ…。」 「う…ん…。」 水銀燈が顔を赤くしながら頷いた事を確認してジュンは固く勃起した男性器を 水銀燈の女性器に近付けたが…ここで大切な事に気付く。 「これ…入るのか?」 ローゼンメイデンの中で一番背の高い水銀燈であるが、それでもジュンに比べれば小柄だ。 当然ジュンの男性器に対する女性器の比率も小さく、とても挿入出来るとは思えない。 「何かお前…裂けてしまいそうで怖いんだが…。」 「良いから構わず挿れて頂戴…。」 「どうなっても知らないからな…。」 「ああ!」 とにかく水銀燈が良いと言うのだから挿れる。が、しかし…どうだ。心配したのが馬鹿らしくなる程 結構挿入出来ているではないか。それでも水銀燈の女性器はジュンの男性器をキツキツに 締め付けていたが、裂けているような様子は見られ無かった。 ローゼンが本当にローゼンメイデンを自分専用のダッチワイフとして作ったのならば これもやむなしなのかもしれない。 「ジュン…どう?」 「ぬるぬるのキツキツで…凄く温かい…。」 「そう…何か嬉しいわぁ…。」 水銀燈だって処女膜を貫かれた痛みが残っているはずなのに…その顔には笑みが浮かんでいた。 「それじゃあ動かすぞ…。」 「いいわぁ…おねがい…。」 ジュンは腰を動かし、水銀燈を突いた。最初はゆっくり…徐々に勢いを強めていく。 「あ! あ! 凄い! 凄いわぁジュン!」 「うわぁ! もう出る! もう出るぅ!」 これがアリスの力なのか、ジュンは早くも射精しそうになっていた。そして外に出そうと 男性器を水銀燈の女性器から引き抜こうとするが、それを水銀燈が引き止めた。 「おねがぁい! 中に出してぇ! 水銀燈の中に…ジュンの精子沢山頂戴!」 「え!? あ! ああ! もう我慢出来な…あああ!」 「ああああああ!」 水銀燈の膣内にジュンの大量の精子がぶちまけられ、同時に果てた。 「あ〜…。」 二人は繋がったまま抱き合う。先程までの激しさが嘘のように静かだった。 「ジュンのオチンチン…凄いわぁ…貴方の精子で私のお腹パンパンよぉ…。もう赤ちゃん出来ちゃいそう…。」 「お前人形だから妊娠なんてしないだろ?」 「あらそんな事は分からないわぁ…。だって今の私はアリスなのよぉ…。もしかしたら 赤ちゃんを作る力だって備わってるかもしれないわぁ…なんて冗談よぉ〜! 私ドールだもの…子供なんて産めるわけ無いじゃなぁい…。でも、いっそ妊娠して 赤ちゃん産んじゃった方がいっそ気楽かもしれないわぁ…。」 「は? 何で気楽なんだよ。」 ドールズのせいで託児所と化した我が家を経験したジュンだから分かる。 ドールズの世話はとても大変。当然子供を育てるのも同様であろう。 「だって赤ちゃん産んでママ銀燈になれば…私はアリスじゃなくなるものぉ…。 確かに今まであんなにアリスに憧れていたけどぉ…アリスになって良い事なんて少しも無かったわぁ…。 お父様に裏切られるし、お父様に裏切られるし、お父様に裏切られるし、お父様に裏切られるし、 お父様に裏切られるし、お父様に裏切られるし、お父様に裏切られるし、お父様に裏切られるし、 お父様に裏切られるし、お父様に裏切られるし、お父様に裏切られるし、お父様に裏切られるし…。」 「いや、もう分かったよ。」 やはりローゼンに裏切られた事を相当根に持っていたようである。 「出来るなら…妊娠して赤ちゃん産んで…ママ銀燈になって…アリスの重圧から解放されたい…。 勿論その子のお父様はジュン…貴方よぉ…。」 「じょ…冗談じゃ…。」 ジュンがそう言おうとした時だった。 「冗談じゃない! アリスに子供を産ませるのはこの私だぁ!」 「誰だ!?」 二人の前に見知らぬヨーロッパ人が現れた。彼こそローゼン。どうやら水銀燈を 連れ戻しに来た様子であった。 「お父様!」 「コイツがローゼン…。」 「アリス…私と交わるのを拒否しておきながらこんな男とやるなんて…可笑しくないかい?」 ジュンを睨み付けながら近寄るローゼンに対し、水銀燈はジュンを守る様に立ちはだかった。 「可笑しいのはお父様の方よぉ! 実の娘とやる父親なんて狂ってるわぁ!」 「うるさい! 私の作った人形の癖に偉そうな口を叩くな!」 「キャァ!」 ローゼンは水銀燈の髪を掴んで引っ張り上げた。この乱暴な行為、明らかに父親のやる事では無い。 まるで壊れても問題無い玩具を扱うかのような物だった。 その光景…とてもジュンには見ていられなかった。 「おい! お前それでもコイツの父親か!? 何で自分の子供にそんなに酷い事するんだ!?」 「部外者は黙っていたまえ! 私は何百年もアリスの誕生を待っていたのだよ。 アリスを抱き、交わる事を願っていたのだよ! そうだ! アリスこそ私の私による私の為の 究極のダッチワイフ! そのアリスとやってしまった君はその罪を死を持って償わなければならない!」 「うぐ!」 ローゼンがジュンの首を締め上げ始めた。本気だ…本当にジュンを殺すつもりだ。苦しい… 「うぐぐぐぐ…。」 「や…やめなさぁい!」 一枚の黒い羽がローゼンの腕に突き刺さり、ジュンの首から手が離れた。 それをやったのは水銀燈。水銀燈の羽である。 「な…何をする!?」 「うるさいこのクソ野郎!」 「!」 言った。ついに言ってしまった。あんなに愛していたローゼンに対しクソ野郎呼ばわり… その時の水銀燈の目はかつて漆黒の堕天使と呼ばれていた頃のそれそのものだった。 「死にたくなければ大人しく帰りなさぁい…そして…私の前に二度と現れるなぁ!」 「うわぁ!」 いくらローゼンが不老不死とは言え、身体的な強さは普通の人間とそう変わらない。 アリスが本気を出せば彼をnのフィールドに追い返す事など容易い事だった。 「あ…。」 ジュンはしばし呆然としていたが、突然水銀燈はジュンに抱き付いて泣き出してしまった。 「うわぁぁん! お父様にクソ野郎なんて下品な事言ってしまったわぁぁぁ!」 「水銀燈…。」 「でも…これはこれで…すっきりしたかもしれないわぁ…。ねぇジュン…出来れば もう少しの間貴方の家に住まわせてくれないかしらぁ…。せめて真紅達のローザミスティカを 取り出す方法が分かるまででも…。」 「んな事言われるまでも無いよ。」 ジュンは水銀燈を優しく抱擁した。何はともあれ、この日、水銀燈は 真にローゼンと決別し、また桜田家の家族の一員となった。 これからも色々あるのだろう。もしかするならローゼンがまた来るのかもしれない。 新たな人形軍団を作って挑戦してくるなんて漫画的展開があるのかもしれない しかし今のジュンと水銀燈の二人なら何とかなりそうな…そんな気がした。 おわり ――――――――――――――――――――――――― ここでおしまい。 結局ローザミスティカ元に戻らなかったけど後は各自の想像におまかせしますって事で