あっちの前スレ561のおまけです。ま、あれこれ悩んでも切りがないので投下します。 
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 ほどなく、3つのコーヒーカップは空になった。 
「ふぅ、ごちそうさまでした、ですぅ♪」 
「美味しかったの〜♪」 
「……紅茶党の私が、このようなものを気に入るなんて……」 
 満足そうに元気良く言葉を発した翠星石と雛苺とは対照的に、真紅は複雑な表情でぶつ 
ぶつと呟いた。翠星石が怪訝そうに真紅の顔を窺った。 
「どうしたですか、真紅?」 
「美味しくなかったの?」 
「……不味くはなかったのだわ」 
 翠星石と雛苺の問いかけに、真紅はほんの少しムッとしながら答えた。 
「なるほど。つまり、美味しかったという事ですね?」 
「……紅茶よりは数段劣るのだわ」 
「『ジュンの淹れた』が抜けてるですよ?」 
 やや意地悪な翠星石のツッコミを、真紅は聞こえないふりをして無視した。翠星石が、 
ふと何かを思い出したような顔をした。 
「そういえば、真紅はコーヒーを飲まないですねぇ……?」 
「泥水みたいな、ただ苦いだけの液体を、好んで飲む気は起こらなくてよ」 
「このストロベリーカフェモカみたいな、あまあまのコーヒーなら飲めるということです 
か……真紅はお子ちゃまですぅ♪」 
「す、翠星せ――きゃあっ!」 
 からかう翠星石に抗議しようとした真紅だったが、最後まで言い終える代わりに悲鳴を 
上げた。 
 真紅の口の端に付いたミルクの泡を、翠星石が舐め取ったからだ。 
 突然の出来事に口をパクパクする真紅を見て、翠星石は悪戯っぽく笑った。 
「お口に泡をくっつけちゃって……やっぱり、真紅はお子ちゃまです、ウフフッ」 
「真紅、お子ちゃまなの〜」 
「〜〜〜〜っ!」 
 真紅は翠星石と雛苺をキッと睨みつけると、顔を真っ赤にしてリビングを飛び出した。 
階段を駆け上がり、ジュンの部屋に飛び込むと、リビングでの出来事などお構いなしとい 
った風に、眼鏡をかけたままベッドで熟睡するジュンがいた。 
 その無邪気な寝顔に無性に腹が立った真紅は、足早に彼の元へ歩み寄った。真紅のお下 
げに不穏な気配が宿る。 
「ジュン! 今すぐ起きなさいっ!」 
「……真紅……」 
 ジュンの頬にツインテール往復ビンタをお見舞いする体勢に入った真紅だったが、突然 
のジュンの言葉に、気を殺がれた。それに呼応するように、怒りのはけ口を失ったお下げ 
が力なく垂れ下がる。真紅は恐る恐るジュンに囁きかけた。 
「ジュン、どうしたの?」 
「……すぅ」 
「ジュン?」 
 返事は無い。どうやら寝言だったようだ。 
「まったく……眼鏡くらい外しなさい、お行儀の悪い」 
 真紅は紅葉のように小さな手を、ジュンの眼鏡に差し伸べた。 
 眼鏡に触れた瞬間、ジュンの意識が真紅に流れ込んできた。 
 ジュンは、今度は紅茶でストロベリーカフェモカもどきを作るつもりらしい。 
「……せめてロシアンティーに、蒸気で泡立てた苺ミルクとホイップクリームを載せるだ 
けにして頂戴。チョコレートシロップは要らないわ」 
 真紅は微笑みながらそう呟くと、そっとジュンの眼鏡を外した。 
「ストロベリーカフェモカ、美味しかったわよ……ジュン、ごちそうさま」 
 静かな寝息をたてるジュンの頬にそっと口づけをし、真紅はそそくさと部屋を後にした。 
 ドアが閉まる音に、一瞬まぶたをピクッとさせたジュンだったが、目を覚ます事は無か 
った。安らかな寝息を立てるジュンを優しく包み込むように、苺の甘い香りが、部屋の中 
をいつまでも漂っていた。 
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過去作いじりはここまで。 

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