一本投下します 
エロが少々入ってますが、15禁くらいってことでご容赦を 

SS「ぴんはっ!」全6話です 
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翠星石が泣いていた 

全身ビショ濡れになって泣いていた 
「チビ人間がかまってくれないのがいけないのですぅ!」と言って泣いていた 
その日の翠星石は、例のごとく僕に何かのイタズラを仕掛け、いつも通り自爆し 
何か僕にぶっかかる仕掛けだったらしきバケツの水を自分の頭にかぶってしまった 
この性悪人形は水で濡れたくらいで泣くタマじゃないが 
今日の翠星石は、彼女のお気に入りの服を、濡らしてしまった 

その日、僕はいつも通り、ネットの物々を買う気もなく眺め、見るだけの物欲を満たしていた 
真紅はそういう時、傍らに座って自分の読書を愉しむが、翠星石は横からちょっかいを出す 
その日も、僕が画像を見るために開いたオークションの画面を見て、ドール服の映像に騒ぎ始めた 
翠星石は、裁縫好きな主婦が出品した若草色のエプロンドレスの画像を、何度も何度も拡大表示させる 
自分の着たきりの服と画像の服を交互に見て、「欲しい欲しい!欲しいですぅ!」と騒ぎ出した 
その服は手作り服の古着一斉処分にしては高い値だったが、某ブランド服をドール用に直したって事を 
考えればまぁ安価い方だった、翠も最近不安定だし、こんなもので機嫌直してくれるなら安いもんか 
いやいや、口先だけでも感謝してくれる真紅や蒼星石と違って、翠は甘やかすとつけあがるだけだ 

「えっ・・・うぇぇん、お洋服、濡らしちゃったぁ、汚しちゃったぁ、ゴメンなさいですぅ 
せっかくジュンに買ってもらったお洋服、ダメになっちゃったですぅ・・・えぇぇん・・・」 
床の水たまりの中にへたりこんで泣く失禁状態の翠星石に、僕はガラにもなくドギマギしてしまった 
「翠星石・・・とりあえず、カゼひくから、風呂入ろうか?、一緒に入ってやるから、泣くな、な?」 

あの後、翠星石が居なくなった後で、そのエプロンドレスを最初の予想よりほんの少し高価く落札した 
途中で、同じドール服マニアだがやたら資金力があるらしいmi-chan~kana02(846)とかいう奴が 
競ってきたが、ショップ系じゃなく手作り系だと気づいたらしく、あっさり退いてくれた 
縫製への目利きはまだ鈍いらしい、僕が見てもショップ物よりはるかに丁寧な作りだというのに 

翠星石は僕の言葉に顔を赤らめる、服が乾きそうなほどの湯気を体から出しながら両の拳を振り回し 
「な・・・な・・・何言ってるですかこのチビ人間!スケベ!変態!一緒にお風呂なんて・・・一緒なんてぇ・・・」 
僕は、両手を握り地面をばたばたと踏み、「あわわ」とか「あうう」と呻く翠星石の頭をベシっと叩き 
「何イッチョマエに照れてんだよ!お前は一人で風呂入れると必ず何かイタズラするだろ?・・・イヤか?」 
僕の言葉に余計に意固地になった翠星石は怒鳴り返そうとしたが、僕が背を向けると焦ったような声で 
「わ、わかったです・・・そのかわり・・・少し後で入ってきて・・・体洗った後で・・・わたし・・・キタナイから・・・」 
「そうするよ・・・ちょっとやる事があるし・・・あ、そーだ、翠は汚くないよ、それとも小便でも漏らしたか?」 
「バ・・・バカぁ!このバカチビ人間!・・・そ、そこで大人しく待ってろですぅ・・・脱いでるの・・・見ないで」 
翠星石は濡れたエプロンドレスのまま「ィクショイ!」と威勢のいいくしゃみをすると、風呂場に向かった 

言う通り少し、ほんの少し待ってから、着替えを忘れてった翠星石のドレスを持って脱衣所に向かった 
翠星石はすりガラス越しに「バ・・・バカ!来るなです!体洗うまで待っててですぅ!」と怒鳴ったが 
「洗濯機を使う用があるだけだ、もう少し後で入るから耳の後ろまで洗って待ってろ!」と言い返す 
そしてビショ濡れなのに丁寧に畳んであったエプロンドレスを洗濯機に放り込み、スイッチを入れた 

急ぎモードで洗濯の終わったエプロンドレスを、本当はいけないんだけど直射日光の下に干した 
天然素材が化繊より優れてる点はそう多くないけど、時に使い手の無理に応えてくれる 

「やる事」の終わった僕は着替えを持ち、いい感じに茹であがった翠星石が待つ風呂場に向かった 

翠星石は風呂の中で、かなりのぼせたらしい赤い顔で、湯船の中に首まで浸かっていた 
風呂場には少しでも使うと怒られるのり専用シャワーソープの、椿の匂いが充満している 

「あの・・チビ・・・・チビ人間・・・・その・・・チビ・・・・隠したら?・・・・」 
別に子供相手に隠すものなど何もないので手ブラで風呂場に入ったが、翠星石は背中を向ける 
「うっせーな、ほら入るからつめろ、端につめろ」 両足を抱えてダルマ状態の翠を押しやった 
湯船に浸かり、僕がいつも通り「森の石松」を唸り始めると、黙って体を抱えていた翠星石が口を開く 
「チビ人間・・・ジュン・・・ジュンはわたしのこと・・・・嫌いになっちゃったですかぁ・・・?」 
「嫌いじゃない、それよりここからがシブいんだ、聞け!」二代目広沢虎造の名調子を聞かせてやった 
湯船から上がると、かけ湯が苦手な僕は熱いシャワーを出し、薬局の安物シャンプーで頭を洗い始めた 
「チビ人間・・・ひどいですぅ・・・わたしを子供扱いして・・・蒼星石より、真紅よりお姉さんなのに・・・」 
「相撲甚句」を唸りながら頭を洗う事に集中した、また何かすねてるな、としか思わなかった 
「真紅より・・・蒼星石より・・・・ジュンを・・・・男だと思って・・・・ジュンのことを・・・」 
洗い終わった頭を振って目を開けると、目の前には翠星石の体があった、湯船から上がった翠星石が居た 
「ジュン・・・わたしは・・・子供ですか?・・・わたしが嫌いなジュンは・・・女だと思ってくれないですか・・・」 

僕は、すこし震える手でシャワーのコックを持ち、冷水に切り替えたシャワーを翠星石にブっかけた 
「バーカ、色気づいてるんじゃねぇ!その貧相な球体関節バディをしまえ!・・・その・・・危ないだろ?」 
のぼせて甘ったれてる翠を飛び上がらせてやった、僕の「チビ」も少し冷ます必要があったし 
「ひぁっ冷ゃっこい!こ・・・このチビ人間!何するですか!この変態!意地悪!チビチンチン・・・バカぁっ・・・・」 
翠星石は僕に怒り狂いながら体当たりしてきて、そのまま裸の体をしがみつかせた、熱い、芯まで熱い 
何か聞き捨てならないコトを言ったような気もしたが気のせいだろう、気のせいじゃなきゃ熱のせいだ 
「お願い・・・ジュンに可愛がってもらうまで・・・・・お風呂から出さないです・・・お願いです・・・ 
一生・・・ずっと・・・このままで・・・このままチビチ・・・ジュンを・・・お風呂で蒸し焼きにするですぅ」 

僕や僕のチビが翠星石焼ビビンバになるのも困る、僕は翠の熱い体、両肩に手を添えた、皆、真紅・・・すまん 
翠が唇を突き出し、目を閉じる、そして・・・翠星石に・・・キスをした・・・もう戻れない・・・真紅・・・許せ 

キスの時に舌を入れる事を知らない翠星石は、キスの間中、唇を「ちゅう」の形にしたまんまだった 
「翠・・・今日は、これまで!わかるだろ?、僕らは今はここまでしかダメなんだ、キスはイヤかい?」 
裸で迫ってきた翠星石はというと、僕がキスをしただけで、翡翠と瑪瑙のヘテロ・アイズをぐるぐる回し 
そのまま棒のようにバターン!と後ろに倒れた・・・こういう時、男はどうすれば?・・・お姫様抱っこで 
介抱すればいいんだろうか?・・・考えた結果、僕はケロリンの桶に冷たい水を汲み、翠星石にブっかけた 
心はデリケートなドールだけど、体はラグビーのフォワードのように丈夫だって事は今までの付き合いで 
知っているつもりだった、チャージを食らってノビたフォワードには、ヤカンの水をブっかけるに限る 

「っきゃぁ!ちべたい!ちべたい!冷たいですぅ!何してくれてんだこのチビ人間!バカバカバカぁ!」 
ローザ・ミスティカがもしもCPUのような精密機械なら、熱暴走した時はやっぱ空冷より水冷だろ? 
一瞬で飛び上がった翠星石は僕の胸を拳でドンドン殴り、そのまま握り拳を僕の背中に、ぎゅっと回した 

「ジュン・・・みずはつめたいです・・・・・」 
「うん」 
「ジュンはあったかいです・・・・」 
「そうさ」 
「翠星石は、あ、あついです・・・・・」 
「そうだな」 

一日に二回、いや三回の水責めを食らった翠星石はまだ熱暴走中だった、きっと長湯のせいじゃない 
彼女を創った人形師ローゼンはなぜ頭にアルミのヒートシンクでもつけてやらなかったんだろうか? 
頭のレース布がそれなんだろうか?、そういえばドール達は皆、何かしら被り物をお召しになっている 

「もう、上がろうか?」 
「また・・・・・・・・一緒に・・・・・・・・おフロ入って欲しいですぅ・・・・・・・・・・・」 
「また今度、また、今度、な」 

また今度、な・・・・・・言葉で出来る約束はそれまで・・・僕らはもう、言葉じゃない約束を交わしたから・・・ 

翠星石を先に上がらせ、僕も湯上りの気持ちいい体で「爆弾三勇士」を唸りながら翠の待つ居間に向かう 

風呂上りの翠は、自分の深緑のドレスを着ていた、幾年も着続けた物なのになぜか窮屈そうに見える 
僕は日向干しした洗濯物を背中に隠して翠星石を鏡の前に連れていき、髪にドライヤーをかけてあげた 
鏡に映る翠星石、洗い髪のせいか少し艶っぽく見える、確かに真紅達よりお姉さんだ・・・ほんの少しね 
栗色の髪を僕に委ね、夢見るような瞳をしている鏡の翠星石の前に、若草色のエプロンドレスを当てた 
「ジュン・・・・これは・・・」 
「さぁ、着てみな」 

翠星石はエプロンドレスを身に纏い、自分で自分の体を抱きながら、うっとりと目を閉じている 
「お日さまの・・・・匂いですぅ・・・・・」 

「翠星石、この服は「魔法の服」なんだ、一回洗うとヨロヨロになるような安物のレース服とは違う 
厚手の、とびきり上等な木綿布をたっぷりと使ってるから、何十回洗濯してもビクともしない、 
破れても繕える、サイズが変わってもお直しできる、たとえ擦りきれたってリフォーム出来る」 

翠星石が体をひん曲げながらドレスのタグを読んだ、タグを残してくれた縫い手には感謝したい 
「・・・・ピンク・・・・ハウス・・・・・」 

「翠星石、この服はね、時が経ち世界が変わっても、ずっと少女のままで居る少女達のために 
いつの日か、少女が自分でお金を稼ぐようになった時のために、ボーナスを注ぎこんで買えるように 
イサオ・カネコっていう人が作った夢の服・・・ピンクハウスは・・・何度でも蘇る魔法の服なんだ」 

そうさ、魔法さ・・・人間の魔法、少女への憧れが創った魔法、少女は、その存在そのものが奇跡なんだ 

少女は自分を包む若草色のドレスを、腕や胸を掌で撫でた、呼び戻された魂を、魔法を確かめるように 

「翠星石、何があっても僕に任せろ、汚れたら洗って、破れたら縫ってやる、直してやる 
何があっても・・・翠星石がどうなっても、僕に任せろ、僕が必ず、魂を呼び戻す」 

翠星石の瞳から涙がこぼれる、ぱたたたた・・・と頬を伝い、顎から滴り、ドレスに染み込んだ 
今日4回目の水責めにカウントするか、きっと翠星石は水の星の下に生まれたドールなんだろう 

翠星石は突然僕を振りほどき、手の甲で顔をぐいと拭うと「チ、チビ人間にしては上出来ですぅ!」と 
叫び、そのまま若草色のエプロンドレスを翻して走り去った、ドアから出る間際、一瞬こちらを見ると 
何も言わず廊下を走り去った、僕らはまた、何か言葉にならない密やかな約束を交わしたような気がした 

その時、出かけてたはずの真紅が絶妙のタイミングで、別の入り口から居間に入ってきた、ドキリとする 
別にやましいことをしていた訳じゃないが見られなくてよかった、真紅は訝しげに僕の匂いを嗅いでいる 
真紅は険しい顔で僕を見て一言「だらしないわよ」、考え事をしていた僕はにやけた顔をしていたのかも 

翠星石は夜、寝る時にはまた甘ったれてくるんだろうか、それなら・・・それでもいい、一緒でもいい 
水遊びが過ぎて寝小便でもして、本日五度目の水責めを食うのもカワイソーだし・・・おねしょは火遊びだっけ? 
まぁその時はまた洗濯機で洗ってやるよ、そのドレスを何度でも綺麗に洗ってやる、中身ごと洗ってやる 
翠星石、水のドール、水はぶっかかると冷たいものだけど、キタナイ物を洗って蘇らせるのも、水なんだ 

濡れても、汚れても、破れても、少女は決して終わりなんかじゃない 
繕ってシミを抜いて「お直し」をして、水で洗って、キレイにして 

少女は、何度でも蘇る 

ぴんはっ!(完) 

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あとがき 

登場した服の詳細については、いくつか架空の記述もあります、ご了承ください 
(金子いさお氏は奥さんに似合う服を作りたい一心でピンクハウスを作ったそうです) 
あと、今回初めて「取材」をしました、おウチの洗濯機とお風呂を調査しました 
最後に、ボクの女のコ服への乏しい知識を補足してくれた友人に礼を言っときます 

では、今回はこれで 
                                  吝嗇 

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