ある日、蒼星石は真紅に呼び出されていた。蒼星石が真紅のもとを訪ねると、真紅は真剣な顔で 
座布団の上に正座していた。そして真紅は用意していたもう一つの座布団に蒼星石を座らせる。 
並ならぬ雰囲気。きっとかなり真面目な話であると蒼星石は予感し、息を呑んだ。 
「蒼星石・・・、貴女に大切な話があるのだわ。」 
「何だい?」 
これから真紅の口から出る言葉によって、蒼星石は壮絶な事実を知る事となる。 
「ハッキリと言わせてもらうわ。貴女はアリスにはなれない。」 
「え!?」 
唐突の事に蒼星石は驚いた。 
「僕がアリスになれないだって!?一体何の根拠があってそんな事を!」 
蒼星石は思わず立ち上がり、庭師の鋏を振り上げていたが、真紅は眉一つ動かさずそれを宥めた。 
「落ち着いて考えても見なさい。お父様が求めたアリスの定義とは何か・・・わかるでしょう?」 
「アリスの・・・定義・・・。確か一点の穢れも無く、至高の美しさを持った究極の少女だったよね・・・。 
それに何の問題が?」 
「まだ分からないと言うの?貴女らしく無いのだわ。お父様の求めたアリスは”究極の少女” 
なのだわ。それに対し貴女のその格好や口調・・・、まるで男の子みたいなのだわ。 
そんな事では逆立ちしてもアリスにはなれないのだわ。」 
「そ・・・そういえば・・・。」 
衝撃の事実を聞かされた蒼星石の顔は青ざめてる。確かにそうだ。蒼星石自身、他の姉妹と違い 
僕口調で話す上に服装も男性的と極めてボーイッシュである。その為、究極の少女である 
アリスに最も遠いと言われるのは当然の事だったのである。しかもそれを知った時の 
彼女のあまりにも真剣すぎる驚きようは真紅さえ唖然とさせる程だった。 
「そういえばって・・・、貴女今まで気付かなかったと言うの?」 
しかし、蒼星石は何か思う所があったのか、直ぐに冷静さを取り戻していた。 
「僕は生まれてずっとこのスタイルを貫いて来たんだ。今更それを変える事なんて出来ないよ。 
だから、自分の信念を曲げるくらいなら、僕はアリスにならなくても良い。 
確かに僕はお父様に作られた薔薇乙女。だけど、同時に僕は僕でもあるんだ。」 
「それが貴女の見付けた答えなのね?なら私はそれを応援するのだわ。」 
何かを吹っ切ったかのような清々しい表情で帰る蒼星石。しかし、それが悲劇の始まりだった。 

翌日、真紅がジュンの部屋で本を読んでいた。何の事はない何時もの風景である。 
だが、突然それは起こった。トイレに行っていたジュンが何やら物凄い勢いで階段を駆け上がって来て 
部屋のドアを開け、大きな音を立てながら閉めたのだった。 
「ジュン、もっと静かに出来ないの?落ち着いて本も読めないのだわ・・・ええ!?」 
ジュンを注意しようとした時、真紅は硬直した。その時のジュンは、まるで何かとてつもない 
恐ろしい物を見てしまったかのようなおぞましい形相になっていたのだ。 
「じゅ・・・ジュン・・・?一体どうしたと言うのだわ・・・。」 
「お・・・オラは・・・見てはいけねぇ物を見ちまったぜよ・・・。」 
「え!?」 
何時ものジュンの口調ではない。口調さえ変えてしまう程恐ろしい物を見たのだ。ジュンは・・・。 
そしてジュンは真っ青な顔で逃げ込むように布団の中に潜り込み、その中でもガチガチと震えていた。 
その行動の異様さは真紅にも恐怖を植え付ける程だった。 
「ジュン!どうしたと言うの!?一体何が起こったの!?」 
「お・・・オラは・・・見てはいけねぇ物を見ちまっただぁ・・・。」 
「ジュン!何を見たの!?ねえ!何があったの!?」 
真紅が慌ててジュンを揺さぶった時だった。部屋のドアがゆっくりと開いたのである。 
そして真紅がゆっくりとドアの方を向いた時・・・それはいた・・・。 
「こんにちわ真紅・・・。見てこの格好、どお?可愛い?」 
「・・・・・・・・!!」 
真紅は声にならぬ叫び声を上げた。真紅の眼前に立っていた者、それはなんと蒼いフリフリのドレスに 
身を包んだオッドアイの少女人形だった。 
「だ・・・誰・・・?」 
「僕・・・じゃなかった・・・私よ真紅。今風の言葉で言う所のイメチェンしてみたの。似合う?」 
「ヒィ!」 
真紅は思わず後ずさった。何という事か、蒼星石が実に女の子らしく振舞っていたのである。しかも口調まで 
変えて・・・。確かに予備知識の無い者からすればそれは可愛らしく映った事だろう。だが、既にボーイッシュと言う 
イメージが固定されている真紅達にとってはとてつもなく恐ろしいものに映ったのである。 
「ヒィ!寄らないで!怖いのだわ!」 
「どうしたの真紅?どうして皆避けるの?」 
逃げる真紅の後を困った顔で追う蒼星石。だが、それにますます真紅は恐怖に打ち震えた顔で逃げ回る。 
もしもこれで真紅が人形ではなく、人間であったならば確実に失禁していたであろう。 
「ねえ。今日はお菓子を作ってきたのよ。みんなで食べてよ。」 
「嫌ぁ!寄らないで!怖いのだわ!」 
蒼星石も必死なのだろう。色々な事をして自分も女の子らしいと言う事をアピールしているつもりなのだろうが、 
ますます本来のボーイッシュな彼女とのギャップによりとても恐ろしいものに映っていた。 

その結果、真紅が取った行動は・・・。 
「ごめんなさい・・・。私が悪かったのだわ・・・。」 
真紅はその場に跪き、蒼星石に土下座していた。人に頭を下げる事は愚か、土下座するなど本来の彼女からは 
とても考えられない事である。今の蒼星石は彼女をそうさせる程の様相だったのである。 
「こめんなのだわ・・・、まさかこんな事になるなんて思いもしなかったのだわ・・・。」 
「僕の方こそごめん・・・。あっさり自分の信念を曲げてしまった僕が悪いんだよ。僕もまさか 
皆がここまで驚くなんて思いもしなかったよ。翠星石なんか僕の姿を見た途端に気絶してしまったんだよ。 
こんな目にあってまで女の子らしくするくらいなら、僕は今まで通りの僕のままでアリスを目指すよ。」 
「そ・・・それが良いのだわ・・・。私もああは言ったけど、何処かに欠陥があるのは貴女だけじゃない、 
私や他の姉妹にも何処か欠陥があるのだわ。この世で唯一完璧な物、それは正義超人の友情なのだわ。」 
「良い事言ったとは思うんだけど・・・、最後にさり気なく凄い事言わなかった?」 
蒼星石は少し呆れていたものの、気を取り直して続けた。 
「まあとにかく、確かに真紅の言う通りかもしれないね。真紅の冷静に物事を判断出来る所や 
落ち着いた物腰は僕としても見習いたいポイントだけど、でもキミって生活力無いんだよね〜。」 
「(ピクッ)」 
真紅は一瞬カチンと来た。だが蒼星石は続ける。 
「キミが何時もジュン君みたいなそこそこの生活が出来る家に住んでて、、なおかつ自分の力で 
屈服出来る様な弱い人間ばっかりをマスターにして、しかもそれを下僕にしてしまう所を見てると 
良く分かるんだ。キミは本当に生活力が無いとね。だからキミはマスターがいないと何も出来ないんだ。 
せめてお茶くらい自分で淹れられるようになろうね。じゃないと真紅もアリスにはなれないよ。」 
「(ピククッ!)」 
真紅はゆっくりと手を蒼星石の肩に乗せた。 
「ありがとうなのだわ蒼星石・・・。私もその辺を心得て精進するのだわ・・・。」 
次の瞬間だった。蒼星石の肩に乗った真紅の手が首元に滑り込むと共に蒼星石の首を絞め始めたのだ。 
「何て言うと思ったの!?」 
「な・・・何故首を絞めるの・・・真紅・・・!?」 
「言って良い事と悪い事があるのだわ!このまま絞め殺してやるのだわ!」 
「オラは見てはいけねぇ物を見ちまっただぁ!」 
その日、ジュンの部屋でアリスゲームが勃発するが、何かグダグダの結果に終わったそうである。 
                      おわり 

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