「ジュン、お茶を淹れてちょうだい。10秒以内に。」 
「無茶だ!ってんべっ!」 
「一々口答えする下僕ね。まったく・・・。ほら、もう5秒経ってしまったのだわ。早くしなさい。」 
何時ものようにジュンは真紅にこき使われていた。そして渋々お茶を淹れつつジュンは 
ある思いを馳せていた。 

「あ〜あ〜・・・何が幸せなお人形なもんか・・・。僕をさんざこき使って・・・。でも、もし僕の家に 
やって来たのが真紅じゃなくて蒼星石なら・・・こんな事にはならなかっただろうな。 
それどころか蒼星石の方から僕にお茶を淹れてくれそうだな。主人と認めた相手にはマスターって 
従順に従うみたいだし・・・。」 
そう独り言を言いながらジュンの妄想が始まった。勿論真紅ではなく蒼星石が家に来ていたら? 
と言う妄想である。 

「おはようマスター。」 
「マスター、お茶を淹れて来たよ。」 
「マスター、肩を叩くよ。」 
などなど、色々とジュンの身の回りの世話をしてくれる蒼星石と言う構図がジュンの脳内に 
浮かんでいたのだが、妄想が一人歩きしすぎた結果とんでもない事態に発展する事となる。 

「マスター、学校にはいかないの?」 
「!?」 
蒼星石の痛い一言にジュンは硬直した。妄想の中での一言とは言え、ジュンにとっては強烈な一言だった。 
「マスターと同じ位の年齢の子はみんな学校に言って勉強するんだよ。何故マスターは行かないの?」 
「あっあんな所行く必要ないんだよ!もう変な事言うな!」 
「変な事じゃないよマスター!これは大切な事なんだよ!」 
蒼星石の力のこもった反論にジュンは思わず怯んだ。蒼星石は他の薔薇乙女に比べて 
生真面目すぎると言う側面もあった。その生真面目さがジュンにとって仇となっていたのである。 
「それに僕は知ってるんだよ。この国には義務教育って言う制度がある事を。」 
「そ・・・そんな事知るもんか。もういい加減変な事言うな!」 
「ダメだよ!これはマスターの為なんだよ!学校に行ってしっかり勉強しないと就職も出来ないんだよ! 
就職も出来なくて路頭に迷うマスターの姿なんて・・・僕は見たくないよ!」 
蒼星石の目には大粒の涙が浮かんでいた。そう、これ程までにジュンの事を考えていたのである。 
だが、それを理解できる程ジュンの精神は大人ではなかった。 
「うっうるさい!そんなに文句言うなら出て行けぇ!!」 
「酷いよマスター!僕はマスターの為を思って言っているのにぃ!」 
「わっ待てっ何故ここで鋏を出す!」 
「ここでマスターを殺して僕も死ぬぅ!」 
「わーやめろーうわー!!」 

「うわぁぁぁ!!」 
ジュンははっと我に返った。だが、妄想の中でまで酷い目にあった事へのショックは残ったままだった。 
「妄想の中でさえこんな目に遭うなんて・・・僕の存在っては一体何なんだ?んべっ!!」 
直後、ジュンは真紅のツインテールに跳ね飛ばされていた。 
「もう3分も経っているじゃない。呆れて物も言えないのだわ!とにかく早くお茶を淹れなさい!」 
「・・・。」 
ジュンは無言で起き上がり、またお茶を淹れなおしていたがジュンの顔にはやや笑みが浮かんでいた。 
「(やっぱり真紅で良いや・・・。確かに真紅は酷いけど、学校に行けなんて言わないしね・・・。)」 
                     おわり 

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