その日、アリスゲームは最終局面を迎えようとしていた。 
各姉妹間の均衡を破った雪華綺晶は雛苺、翠星石、金糸雀を葬った。 
あろう事か水銀燈にローザミスティカを奪われ、抜け殻となった蒼星石の体も 
雪華綺晶によって喰われてしまった。 
しかし、そんな雪華綺晶も急遽タッグを組んだ真紅と水銀燈のダブル攻撃の前に倒れた。 
そして残った真紅と水銀燈による最後の戦いが行われようとしていた。 
「7体いた姉妹もついに私達だけになってしまったわね。」 
「泣いても笑ってもこれでアリスが決まる。全力でいかせて貰うわぁ。」 
真紅と水銀燈は互いに睨みあい、構えた。そして一時の沈黙の後、二人は一斉に飛びかかった。 

真の実力者同士の戦いは長期戦になるか、一瞬で決着が付くかのどちらかである。 
今度の戦いは後者のほうだった。水銀燈の翼が真紅の体を切り裂き、貫くよりも一瞬速く、 
真紅の右拳が水銀燈の顔面に叩き込まれていた。忽ち水銀燈は派手に吹っ飛び、倒れた。 
「か・・・体が・・・動けない・・・。く・・・苦し・・・。」 
水銀燈は必死に起き上がろうとするが、動けなかった。そして真紅は水銀燈に歩み寄って 
見下ろしていた。 
「フ・・・フフ・・・。無様でしょぉ?真紅・・・。お馬鹿真紅に負けるなんて・・・私はそれ以上の 
お馬鹿さん・・・。もう生きていても仕方ないわ。さっさとトドメを刺して頂戴・・・。」 
水銀燈はもう完全に観念していた。無様な姿をこれ以上晒すくらいなら、 
潔くローザミスティカを奪われる道を選んだのである。だが・・・ 
「私はもうこれ以上要らないのだわ・・・。」 
「!?」 
水銀燈は驚愕した。真紅は水銀燈の申し出を拒否したのである。 
「あんた・・・私に情けをかけると言うの!?私に生き恥を晒せと言うの!? 
そんな事・・・そんな事許せな・・・ぐふぅ!!」 
水銀燈の必死の叫びを邪魔するかのように、真紅の拳が水銀燈の腹にめり込んでいた。 
「かはっ・・・うげぇ!!」 
水銀燈は腹を押さえてのた打ち回った。もしコレが人間であるならば、胃の中の物を 
全て吐き出していたに違いない。 
「勘違いしない事ね水銀燈。私はこれ以上姉妹が死ぬのを見たくないだけなのだわ。 
その為なら私はアリスになれなくても構わない。」 
「あんた・・・あんたやっぱりお馬鹿さんよぉ・・・。」 
「馬鹿でも良いわ。私には帰る所がある。お父様に会えなくても、アリスになれなくても 
私にはジュンやのりがいる。私には帰る場所があるのだわ。」 
「帰る・・・場所・・・。」 
真紅はその場に座り込み、水銀燈の顔を近付けた。 
「私は考えたわ。何故お父様が私達の前から姿を消したかを・・・。アリスを作れなくて 
私達に失望して逃げ出したのだと思っていた・・・。だからアリスになればお父様に会えると 
思って私達は今まで戦っていたのよ。でも、もしかしたらそれは違ったんじゃないかしら?」 
「違う?」 
「お父様は逃げたんじゃない。あえて私達を突き放つ事で私達の巣立ちを促したのではなくて?」 
「巣立ち・・・。」 
「そう。私はジュンを見てそう思ったのだわ。」 
「ジュンってあのメガネの子?」 
真紅は黙って頷く。 
「ジュンは今までずっと家の中に閉じこもっていたわ。でも、最近になって外の 
世界に目を向けるようになった。まだ完璧とは言えないけど、ジュンは巣立とうとしているのだわ。 
きっと、お父様も私達に対して巣立ちと自立を願ったのでは無くて?でも、もしかしたら 
これも私が勝手にそう考えているだけかもしれない。それでも私はそう思うのだわ。」 
「お父様がいないなんて・・・。そんなの考えられない・・・。」 
案の定水銀燈は真紅の論を否定した。だが、彼女は葛藤していた。口では否定していても 
めぐの事を思い出すと、真紅の論も一理ありとも考え始めていたのである。 

「私はこれで行かせて貰うわ。ジュンやめぐが帰りを待っているもの。」 
と、真紅が帰ろうとした時だった。突如として二人の前にラプラスの魔が現れたのである。 
「それはいけません。貴女方どちらかがアリスとならなければならないのです。」 
「ラプラスの魔!?何故!?」 
「空をご覧下さい。」 
と、ラプラスの魔は天を指差した。すると、天高くに大きな火の玉が見えた。だが太陽では無い。 
「あれは・・・。」 
「世界を滅ぼす破滅の星です。この世界はあの破滅の星によってもう直ぐ滅ぶのです。」 
「天から襲来する破滅の星って・・・まさか巨大隕石が近付いてるって言うの!?」 
「そうです。かつて大昔にこの世界を支配していた大型爬虫類も破滅の星によって滅びを迎えました。 
ですが、今近付いている破滅の星はその時の比較にもなりません。この世界は完膚なきまでに 
滅ぼされるのです。」 
「大型爬虫類・・・つまり恐竜・・・。恐竜絶滅以上の悲劇がこの世界を襲うと言うの?」 
「これから生き残る術は一つ。アリスとなってnのフィールドで貴女方のお父様と暮らす以外には無いのです。」 
「ちょっと待って頂戴!この世界とnのフィールドは表裏一体よ!この世界が滅べば、 
nのフィールドにも影響が出るのではなくて!?」 
「ならどうすると言うのです?」 
「え・・・。」 
真紅は思い付かなかった。この事態を収束させる方法を。無理も無い。今度のそれは 
恐竜絶滅時の隕石以上に巨大かつ強大な物なのだ。全世界に存在する全ての核兵器を 
結集させても、何の役にも立たないだろう。 
「何か方法は無いの!?このままじゃジュンやのり、巴や皆が死んでしまうのだわ!! 
それに・・・世界が滅んだらくんくんも見れない・・・そんなの嫌なのだわ!!」 
「一つだけ・・・方法があるわ・・・。」 
「水銀燈!?」 
水銀燈が今にも倒れそうになりながらも立ち上がり、真紅の顔を見つめていた。 
「私達の持つローザミスティカは無限の力を持ったいわば永久機関。 
そのローザミスティカをオーバーロードさせてぶつければ・・・多分・・・。」 
「力を・・・貸してくれると言うの?」 
「それ以上言わないで!あんたの言う絆にぼやかされたお馬鹿さんがここに一人いるだけよ!」 
水銀燈は不満そうな顔をしていたが、その手はしっかり真紅のほうに差し出していた。 
「どうやら・・・最後の勝負はこれからみたいね・・・。」 
「待て真紅!!」 
突然真紅を呼び止めた者、それはジュンだった。 

「ジュン!?」 
「待て真紅!行くな!お前・・・まさか死ぬ気だろう!?そんなの嫌だ!」 
ジュンは泣きながら真紅に抱き付いた。しかし、真紅に涙は無かった。 
「ジュン・・・安心して。私はちゃんと帰って来るわ。少し出かけるだけ・・・。」 
「本当か・・・?」 
真紅は黙って頷き、ジュンの涙をぬぐった。 
「直ぐに帰って来るわ。だから暖かい紅茶を用意して待ってて頂戴。」 
「わ・・・分かった!飛び切りの紅茶を用意して待ってるよ!」 
「良い返事ね・・・流石私の見込んだ下僕よ・・・。」 
真紅はジュンに対し微笑むと、水銀燈と手を繋いだ。そして強い光が二人を包み込み、 
一人の神々しく輝く一人の少女が現れた。それこそ一切の穢れの無い美しさと 
真っ白な美しい翼を持った完璧の少女。彼女こそアリス。ローゼンが求めた存在。 
しかし、アリスの目的はローゼンに会う事ではない。天を越えた先から襲い来る 
破滅の星を食い止める事なのである。 
「言ってくるわ。」 
そう一言言い残し、アリスは翼を広げ、猛烈な速度で飛び上がった。 
如何なる超音速戦闘機も敵わない速度で・・・。 

ジュンが帰ると、家ではのりが料理を作っていた。 
「ジュン君、そろそろお夕飯だから真紅ちゃん達を呼んできて頂戴?」 
「あいつ等なら・・・出かけたよ・・・遠くに。でもちゃんと帰って来るから・・・。」 
「そう・・・。」 
ジュンの指には契約の指輪が残っていた・・・。 

有栖川病院の一室、めぐが空を眺めていた。 
「水銀燈・・・、貴女が本当の天使になって私を迎えにきてくれるまで・・・ 
私・・・待ってるからね・・・。」 
そう一言言い残し、めぐはそれまで口につけようとしなかった病院食を手に取った。 

アリスは自衛隊の哨戒機も容易く振り切り、大気圏さえ離脱しようとしていた。 
そして地球に迫る隕石へ向けて真っ直ぐに直進する。 
「私達は死なない!必ず生きて帰る!帰りを待っていてくれる皆の為に!!」 
天へ向かうアリスの周囲に七色のオーラが表れた。銀、金、翠、蒼、紅、苺、白、 
七つの色のオーラはアリスを構成する薔薇乙女7体の姿を形作り、 
そしてアリスと共に隕石目掛けて宇宙を突き進んだ。 
この世界を救い、帰りを待つ人達の所へ帰る為に・・・。 
                  おわり 

(突き抜け系最終回パート2)
アリスゲームもついに最終局面を迎えた。 
最後に残った二人、真紅と水銀燈が激突しようとした時、二人はそれを見た。 

?「敵は我々の宇宙を飲み込もうとしています」 
?「全ての攻撃は敵には通じません!」 
?「最後の攻撃・・・ビッグバンの命令を!」 
?「ビッグバンは成功だ!敵は崩壊している!」 
?「しかし敵は無限だ!いずれビッグバンの爆発力も弱まる、それまでに敵の核を見つけて攻撃せねば」 
?「私は次の攻撃の準備を!」 
?「私は・・・原始的だが分子構造体を食い見合わせ、敵を攻撃する生物を作り出す! 
  我々のような意識体ではなく、己ら同士が食い合う種が良い! 
  破壊せよ!同胞を殺せ!武器をつくり上げよ! 
  星を食う魔物が生まれてもいい!兵器を使い宇宙を消滅させる機械の化け物でもいい!」 
?「しかし、そいつらには自滅すると言うリスクが付きまとうぞ!」 
?「かまわぬ!そしたらまた一からやりなおせばいい」 
?「ビッグバンが収まるまでに作り上げろ・・・ 」 

「こ・・・これは・・・。」 
「私達ドールだけじゃない・・・人間も・・・兵器だったといの?」 
衝撃の事実を知った二人は己の全てを否定された気分となり失意に沈んだ。 
しかし、二人の前に突如ローゼンが現れた。 
「娘達よ、敵が来るぞ!」 
その一言と共に、宇宙を突き進む巨大な物体が映し出された。それこそ「敵」 
ビッグバンによって消滅した敵の欠片がこちらの宇宙で再生したのである。 
欠片とは言えそのサイズは太陽系さえ飲み込む事が出来る。 
そして敵が突き進む先には地球があった。行く手に存在する星を砕きながら 
敵は地球目掛けて突き進んでいた。 

「敵を倒す。」 
最大の危機に真紅と水銀燈は手を組む決意をした。そして二人が手を握り合うと共に 
二人は合体してアリスとなり宇宙へ飛び立った。目的はただ一つ。敵を倒すために・・・ 
                おしまい 

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