怪盗カナリア潜入篇 

私の名は金糸雀! 
ローゼンメイデン一の 
策士金糸雀とはよく言ったものかしら! 

今日も獲物を求めて歩伏前進! 
右見て〜!左見て〜!前見て〜! 
「あら?あれはなにかしら?」 
金糸雀の視線の先には…… 

「うにゅ〜!うにゅ〜!イチゴカリもふなの〜! 
ピンク色なの〜!」 
リビングのテーブルに置いてある 
イチゴメロンパンを見て 
雛苺が目をウルウルさせて感動している 
「まったくチビ苺ははしゃぎすぎですぅ 
第一これはイチゴメロンパンですぅ」 
「メロンパンもそうだったけど 
考えれば考えるほど 
訳の分からないネーミングね 
イチゴメロンパン…」 
真紅はそうつぶやきながら 
このピンク色のメロンパンを見つめている 
「みんな〜おいで〜 
着ているお洋服の 
お洗濯の後に食べましょうね〜」 
のりは洗濯機の前から真紅達を呼んだ 
「お洗濯♪お洗濯♪嬉しいな〜♪なの〜!」 
真紅達はぞろぞろと洗濯機の方まで歩いて行った 

金糸雀は目を丸くして 
「こ、これは!天の恵みかしら〜? 
ピチカート行くわよ! 
これよりイチゴメロンパン救出潜入作戦を開始するわ!」 

怪盗カナリア脱出篇 

真紅達が洗濯を終えてリビングに戻ると… 
「……!?」 
イチゴカリもふが無くなってるの〜!!」 
雛苺が大声を上げる 
それと同時に全員が翠星石の方を向いた! 
「ななな何でみんなして疑うですか〜!!! 
第一さっきまで一緒にいたですぅ〜〜!!」 
翠星石は必死に無実を主張する 
「日頃の行いが悪いのね…」 
「もう…真紅ちゃん 
そんな事言わないの!」 
のりが真紅を困り顔で諭す 
「でも困ったわね〜 
今日のおやつが無くなってしまったわ〜」 
「そんなの嫌なの〜!」 
雛苺は泣きながら地団駄を踏んでいる 

その頃玄関の物陰に動めく影がひとつ… 
「ふふふ…上手くいったかしら〜 
うぅぅ…つ、遂に作戦が成功したのかしら〜?」 
金糸雀は今までの失敗を思い出して 
感極まっていた 
「こうなったらヒナが犯人捕まえるの〜!」 
「チビ苺には無理無理です〜!」 

「何やら向こうも作戦会議をしているのかしら 
そろそろ退散と行きますか! 
ピチカート!」 
金糸雀は人工精霊を呼び寄せ…… 
「ただいま〜」 
「はう?」 
金糸雀は帰宅したジュンとばったり出くわしてしまった 

怪盗カナリア捜査篇 

金糸雀は帰宅したジュンと対峙していた 
(はわゎゎ…こ、これは大ピンチかしら〜?) 
「お前また何か企んで来たのか!」 
ジュンが口を開いたそのとき 
「ジューン!大変なの〜!」 
泣きながら雛苺が突進してきた! 
(こ、これはかなりまずい状況かしら〜) 
金糸雀が内心焦っていると 
「あ!イチゴカリもふなの〜!」 
雛苺は金糸雀の手に 
パン屋さんの袋が握られているのを発見! 
(マズイ!こうなったら〜!) 
「ふふふ…このローゼンメイデン一の策士 
金糸雀が来たからにはもう安心かしら! 
カナが既に犯人から 
取り戻したのよ!」 
「金糸雀凄いの〜!」 
雛苺は素直に称賛の声を上げる 
「で、犯人は誰?」 
いつのまにか真紅と翠星石が 
玄関までやって来ていた 

(落ち着け!落ち着くのよカナ! 
いつもの策でここも切り抜けるの!) 
いつもその策で失敗をしているのは悠久の彼方に 
忘れてしまっているらしい 
金糸雀はもうヤケクソになって 
「犯人は〜!」 
「犯人は?」 
「ここにいる翠星石よ〜!」 
金糸雀は翠星石を指差した 

怪盗カナリア取調篇 

金糸雀が翠星石を指差して 
全員がやっぱりと言った 
「えぇ〜!?そんなの嘘っぱちですぅ! 
ジュンが翠星石の無実を 
証明してくれるです〜!」 
「う〜ん…雛苺の大福よくつまみ食いしてるしなあ」 
「そうなの〜!ヒナのうにゅ〜!」 
「日頃の行いが悪いのね」 
ガーーーン…… 
翠星石は力無くうなだれた 
「ジュンだけは…ジュンだけは 
信じてくれると思ってたのに〜!ですぅ…」金糸雀は内心 
(何とか切り抜けられそうかしら〜 
でも獲物は諦めるしかないかしら) 
などと今後の脱出作戦を立案していた 
するとのりが 
「翠星石ちゃんがそんな事するわけないわ 
きっと何かの間違いよ! 
そうよね?翠星石ちゃん?」 
「そうですそうですぅ〜! 
さすがのりは話が解るですぅ〜!」 
翠星石の言葉を聞いてジュンが口を開いた 
「雛苺!真実のワニだ! 
あれを使おう!」 
「わかったの〜!」 
真実のワニとはワニの口に手を入れ 
嘘をついていると手を噛み千切られるという 
雛苺所有のとても恐ろしいものである 
本当は只の作り話なのだが 
翠星石は本気で信じているふしがある 
「真実のワニ…臨むとこかしら〜」 
「恐ろしいですぅ」 

怪盗カナリア完結篇 

「まずは翠星石からだ」 
翠星石は躊躇していた 
「翠星石は悪くないですぅ〜」 
恐る恐る手を入れて… 
「ふ…ふん…何ともないですぅ! 
翠星石がそんなセコイまねするわけねーです!」 
見ていた者は、じゃあなんで 
さっきは躊躇したんだと思っていた 
大方つまみ食いで後ろ暗い気持ち 
でもあったのだろうか 
「次は金糸雀の番ね」 
真紅が金糸雀を見つめている 
その金糸雀は 
(もしかするともしかしなくても 
これは不味い状況かしら〜) 
手を入れたら確実に 
手を噛まれる状況! 
「オホホホホ!きゅ、急用を思い出したかしら〜! 
でわさらば!」 
「逃がすもんかですぅ!」 
金糸雀は結局翠星石に捕まり…… 
「すみません!すみません!すみません〜! 
ほんの出来心で……」 
金糸雀は縄で両腕を縛られていた 
「まったくどう料理してやるかですぅ!」 
「ゆるせないの〜!」 
「もう…みんなで仲良くお茶を飲みましょ?ね?」 
「そうね、お腹も空いたし早く始めましょう 
金糸雀!お湯を沸かしてきなさい!」 
「は、はひ!了解なのかしらぁ〜!」 

策士策に溺れる 
こうして金糸雀の作戦はいつも失敗に終わるのだが 
懲りずにまた明日も新しい作戦が決行されるのであった 

おしまい 

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