それは真紅との戦いの時の事である。水銀燈が背中の両翼で真紅の動きを封じると言う絶好のチャンス。
「アハハ! 真紅、これでおしまいねぇ。」
身動きの取れなくなった真紅へ向けて水銀燈が右腕を振り上げて飛ぶ。そうして右手で
真紅の胸部を突き破り、ローザミスティカを抉り取ると言う彼女らしい残虐ファイトを披露しようと
したその時だった…
                 ボキ メキッ
「え・・・。」
何かが折れる様な嫌な音と共に右手の指に激痛が走った。
「い・・・痛ぁぁぁぁぁ!!」
なんと言う事か、水銀燈の右手の指が折れてしまっているではないか。
余りの激痛にのた打ち回り、それに伴って真紅も翼から解き放たれた。
「これが絆と言うのよ!」
案の定真紅に殴られて逆転負けと言う結果に終わってしまった。

何とか折れた指を治す事が出来た水銀燈であるが、あそこでの逆転負けは余りにも痛かった。
そして彼女は冷静に事を分析した結果、ある結論に達した。
「あまりにも背中の翼に頼りすぎていたのねぇ…。だからこの手が退化してしまったのかもぉ…。」
水銀燈が戦闘にせよ移動にせよの最も使うのが背中の翼である。ある時は羽ばたかせて空を飛び
またある時は羽を飛ばして敵を攻撃する。しかし、翼に頼りすぎた結果、腕や脚を使わなくなり
その為に弱くなってしまった手で真紅の胸を抉ろうとした為に指を折ってしまった。
翼を使って抉ると言う手もあるが、そうやれば今度は真紅の動きを封じる事が出来ず
かわされてしまうだろう。そうとなればやる事は一つ。
「こうなったら・・・一から鍛えなおすしか無いわぁ。」
ずばりこれしか無かった。翼に頼りきり、腕や脚を余り使わなくなった今の彼女の
腕力脚力はもしかしたら雛苺にも劣ってしまうかもしれない。(と本人は思ってる)
だからこそ鍛えなおす。そうやって翼に頼らずとも十分勝てるドールになる事こそが
アリスへの道と信じて…

そして水銀燈は近所にあった空手道場へ行き、その練習をこっそり覗き見した。
いかつく大きな男達が白い胴着に身を包み、砂袋や縄でぐるぐる巻きにした板を
正拳で何度も突いていたのだが、こんな事が自分にも出来るのか? とぞっとした。
しかしやらねばならない。最低でもあれが出来なければ強力な拳を持つ真紅に
勝つ事など出来ない。

「痛い!」
こっそり自分でもゴミ捨て場に捨ててあったロープを公園に生えてる木に巻きつけ
真似をしてみたがこれがかなり痛い。道場にいた人達はこんな事をよく
平気で出来るのかと水銀燈は本当に感心するが、ここで逃げるわけにはいかない。
今でも水銀燈の脳裏には真紅の高笑いが聞こえる。これ以上そんな物は聞きたくない。
だからこそ水銀燈は殴っても折れない身体を養わねばならない…
「ああダメダメだ。そんなやり方じゃ。」
「え?」
水銀燈の背後に顔が沢山の傷があり、右目に眼帯をしている剥げ頭の中年男が立っていた。
「(うそ…私が人間なんかに後を取られた?)」
なまじ体格的に大きいとは言えないその中年男だが、水銀燈に気配を悟らせずに
後を取った時点でかなりの実力を予想させた。
「お…おじさん誰よぉ…。」
「俺か…俺の名は…。」
虎殺し、武神と呼ばれる一人の空手家との出会いが水銀燈の後の運命を大きく変える事になるのだが
今の彼女にそのような事を知る由も無かった。
                    つづかない


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先生またやってしまいましたすみませんorz






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